約1週間
「今日は前回とは違いますよ、ヨーイチさん」
パワードアーマーに身を包んだヒュムロス王ヘルメスの大軍が押し寄せてくる。
「だろうね。それだけいいアーマーに乗ってるんだ。弱いわけがない」
「さて、敵が増えましたが、共闘でもなさいますかな?」
三すくみの状態のまま動けないでいる。
「俺は好きにやらせてもらうぞ!」
セテウスとヘルメス王の正面に陣取り、2人を攻撃圏内におさめる。
「豪胆ですな」
「そういうやり方、僕は好きですよ」
2人にも相違はないようだ。
まずヘルメス王が仕掛けてきた。
その攻撃を盾で受け、さらにセテウスの槍を剣でいなす。
さらに精鋭兵も混ざり、混戦となる。
一対一でもない二対一でもない。完全に三すくみの状態だ。
俺は少しでも状況を打破しようと、精霊の力を借りて雷を起こす。
広範囲に渡って放たれたそれは、多くの兵を巻き込み戦闘不能にした。
「ぐあっ!」
機械であるアーマーに乗っていたヘルメス王も例外ではない。
一部がショートしている。
セテウスの方は、長い槍を避雷針代わりにして電撃を避けていた。
「流石です。こんな広範囲の魔法まで使えるとは……」
「俺の力じゃないさ。たまたま精霊の力を借りられただけだ」
「そのたまたまが怖い。何をしでかすか、まったく持って見当がつかない」
セテウスと切り結ぶ中、ヘルメスがアーマーを外し、パワードスーツだけで参戦してきた。
「私だって負けません!」
嵐の様な応戦に、周りの兵は近づけないでいた。
「ルーボアイァフ!!」
セテウスが地獄の業火を呼び出す。
俺は風の精霊を呼び出し、それを跳ね返す。
ヘルメスが目にも留まらぬ速さで攻撃を仕掛けてくる。
セテウスは魔法を唱えるのを止めて迎撃をする。
戦いは完全に拮抗していた。
その間にも三つ巴の戦争は続いている。
上空を魔物や戦闘機が飛び交い、魔法と銃撃が放たれる。
人が次々と倒れ、戦線離脱していく。
これが、戦争か!
初めての経験に身がすくむ思いがする。
こうしている間にも、俺の仲間たちが倒れているかも知れないと思うと、焦燥感が募っていく。
それは俺の剣を鈍らせた。
「どうしました? ヨーイチ殿!? まさか怯えているのですか?」
怯えてる? 俺が?
そうか、俺は自分が傷付くのは平気だが、仲間がやられているのに耐えられないほどの苦痛を感じているんだ。
「これが戦争です! 腹を括りなさい!」
ヘルメスが叱咤する。
「ヨーイチ!! 仲間を信じなさい!」
頭の中にシェルティの声が響く。
「でも……!」
「アナタと共に育った仲間は、そんなに頼りないの!?」
「それはっ」
そんなことは、ない。
そうだ。俺が今すべきことは戦うことで、仲間を信じることだ。
そのうえでこの戦いに勝つんだ。
「おおぉぉぉぉっ!!」
俺は運に身を任せ、4代精霊と爆熱の魔石の力を解き放つ。
雷が放たれ、竜巻が荒れ狂い、大地が隆起し、火山が爆発する。
まさしく暴走だ。
しかし、俺の仲間には一切当たらない。
マギロス軍とヒュムロス王国軍に甚大な被害を及ぼした。
「これが異世界人の、ちから……」
セテウスとヘルメスが驚愕している。
俺も驚いている。
とにかく強い攻撃を、と思い放った攻撃は、俺の想像を遥かに超えるものだった。
「くっ!」
「がっ!?」
最も俺のそばにいた2人が一番ダメージを負った。
大将を失った両軍は瓦解するかに思われたが、それほどやわな相手ではなかった。
即座に体勢を立て直し、再び乱戦が起こる。
しかし、主力部隊を失った両軍の士気は下がりきっていた。
それでも戦争は続く。
俺たちも疲弊した兵士たちを後方に下がらせ、スタンバイしていた第二軍を前線に送り出す。
そうして最初の会敵は一週間ほど続いた。
「ふぅ……」
一旦急速を挟み、俺は司令部の椅子に腰掛けてため息をつく。
「私たちの仲間が傷ついたはずです!」
ソネットが叫ぶ。
ソネットが言った事は全て「嘘になる」
傷ついたは嘘になり、軍の怪我や疲労が吹き飛ぶ。
「流石ソネットだ」
これこそが異世界人が持つに値する力だろう。
俺もそんな力が欲しかったよ……。とほほ……。
そんなことがありつつも、初陣は最高の戦果を上げたと言っても過言ではないだろう。




