戦力が欲しい!
さて、ある程度町のインフラは揃った。
戦闘員、非戦闘員、合わせて二千万人ほどの巨大な町となった。
でも、戦闘員がまだ圧倒的に足りていない。
ハヤテたちも冒険者仲間などに声掛けをしてくれてるし、カオスちゃんもマギロスから優秀な人材を集めて来てくれている。
俺もクーデターの成功者として、ヒュムロスから兵士をスカウトしてきたが、それでも足りない。
「この未開の大地に、他に戦力になりそうな部族はいないのか?」
シェルティに聞いてみることにした。
万物の書を持っている彼女なら、この世界の事が手に取るようにわかる。
天使だった頃の能力の一部らしい。
「いるにはいるけど、まず難しいと思うわ」
「なんで?」
「悪魔族の次に大きな部族が、エルフなのよ。でも、ヒュムロスやマギロスに、奴隷のように集められて、無理矢理戦争に送り込まれたの。そのことがあってから、エルフたちはこの未開の大地に住み着いたわ」
「なるほど。つらい過去があったのか……。書簡だけでも出してみるか」
「無駄だと思うけど、やってみる?」
「もちろん」
こうして俺は誠心誠意を込めた手紙を書き、エルフの里に送ることにした。
手紙を出してから一週間。
やはり無理か? と思っていた所に、エルフからの返事が来た。
その中身は「俺一人で来い」というものだった。
魔族も人も信じられないが、異世界人ならいいという判断らしい。
「しかたない。今回は一人で行くかぁ」
なかなか一人旅なんてしないからな。ちょっとワクワクする。
エルフの里まで約半月。
なるべく急ぎながらの行程となった。
さて、そろそろなはずなんだけど……。
歩いていると、木の精霊のところでも感じた、スルリ、という感触と共に、さっきまでと全く違う景色が広がっていた。
「すごい……」
木が自らの意志で住居に形を変えているようにみえる。
「む。この結界をすり抜けるとは、魔力回路がないのか?」
一人の女性が話しかけてきた。
「手紙を書いた、ヨーイチ・キノシタ。異世界人だ」
「貴方が……。私の名はユズハ。悪意あるものと、魔力回路を持つ者はこの里にはいれないはず。それを通り抜けただけでも貴方を歓迎しよう」
「ありがとう。しかしすごい集落だね」
「そうであろう? 私たちとはこの一帯に住む精霊に認められ、ここに住まわせて貰っているのだ」
「なるほど。だから木自体が形を変えているのか」
「お主のことは、テーブルマウンテンに住む大木からも話しを聞いている。枯れかけた大木を癒してくれたようだな」
「まぁ、たまたま4精霊と仲良くなったから、ちょっと力を借りただけだよ。俺の手柄じゃない」
「それでも、だ。自然と共に暮らす我等にはその優しさが嬉しかった」
話しながら、森の奥に連れて行かれる。
「この先に長老たちがいる。会って話しをしてくるといい」
そう言って一旦ユズハと別れる。
「お主が異世界人か?」
「確かに魔力回路を持っていないようだ」
「この森にも歓迎されている」
3人の古老が話しかけてきた。
「ヨーイチ・キノシタだ。よろしくな」
「我等には名がない。ジジイでもババアでも好きに呼ぶがいい。ははははは」
「流石にそれは失礼だよ。古老、とでも呼ばせてもらうさ」
A、B、Cと呼ぼう。
A「さて、お主のことは聞き及んどるよ。鎖国のようなことはしていても、鳥や木々から聞こえる声もあるんじゃ」
B「第三勢力を作って、マギロスとヒュムロスに勝とうとしとるそうじゃないか」
C「儂等は散々その2国に虐げられてきたからのぉ。未だに帰らん奴もおる。生きてるかどうかもわからん」
「戦争以外でも奴隷扱いされてたって本当か?」
C「あぁ。我等は意外と頑丈に出来ていてな。樹の実と水があれば、一晩で傷を癒すことも、体力を回復することもできる」
「今の王たちと会ってきたが、そんなことする人や魔族には見えなかったけどなぁ」
A「千年も前の話しじゃからの、ホッホッホ」
「そんな前なの!? でも、虐げられた事実があるなら、安住の地を見つけられてよかったよ」
B「そんなこと言ってくれる若者もそうはいないて」
「でも、俺はエルフの皆に、戦争に加担してくれ、と頼みに来た。それとはどう違うと思うんだ?」
A「武力と対話、の違いかのぉ。無理矢理戦争に駆り出されるのと、自らの意志で戦場に立つのとでは、心持ちもまったく違う。そしてお主は対話を選んでくれた。その違いじゃ」
「なるほど。じゃあ、単刀直入に言おうか。ぜひ、歴戦のエルフ達の力を貸して欲しい。そのためなら何だってする」
C「なんでもか……。では……」
で、なんでもすると言った矢先、拾い野原で俺対エルフ100名の模擬戦が行われることになった。
いくらなんでも人数差ありすぎやしないかい?
しかも相手はみな千歳以上の、昔の戦争を経験してきた手練だ。
この地に住みながらも鍛錬を一時も欠かしたことがないのは、その立ち居振る舞いから見て取れた。
弓兵兼魔術師30、槍兵40、剣兵20、素手が10と言ったところか。
「外部の者。しかも異世界人と戦えるとはな。腕がなるぜ」
エルフって、もっと華奢で魔法とかに長けてたりするものじゃないんすか?
完全に脳筋混ざってるぞ。
A「はじめ!!」
突撃の雄叫びをあげることもせず、一斉に得意の位置に移動すると、各々が攻撃を仕掛けてくる。
俺だって遊んでいたわけではない。
ウェスティアさん、イースティア、他の聖竜候補生、悪魔族、人間、獣系の魔族など、多種多様な相手と戦ってきた。
そして気づいたことがある。それは俺の能力だ。
『運の良さはカンスト』
つまり、運だけで勝ってきたことになる。
その能力を最大限に発揮することができるようになったのだ。
俺は目を閉じて、ただなんとなく流れに身を任せて動くだけ。
それだけで矢は大地に刺さり、槍はかわされ、剣は空を斬り、拳は当たらない。
そう、全部運任せにすることにしたのだ!
んで、適当に剣を振れば必ず当たる。
巨大な魔力を持っことよりも、宇宙規模の戦闘能力をもつ兵器も、山を消し去るような力もいらない。
ある意味チートだった。
エルフたちは、俺に近い順に次々木剣で叩かれていく。本物の剣だったら死んでいたことだろう。
20分後。残るは魔術師軍団となった。
「行くぞ!!」
全員の魔力を結集して、巨大な風を巻き起こす。
それは災害レベルの竜巻となり、俺に襲いかかる。
しかし、俺には風の精霊がいる。
人の身である限り、世界の運行を司るほどの力を持った精霊には叶わない。
俺が腕を一振しただけで、その竜巻は消え失せた。
B「勝負あり、かのぉ」
30分足らずで100人程のエルフを無傷で叩きのめしてみせた。
これなら試練は合格できるだろう。
C「これが戦争なら、皆瀕死の重症だったじゃろうな」
B「しかもまだ余力を残してそうじゃの」
俺は息一つ切らしてない。
A「約束じゃ。この歴戦の兵100名と、さらに若いエルフ達の一万をお主に貸そうではないか」
「そんなにいいのか?」
C「若い衆も、鍛錬だけは積んでおる。聖竜様に鍛えられたら、さらにお主の力になるじゃろう」
「ありがとう。必ず不毛な戦争を終わらせて、世界を平和にして見せるよ」
B「期待しておるぞ、ヨーイチ殿」
その時走って来た若いエルフがいた。
ユズハだ。
「お前すげぇな! 伝説の勇者みたいだったぜ!」
「あはは。大げさだよ。まぁ、異世界人だからある程度の能力があるってだけだよ」
「私も、お前のためなら、どんな訓練もこなしてやるよ!」
こうして俺はエルフの大軍団を引き連れて帰ることを竜魔人連合国に速達でだしてから、また約半月の旅路に出た。




