ミカド領へ行きます
歩くこと一週間。
と言っても、途中ヴァルスに飛んでもらったのだが、取り敢えずミカド領についた。
「町は……」
やはり活気があるとは言えない。が、皆の顔色は悪くない。
俺達は観光客を装い、町を散策した。
ミカド領は東方にあり、西方とはまた違う文化が根付いている。
ぶっちゃけ日本だな。
「物価も高いわね」
「これくらい高くしないと利益が出ないんだろ。反面、高すぎて庶民が手を出しづらくなって、儲けも出ないし、庶民が飢える」
「悪循環ね。トップが悪いとこうなるものなのかしら?」
「そうなのかなぁ。でも、町の人々の顔色はそこまで悪くないんだよな」
すると。
「街道の真ん中ちんたら歩くな!」
という声とともに、荷馬車が走って来た。
外部の商人らしい。
売り物は衣食住に直結するものばかりで、しかも大量にある上に安い。
なるほど、こうしていいものを安く手に入れてるのか。
かといって、この行商人も毎日来るわけではないだろう。
少ない給金で高い物を買う、という構図は変わらない。
というか、店が儲けがなくなって潰れてしまう。
「おら、八百屋、魚屋、肉屋! 物々交換だ! こっちの食料や衣服はヒュムロス城下町で大人気なんだ!」
かなり良心的な商人だな。
これなら店の運転資金もプラスになるだろう。
「なんだか訳がわからなくなってきたわ。領主のせいで、民が苦しんでると思ったのに」
「また来週来るからな! 今のうち買っとけよ!」
どういうことかわからず、俺達は領主に合うべく、領主の仕事場に向かった。
「お世辞にも豪華とは言えないわね」
「もっと私腹を肥やしたような立派なたてものだとおもったんだけどな」
ここでも肩透かしを食らったような気がした。
「アナタたちが面会希望の方ですかな?」
「突然来て、申し訳ない」
「いえいえ。観光客は大歓迎ですよ」
このミカド領は2000年の歴史があり、今も観光と独自の文化を売りにしているため、多少高くても旅行者はそれなりにお金を落としてくれるようだった。
領主からは、この町の生い立ちや名所何かを案内してくれた。
俺は本題を切り出すことにした。
「ところで、町の人々のインフラや衣食住の料金が他の街に比べてかなり高いが、その辺はどうなんだ?」
「この町はかなり古い建物が多くてですな。その修繕費や維持費にお金がかかるのですよ」
不躾な質問にも嫌な顔せず、丁寧に教えてくれた。
この人が本当に悪政を強いているのか?
もしかしたら、これも罠かも知れないも顔に出さないように警戒心を高める。
「これも立派な観光資源なもので、街人たちには申し訳ないのですが、税収は高くなってしまいました……」
税収が高いことはみとめるんだな。
「その代わりと言ってはなんですが、週一回、商人に来てもらい安く食料や衣料など仕入れているのです」
「それが、さっきの行商人か」
ここまでは、矛盾点がない。
善政を行っている良き為政者だ。
「ありがとう。いい観光になったよ」
「いえいえ。またいつでも起こし下さい」
こうして領主と別れた俺達は、宿を探すことにした。
「ふむ、なかなかいい人そうだったけど……」
「ワタシなら、気配を消して、姿を見えなくなる魔法使えるわよ?」
シェルティも同じ魔法が使えてたな。
「今夜忍び込んでみるか」
「えぇ」
その夜。
俺達は魔法を使い、領主の自宅に来ていた。
「あの観光客……。いや。冒険者たちは少し厄介だな。この街と儂の事を勘ぐっている」
「どうしますか? いつも通りの手筈でやっちまいますか?」
「そうだな……。もう少し泳がせて見るか。それからでも遅くない。御柱様に捧げる生贄になってもらおうではないか」
御柱様?
もしかしてコイツらは、冒険者や観光客を秘密裏に葬って、その御柱様というのに捧げているのか?
「街人に対しての悪政ではなくて、外から来た者への悪虐が目的なのね」
「しかし、御柱様とは一体どんなモノなんだ?」
「話から推察するに、生贄を捧げないと、この街に災いをもたらす神みたいなものかしら」
「その災いを恐れての犯行か」
「おそらくね」
俺達は重要な手掛かりを手に入れ、屋敷をそっと後にした。
次の日、俺達は街の図書館に来ていた。もちろん御柱様に関しての資料がないか、探しに来たのだ。
しかし見つかるのは御柱信仰と呼ばれる祭りがあることくらい。
「やっぱ重要な事は領主の仕事場か、自宅にしかなさそうだな」
「そうね。早速行きましょう!」
またもや魔法を使い、まずは誰もいない領主宅へと足を運んだ。
鍵を開けるのも慣れたもんだ。
奥の部屋に書斎らしきものがある。
俺達はその書斎をつぶさに調べた。
「あった。おそらくこれだ」
「御柱信仰……。タイトルは図書館と同じね」
俺はパラパラと本の内容をめくり、目的の文章を見つけ出した。
「ここだ」
そこに書かれていたいたのは、やはり御柱様とは、生贄を捧げないと村を滅ぼす神だということ。
そのせいで、この街の人口が著しく減ったため、外部から人を招き、冒険者や観光客をさらっては生贄にしているということが記載されていた。
「真っ黒ね」
「あぁ。でも、御柱をなんとかしないと、領主を殺しても次の領主が、同じ事を繰り返すだけだと思う」
「そうね。元凶の御柱とやらをなんとかしないと」
俺達は、ワザとその作戦に乗ることにした。
生贄として御柱の所へ行き、御柱を倒す。
これが俺たちの答えだった。
「ここですぜ、領主様」
早速その夜に作戦は決行された。
俺たちの部屋へ、ゴロツキを引き連れた領主が現れたのだ。
「大人しくしろ!」
俺たちはわざと武器を渡して言う事を聞く。
「なんなんだ、いったい!」
「ワタシたちが何したっていうの!?」
大げさな演技までしてみせた。名優だな、うん。
「理由か……。それはこの街に来た事自体が間違いだったんだよ!」
俺は後頭部を殴られ、気絶した振りをする。
ヴァルスも同じように縄で縛られていた。
「へへ。これで御柱様も少しの間は大人しくしてくださるだろう」
「この者たちを連れて行け!」
「はっ!」
こうして俺たちは、御柱の元へと送り込まれたのだった。




