イースティアの夢
「ここは、聖竜界か?」
聖竜候補が集まるという世界だ。
「せやな。ウチ葉元々この世界でもほとんど力のない聖竜候補やったんや」
弱いが上に虐げられ、見下されてきたという。
「でもな、ウチには人に試練を与える力だけは抜群にあったんや」
確かに、イースティアは異世界人に負けたことがある。
あの時は信仰心が薄れたから、と言っていたが、それでも元々の戦闘力が高くなかったのだろう。
「まぁ、見ての通りチビやしな」
聖竜の姿になっても、お世辞にも大きいとは言えない。
「それがウチのトラウマやな」
でも今は違う。自分の所に人がいない時は、ウェスティアさんの所へ通い、試練を受けて確実に強くなっていた。
聖竜だけあって、そのポテンシャルは計り知れないものがあり、あっと言う間に最強格まで登りつめた。
「今のウチなら、通用すると思うねん」
「なるほど、今まで勝てなかった竜に勝つことが試練なわけか」
「せやな」
「では、さっそくこの世界のイースティアを探すとするかのぉ」
アレグリアはまるで居場所がわかるかのように、歩き出す。
「あそこがウチの住処や」
お世辞にも豪勢とはいえない作りだ。
「あれ? ウチがおる?」
今も幼い容姿だが、さらに幼い。
「取り敢えず、さっさと融合してもらうとしようかの」
2人のイースティアが一人になる。
「なんや、変わらんな」
「所詮は夢の世界じゃ。さて、お主のトラウマとやらをさっさと片付けてしまおう」
俺たちはイースティアの後について歩いていく。
すると、集会場の様な場所に出た。
「あら、イースティアじゃない」
「弱虫イースティアがここへなんの用かしら?」
いかにも嫌な奴らが現れた。
「じゃかあしい。聖竜の資格もない奴らが、逆になんでここにいるんや」
「……なによ。イースティアのクセに」
「またボコボコにやられたいの?」
「今のウチには勝てへんよ」
「表に出なさい!」
2人の竜は人間の姿ではなく、竜そのものの姿になっていた。
「いつでもええで」
たいしてイースティアは人間の姿のままだ。
「馬鹿にしてるの!?」
嫌な奴Aがいきなりブレスを吐き出す。
イースティアはそれを、片手で受け止めた。
「なんや、こんなもんやったんかい……。昔のウチは本当に弱かったんやな」
「なっ!?」
嫌な奴Bの鋼の爪がイースティアを襲う。
それすらも片手で受け止め、逆に捻り上げる。
「痛っ!?」
ギリギリと腕の可動域を超えるまでに拗じられた嫌な奴Bの腕から血が吹き出す。
「ぎゃあああっ!!」
嫌な奴Aはそれを驚愕の目で見ている。
「もう終わりか?」
「お、お母さんに言いつけてやるんだから!!」
嫌な奴AとBは、逃げるようにその場を立ち去った。
「親の七光りだけの雑魚やったんやな。復讐なんて虚しいもんや」
その後、長老から聖竜とは何ぞや、という講義と実技を受けるが、すでに聖竜になっているイースティアには簡単なものだった。
そして一日が終わろうとする頃。
「お前か? ウチの可愛い娘を傷付けてくれたのは」
いかにも強いです、と言わんばかりの迫力のある竜が複数体現れた。
「せやったらなんや? 仕掛けてきたのはあいつらや。自業自得やろ」
「そういう問題ではない!! これは貴族としての面子の問題だ! 親なしめ!!」
巨体のくせに素早く動く竜たち。
「手、貸そうか?」
「いらんよ。今のウチなら楽勝や」
「なめるな、小娘!」
上空から襲いかかってきた竜を、蹴り一つで叩き落とす。
「なっ!?」
前後左右、全方位攻撃を繰り出すも、全て避けられる。
「竜の姿になるまでもないわ」
人の姿のまま、次々と竜を倒していくイースティア。
「貴族言ってもこの程度かいな。初歩からやり直してきいや」
貴族の竜たちはそれぞれ、負け惜しみの言葉を吐きながら逃げていった。
「ウチのトラウマなんて大したことなかったなぁ」
お墓の前で手を合わせるイースティア。
「この墓は?」
「ウチの両親や。聖竜になるための試練の最中、貴族みたいな奴等に殺されたんや」
「ソッチのほうがトラウマだろ」
「せやからこれからが本題やねん。あの一際デカい山あるやろ? あそこの頂上に、死者を生き返らせることのできる、花が咲いてるはずやねん。それを取りに行くんや」
「空飛べるなら、簡単だろ?」
「あの辺は気流が乱れとって、飛んでられへんねん」
「じゃあ、普通に登るしかないのか」
「当時のウチにはでけへんかった」
「まぁ、儂等が居れば大丈夫じゃろ」
「もう夜や明日いくで」
そうしてイースティアの寝床で一晩を明かし、次の日に山の頂上に行くことになった。




