まだまだ戦力が欲しい!
エルフが一万人ほど仲間になったが、それでも戦闘員は九万程度。
マギロス、ヒュムロスと戦うに会っては十五万人はほしいんだよな。
個々の力なら、決して引けを取らないとは思う。
そして聖竜候補や、この大陸で一番大きかった魔族の集落も仲間にした。
ギルドもできて、そこから人材も流れて来てる。
でもそろそろ頭打ちになってきたぞ。
「さて、どうするか」
「裏社会の人間や魔族でも雇ってみる?」
「雇うか」
なるほど。シェルティの言う通り、傭兵みたいな形で参加してもらうのもありなのか。
「裏社会の人間とか、裏切りそうじゃない?」
「そうでもないわよ。彼等も不正して依頼が来なくなったら、おまんまの食い上げだからね。依頼されたことはしっかり守るわ」
そんなものか。それなら試してみる価値はありそうだな。
「どうやったら、コンタクトとれる?」
「裏社会なりのギルドもあるわよ。行ってみたら?」
「そうするかぁ」
裏社会の人間か。怖くない人たちだといいけど。
「一番近いのはヒュムロスのハルカの街かしら」
「おぉ、近いな」
最近は商船も頻繁に通るようになったので、交通のべんも改善された。
「よし、いっちょやってみっか!」
こうして俺はハルカの港町に行くことにした。
ら、何故かカオスちゃんの姉のヴァルスが付いてきた。
「なんで? 研究は?」
「たまの気晴らしよ。それに、貴方にも興味あるし」
その目は捕食対象を見る蛇のようだった。
「貴方ほど珍しい研究対象も他にいないからね」
異世界人としてはそうだろうな。世界で俺しかいないわけだし。
「貴方の手腕、見せてあげるわ」
なんか上から目線のところはシェルティに似てるな。
キャラ付けができてないぞー。どっかの誰かさーん。
というわけで何故かヴァルスと一緒にハルカの町に来ていた。
「外に出るのも久しぶりね」
「いつも研究してもらってるからな。新しい魔法や攻撃、バフ、回復なんかも試してくれてるし」
「人間の科学者と一緒に研究するのも面白いわよ。私たちにはない独創性を持ってるわ」
そういうものなのか。門外漢の俺にはよく分からないが、有意義な時間を過ごせているみたいでよかった。
俺達は一件の古びた酒屋に入る。
そういえば、俺ももう酒が飲める年齢になったんだなぁ。
それくらいの月日をこの異世界で過ごしている。
「らっしゃい……」
やる気のない店主からの言葉。
「カルーアミルクとオレンジジュースで」
「!? あいよ。奥に来な」
少し驚いた顔をしていたが、これは合言葉だ。
闇の住人たちに取り計らってもらうための。
しかも、裏ギルドの長への面会を求めるもの。
「ボス、この者たちが例の合言葉を……」
「ほぉ、若いのによく知ってたな」
シェルティの万物の書があるからね。
「しかもアンタ、ただの人間じゃねえな。もしかして、異世界人とかいうやつか?」
鷹のような目で俺を見つめ、正体を看破する。
ボスというからにはこれくらいの慧眼が必要なのだろう。
「複雑な話はいらん。端的に話せ」
「裏社会の人間や魔族を全員雇いたい」
すると、ギルド長の目が釣り上がる。
「ほう、なかなか大きく出たものだな。理由は?」
「戦争を終わらせるために、だ」
俺は今回、かなりの額の金を持ってきた。
それを長に見せる。
「ふん。純度の高い、いい金だ。これなら百人は雇えるだろう」
「もちろん全員借りるとなると、その分の金は用意する。装備品も最高級の物を約束するよ」
「上手い話だ。しかしな、金で買えないものがある。わかるか? それは信頼だよ」
裏社会でもそれは同じか。
「そこでお前に殺して欲しい人間がいる」
「殺しに加担しろと?」
「なに、俺たちが請け負うのは義賊みたいなもんだ。私腹を肥やし、重税を課し、民を奴隷のように扱う豚やろうさ。確かに頼まれりゃ、善人も殺すが、基本的には断ることにしてる」
「分かった。その依頼、引き受けよう」
「アンタに人間が切れるのかい?」
「あぁ、斬れるさ。その代わり一つ約束をしてほしい」
「なんだ?」
「後釜には最高の領主を着けてくれ。民思いのな」
「ふむ。では、それはこちらで手配しよう。気に入ったよ。殺した後のことまで考えられる奴はそうは居ない」
「で、場所はどこだ?」
「ここ。ヒュムロス城の遥か東側、ミカド領だ。気をつけろ。手練が腐るほどいる。俺達でも全容は把握しきれていない」
「分かった。忠告ありがとな」
そう言って、詳しい地図と、いかにも普通の旅人が切るような服にと武器に持ち替えた俺は、裏社会ギルドを後にした。
「どうだったのかしら?」
「依頼を任されたよ。クソ野郎な領主を殺して欲しいらしい」
「へぇ。私たち向きじゃない」
「殺すだけなら、な」
「どういうこと?」
「なーんか裏がありそうな気がしてね」
そんな話をしながら、ミカド領へ向かうことにした。
道中は困ったことに、ヴァルスがくっついて離れなかったことだ。
「歩きにくいだろう!」
「いいじゃない。わたし、貴方を気に入ってるの。何だったら、次期マギロス王にでもなる?」
「俺は一応、竜魔人連合の王だぞ? 戦争後の事も考えると、そうも行かないだろ」
「じゃあ、ワタシの愛人にしてあげるわ」
シェルティもかなりの、たわわだが、ヴァルスも負けず劣らずだ。
最近なんか色んな人にアプローチかけられてるよぉ。
どうすればいいのー!?
「はい、あーん」
「いらんわ! 子供じゃあるまいし!」
「酷いー」
最初は研究一筋の職人だと思ってたが、二人きりだとこんな甘々になるか。
これがギャップ萌えってやつか?
「じゃあ、そろそろ寝ようかしら」
「あぁ、お休み」
なんかどっと疲れた。
早く寝てしまおう。
「って! なんでこっち入ってくるの!? ちゃんともう一つテント用意したでしょ!!」
「あら、カオスとはお風呂にも一緒に入って、寝るのも同じ布団だったらしいじゃない。ならワタシも……」
獣だ。獣の目をしておる……!
「ワタシに任せて? 天国に連れてってあげる」
「遠慮します!」
こんな波乱がありつつも、俺達はミカド領に向かったのだった。




