新しい……?
さて、大分戦力も安定してきた。
そんな時に、シェルティから一つの知らせが入った。
「ヨーイチ、大変よ!」
「どうしたの?」
俺は大量の書類から顔を上げて、シェルティの顔を見る。
あぁ〜、目がショボショボする……。
「新しく異世界人が来たわ!」
「なんと!」
異世界人は本来、一つの時代に一人しか来ないらしい。
しかし、俺がイレギュラーなのだ。
シェルティに間違えて殺され、神様に間違えてこの世界に転生させられた可哀想な俺……。
そして、この間もう一人の異世界人は倒してしまったので、新しく異世界人が送り込まれたのだろう。
「どこにいるんだ?」
「今はマギロス大陸の果てのルマゲハの砂漠にいるわ。取り敢えず、マギロス城を目指してるわ」
「なんとか仲間にしたいな。どんな能力なんだろう……」
「それは分からないけど、仲間にして損はないわ」
「よし、行こう!」
「あ、でも皆忙しいから、一人で行って」
なんだよ。俺だって暇じゃないのに……。
ブツブツ言いながら、竜に跨がりマギロス城を目指す。
いきなり竜が飛んできたら狙撃されかねないからな。少し離れた所に降りよう。
マギロスまで3日というところで竜から降りて、先に帰ってもらうことにした。
「一人って久しぶりだなぁ」
もう半年ぶりかも知れない。
歩きながら、今回の異世界人はどんな所から来たのか考える。
人型ですら無かったこともあるらしいから、なんとか意思疎通の図れる人種だといいな。
一体どれくらい強いのか、検討もつかない。もしかしたら、俺よりも……。
久しぶりのマギロス城。
すると、向こうから綺羅びやかな一団が優雅に馬に跨って闊歩してくるのが見えた。
「おや、貴方は確かヨーイチ殿」
「え?」
そこには連載当初に見た顔があった。
確か名前は……。
「テセウス!」
「覚えていてくださったとは、光栄です」
「こんな一個大隊連れて、セントラルにでも行くのか?」
「いえ、御神託により、新たな異世界人が現れたと聞いて、お迎えに上がろうと思っての遠征です」
「ぐ」
「ヨーイチ殿はどういったご要件で? 最近は色々と忙しそうですが」
俺の動向もある程度把握してるだろう。
なんたってデウス王の娘、ヴァルスの研究所そのまま連れ去ったりしてたからな。
「俺もその異世界人に会いに来たんだ」
「なるほど、流石の情報網ですな。では、しばらくはライバル同士、ということになりますかな?」
「そうみたいだね。でも、できれば温和なやり方でどっちが新しい異世界人を迎え入れるか決めたいもんだな」
「そうですね。もしよろしければご一緒しますか? 異世界人がどこにいるかは、だいたい把握してますので」
「そんな敵に塩送るような真似していいのか?」
「なに、どうしたって、我々かヒュムロスか、ヨーイチ殿のいずれかの所に行くのです。それが早いか遅いかの違いだけです」
そういう見方もできるか。というか、今の口ぶりだと、ヒュムロスも動いてるみたいだな。
「じゃあ、ご同伴に預かろうかな」
「では、後ろの馬車に乗って下さい。共に参りましょう」
こうして俺はテセウス団長一行と異世界人をスカウトしに行く事になった。
馬車に乗り、一行と共に行動してから一週間が過ぎた頃、もう一つの集団と出会うことになった。
「ヘルメス?」
「これはこれは、ヘルメス王。やはり貴方たちも異世界人を探しに参られたのですか?」
「えぇ、異世界人は類稀なる力を持つ存在。一人で戦況を覆せる者も少なくありません」
俺も異世界人なんだけど、スカウトされたこと無かったような……。
「この辺りで待っていましょう」
セントラル大陸意外での抗争は禁止。
だからお互い手は出さない。しかし、異世界人が来たらどうなるのだろうか?
話し合いで解決できるのかしら?
今の所、優雅にお喋りしているが、腹の中まで見ることはできない。
待つこと数時間。地平の向こうから、人影が歩いて来るのが見えた。
「もしかして、あれが……」
俺がこの世界に飛ばされた時は、たまたまウェスティアさんの所に飛ばされたから一人じゃなくて心強かったが、あの人はたった一人だ。
どんな心境なのか、想像もできなかった。
「あ……」
向こうもこちらの軍団に気付いたようだ。
小走りに走って近寄ってきた。
「あ、あのあなた達は……!」
「落ち着いて」
俺は現れた女性に水を渡す。
透き通るように白い頬。
尖った耳に華奢な身体。
エルフか?
「ようこそおいで下さいました、異世界からの救世主様」
テセウスとヘルメスがひざまずく。
え?そういうことするものなの?
「そ、そんな! 救世主様だなんて……」
女性の装備は至って平凡。
動きやすそうな防御力が高そうな布の服に皮の部分鎧。
得意なのは弓なのだろう。弓と矢を装備。護身用に短剣を持っている。
はて、どんな能力があるのやら。
「わ、わたし、死んでからいきなり変なおじさんにここに連れて来られて、何がなんだかわからなくて……」
「こんな所で立ち話もなんだ。近くの湖で休もう」
「は、はい」
俺たちは落ち着ける場所に移動して、彼女の話しを聞くことにした。
「あ、わたしソネットといいます」
ソネットは会釈をして、シートに腰掛ける。
「私らはマギロス王国のテセウスです」
「ヒュムロス王のヘルメスです」
「竜魔人連合のヨーイチだ」
「??」
イマイチピンと来てないようだ。
「君は一回死んで、この世界で生き返ったんだ」
おれが端的に伝えると、ソネットは腑に落ちたような表情を浮かべる。
「やはり、あのおじさん……。いえ、神様の言ってた事は本当だったんだですね」
「そして、異世界から来た君は、この世界の理を変える程の力を授かっているはずだ」
「確かに、神様から私の持つ能力は教えてもらえました」
俺のとき教えられてないけどな。
「でも、これは明かすわけには行きません。わたしの切り札になると思うからです」
なるはど、上手い考えだ。自分の価値を既にわかっている。
「ならば、我々の話しを少し聞いて頂けますかな?」
マギロスもヒュムロスも、それぞれの特徴を上げ、アピールする。
「なるほど。わたしにその戦争を止めさせろ、という訳ですね」
「そのとおりだ」
「アナタはアピールしてきませんでしたが、なぜですか?」
「他の出方を見てただけだよ。それにうちは新興勢力でね。あまり情報を外に出したくない」
「正直なんですね」
「ビビリなだけかもよ?」
おどけてみせた。
「では、こうしましょう。模擬戦で勝った陣営に付きましょう」
なかなか大胆なことをいう女性だ、
「異世界人様がそう仰るのであれば」
「こちらも依存ありません」
「……。わかった」
ヘルメス、テセウス、俺がそれぞれ木剣を手に取る。
結局こうなるのか、とほほ……。




