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一見無能ですが、実は最強なんです  作者: 葛葉龍玄
未開の大地で町を作ります

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天使の夢

 さて、天使の夢の中に来たわけだが。

「あっ!」

「やっちゃった……」

「ごめんなさーい」

「すみません……」

「どうしよー!」

 散々失敗をやらかす堕天使。いや、駄天使。

「シェルティ、おまえ……」

「こ、これはそのっ!」

「ダメダメじゃな」

 俺のこと以外でもやらかしまくってるじゃないか。

「この過去をどうやって直すんだよ」

「い、今の私なら余裕なんだから!」

「では、一時的に同調させてみるかのぉ」

 アレグリアが何やら魔法を唱えると、夢の世界のシェルティと、夢へ入ってきたシェルティが一体化する。

「シェルティ、あの仕事はどうした!?」

「今やってまーす」

「あの地区の鬼籍記録簿はどこだ?」

「あ、このメモリの中に入ってます」

「もう少ししたらお前の担当地区の死者が沢山来るぞ!」

「準備できてまーす」

 なるほど、確かに仕事をこなしているように見える。

「ほら、メルティエル、ここ、苗字間違ってるから気をつけて」

「あ、ほんとだ! 先輩、ありがとうございます!」

 おぉ、他人の面倒まで見てる!

「なんだよ、やればできるじゃないか」

「流石に国作りに従事したり、ギルド運営したりしてるからね。私だって成長するわ」

「なぜ天界にいた時にそれができなかったのかな……」

「私だって新人だったのよ? 一番悪いことしたのは、失敗を隠蔽しようとしたことよ」

「俺がウーパールーパーにされそうになった時だな」

「うっ……。わるかったわよー」

 それがなければ、こうして異世界であんな暮らししてなかったかもな。

「シェルティエル、大変だ!」

「どうしました?」

「お前の担当地区のマッカラン星雲というところで、悪魔が発生した! 精鋭部隊で迎え撃つ。お前も来い!」

「わ、わかりました」

 緊急事態のようだ。

 

 マッカラン星雲のストンミという惑星に突如として現れた悪魔の軍団。

「一体、どうやって地獄から抜け出して来たのでしょうか?」

「なに、数が多いだけさ。弱い悪魔ほど、拘束力は弱まるんだ」

「でも、神様が管理しているのでしょう?」

「神も万能じゃない。そのために我々の様な天使が必要なのだ」

 シェルティは納得していなさそうだが、悪魔をなんとかしないと行けないのは確かだ。

「これは俺がシェルティにかかわらなかった、IFの世界なのかな?」

「恐らくそうじゃろうの」

 俺に対する失敗が無ければ、シェルティはこの悪魔との対戦に参加していたことになるのか。

 しかし、それは絶望的な戦いだった。

 確かに大半の悪魔は雑魚だった。

 熾天使レベルの悪魔が一体だけいたのだ。

 その強さは天使の中でも、悪魔の中でもトップレベル。

 ここにいる天使だけでは勝てない事は明らかだった。

「こんなの、聞いてない!」

 シェルティが今の異世界に飛ばされてからの出来事なのだろうか。

 いったい、これほどの悪魔にどうやって勝ったというのか。

 カオスちゃんとヴァルスをまとめたくらいの強さだった。

「なら、俺が……!」

「ならん!」

「なんでだ!?」

「これはあくまでシェルティエルの試練じゃ! 他の者が手を出しては何の意味もない!」

 くそっ! これほどの強敵を前にしても、俺はなにもできないのか……!

 相手の悪魔は、触れれば魂ごと消し去るような攻撃を、いとも簡単に来る出してくる。

 総動員した天使たちではまともに戦えない。

「覚えたわ」

 シェルティが言う。

 そうか! シェルティは相手が一度使った魔法を使うことができるのだ!

「自分の力で滅べっ!」

 悪魔の力と天使の力が激突する。

 一つだけ違ったのは人数の差だった。

 悪魔はただ一人で破滅の魔法を使った。

 対するシェルティは、同じ呪文でも、多くの天使の力を吸収し、解き放った。

 この2つの差が明暗を分けた。

「はぁ、はぁ……っ!」

 なんとか最強レベルの悪魔を倒したシェルティは、仲間に迎え入れられる。

「凄いじゃないか!」

「いつの間にあんな技を!?」

「これは神様にも報告しなければ」

 天界最大の危機を乗り越えた天使たちは、喜びを分かち合いながら、天界に帰っていった。


「どうする? シェルティ」

 アレグリアが問いかける。

「このまま夢の中で英雄として生き続ける事もできるぞ?」

「……」

 シェルティは口を開かない。

 俺も黙ったままだ。

「私は……」

 シェルティが重い言葉を紡ぐ。

「私は異世界に残るわ」

「良いのか? 英雄のまま天界での人生を歩むこともできるぞ?」

「ヨーイチは私のせいでこの世界に飛ばされたのよ? その罪をしっかり償わなきゃ」

「シェルティ、俺のことなら……」

「うるさい! 私が私を許せないだけ! 別にアンタと一緒に居たいからじゃないんだから!」

「くっくっくっ。本音が漏れとるぞ」

 その場で地団駄を踏むシェルティ。

「そうか。ありがとう、シェルティ」

 俺はシェルティに手を差し出す。

「これからも、よろしく頼むよ。頼りにしてる」

「し、仕方ないわね。私がいないとなにもできないんだから……」

「あぁ、そうだ。シェルティがいないとダメなんだ、俺は」

「〜〜〜っ!」

 顔を真っ赤にするシェルティ。

 瞬間。

「よくぞ改心した、シェルティエルよ」

「この声は、神様?」

「お主の心、しかと見届けさせてもらった。今こそ、お主の天使としての力を全て返そう」

「そんなことができるのか」

 というか、天使の力が戻ったからって、どう変わるのか。

 天から一雫の水滴が、シェルティに降り注ぐ。

 その雫はシェルティに吸い込まれると、4枚の羽となって背中に顕現した。

「これが、私が手に入れた力……」

「一体なにがどう変わったんだ?」

「この異世界を、真上から俯瞰してみられるようになったわ。全世界の動向が、全て」

「!? じゃ、じゃあ、誰がどう考えて、何をしようとしているか、わかるのか!?」

「そういうことね。敵勢力の作戦なんて筒抜けだわ」

「それは……。なんというか、チート過ぎないか?」

「お主がそうしたんじゃろ」

 アレグリアあら、思いもよらない言葉が出てきた。

「お主を間違えて殺してしまったという罪悪間。共にこの世界へ力無きものとして落とされた無力感。そして、お主やこの世界の人間も関わることでしか手に入れられない力じゃ」

「じゃあ、私には本来、こんな能力は備わって無かったということ?」

「そうじゃ。この世界に来たからこその最強とも呼べる能力じゃ」

 神様は、このことを知っていてこの異世界にシェルティを送り込んだのだろうか?

 それはいまとなっては知る由もないが、確かに俺の、俺たちの仲間であってくれている。

 俺はそれが嬉しくてたまらなかった。


 現実世界に戻ってきた俺たち。

「残ってくれてありがとう、シェルティ」

「べつに。私もこの世界に思い入れができてきたしね」

 俺たちは固く握手を交わし、この世界を守ることを決めた。

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