助かった?
「全身魔装具だらけですね」
いつの間にか隣に並んだウェスティアさんが言った。
「まそうぐ?」
「魔石よりも遥かに簡単に魔法を使える装備品です。指輪やネックレス、ピアスなどの形状をしていてとても持ち運びも便利です」
「しかも、この魔脈でかなり強化してるわね」
2人の話を総合すると、かなりの強敵、と言うわけだ。
いや。俺からすればみんな強敵なんだけど。
頭領は踏み込む素振りも見せず、いきなり俺の目の前に迫ってきた。
「うわっ!」
座り込むような形でなんとか避ける。
そこにウェスティアさんが刺突を数撃叩き込むが、そこにはもう頭領の姿は無かった。
「早いわね」
シェルティが、スロウの魔法を相手にかけるが、それも弾かれる。
「失敗だったかもしれません。他のやつはともかく、あの頭領は別格ですね」
つまりは手を出さなければよかった、と。
「アタシの魔法が効かない限り、アタシを戦力に数えないで。逃げたり避けたりすることはできるけど」
シェルティはすでに匙を投げていた。
「私たちだけでなんとかしなくてはいけませんね」
ウェスティアさんがさらに気迫を込めて身構える。
俺もいかにもなへっぴり腰で相対した。
先手必勝。
へっぽこ剣法で連撃を放つ。
が、もちろん通じるわけもない。
「はっ。笑わせるな、ド三流!」
隙のできた脇腹に、頭領の横薙ぎの拳撃が見事に吸い込まれ
──。なかった。
俺はまたもや剣に身体を取られて転んだ。
しかし俺もきちんと修行したのだ!
しっかりと受け身を取り、すぐさま立ち上がる。
「あれ、剣は?」
剣は手から離れ、地面に突き刺さっていた。
「早く取りに行ってください!」
ウェスティアさんが戦いを引き受けてくれた。
俺は急いで剣を取りに行く。
この剣の刺さってる場所って……。
どす黒い瘴気を放った泉の中心。
そう、そこには魔脈があった。
「剣が言う事聞かない!!」
大量の魔力を吸い上げた剣にはめられた炎の魔石が暴走するように独りでに動き回る。
俺はその剣に振り回されたが、その魔力を頭領に向けることを思いつく。
魔装具がどれほど頑丈か知らないが、これだけの魔力だ。
傷つけられないと言うことはないだろう。
「くそ、なんだ! あれは!!」
逃げようとする頭領を、ウェスティアさんが足止めする。
巻き込まれそうになった瞬間、ウェスティアさんは頭領からネックレスを奪い取り、高速移動する。
さっき頭領が俺の眼前にいきなり現れた、あの魔装具だ!
「ちくしょおおぉぉぉ!!」
断末魔とともに、魔脈の奔流を受けた頭領は跡形もなく消え去った。
「終わった、のか……?」
「そうみたいですね」
ウェスティアさんが剣を収め、シェルティが敵索の魔法をかけるが、辺りにはもう敵はいなさそうだ。
「ヨーイチさん、咄嗟の機転、見事でした」
へっぽこな剣を繰り出して、たまたま魔脈に刺さった剣を抜いたら魔力がすごいことになってたから頭領に向けただけなんだけど……。
「運がよかっただけだよ」
「まぁ、そうでしょうね」
あっさり認められてしまった。
「この辺りは魔獣もいなさそうだし、ここで少し休みましょう。アタシは魔法使い過ぎて、もうクタクタよー」
あまり何もしてないシェルティはさっさと魔脈で魔力を回復すると、火を付けて座り込んだ。
「そうですね、今日はここでゆっくりするのもいいかもしれませんね」
それからしばらく、飲水を作ったり、保存食を作ったり、装備の点検などをしていた。
魔脈の力を利用して、装備品の強化までできた。
俺の皮の部分鎧も、+1が付き、斬撃か魔法を一回だけ無効化できるというかなりチートな能力だ。
「私たちの魔法回数の底上げもできそうですね」
「え、魔脈ってそんなことまでできるの? 凄すぎない?」
「そうです。それだけ強力なスポットなのです。だから、本来は国が管理しているのですが、なぜかここは盗賊に取られてしまっていましたね」
そんな危険なところに俺は剣を突っ込んだのか……。
何も無かったのはラッキーだったな。
「しばらく気を張り詰めてたから、少し楽になったわね」
交代とはいえ、寝ずの番をしていたのだ。
心身共に疲れていた。
「まって」
シェルティーが鋭い声を発する。
安全を確保するために、かなり広範囲に索敵の魔法をかけてもらっていたのだ。
「かなりの人数が、馬に乗ってこっちへ向かってるわ」
1難去ってまた1難。もしかして、また盗賊か?
「私たちは魔脈を手に入れました。ここは見晴らしよくなって、待ち伏せには適しませんがここで待つのが最善の選択です」
さっき俺がやったように、魔脈を奪われさえしなければ、魔法を使える二人がいるのは心強い。
やがて、ゆっくりと侵入者たちは姿を表した。
「お前達は何者だ!!」
いきなり声を張り上げる強面のオッサン。
お前こそ何者だよ。




