ヒミカとバトル!
ヒミカは連れてきたドワーフの名工たちと共に、切磋琢磨しながら新しい武具を作り出していた。
ドワーフたちも、今まで扱ったことのない魔線鋼や虹彩などの鉱石を前に大喜び。
ヒミカもヒミカで、セントライドに大喜び。
和気あいあいと次はどんな物を作ろうかと楽しそうに考えている。
聖竜クラスのドラゴンが増えたおかげで、個々の戦力も大幅アップし、さらに最高ランクにまで進化する者も出てきた。
最弱だったゴブリンたちもほぼ全員がゴブリンロードというクラスに進化したり、ハヤテも普通の悪魔から、悪魔皇帝というとんでもクラスになっていた。
「くそ〜! オレも強くなってるはずなのに、なんでヨウに勝てないんだ!」
と悔しがっていた。
実力ならハヤテの方が段違いで上だが、俺は運だけで連戦連勝だった。
ある意味チートかもな、うん。
そんな折、回復アイテムの質が悪いということでそこが弱点になるという指摘がヒミカから入った。
回復アイテムも、ヒミカの人脈である程度確保はできているが、やはりマギロスもヒュムロスも戦争で使いたいらしく、高品質な回復薬はなかなか回ってこない。
そこで、薬の原料となる薬草や、薬を作ることに長けた錬金術師を探すことにした。
もちろんシェルティの万物の書に書いてある。そこに俺とヒミカは向かうことにした。
未開の大地の中でも最も人が足を踏み入れない場所。
テーブルマウンテンと呼ばれる所に薬草があり、その麓に凄腕の錬金術師もいるとのことだった。
「早速行きましょう! 新しいアイテムが増えるのはとてもワクワクします!」
鼻息荒く、ヒミカは俺の手を引き、町を飛び出した。
歩くこと一ヶ月。
やっと近くまで来ることができた。
「ヨーイチさん、お願いがあります」
ヒミカの表情は真剣そのものだった。
「私と戦って下さい」
なんと、そう来たか。
「わかった。確かにヒミカと戦うのは初めてだな」
一度ヒミカの作ったパワードアーマーを使った盗賊と戦ったことがあったが、かなり厄介だった。
しかもその頃よりも性能は格段に性能はアップしている。
本来なら、パワードスーツとアーマーは併用する事ができないが、それを可能としたのもヒミカの職人としての腕があればこそだ。
お互いに距離を取る。
俺はいつもの装備。
ヒミカはパワードスーツとアーマーを身に着け、聖素を使ったエネルギー銃とエネルギーソードを装備している。
聖素は本来は人間や魔物とっては猛毒である。
しかし、魔力回路がない俺にはその効果はなく、普通の剣と変わらない。
対峙した瞬間、ヒミカが銃を放つ。
俺はそれを回避と盾で凌ぎつつ、接近する。
ヒミカの判断も早い。
銃を手放すと、ソードに切り替え応戦してくる。
火花を散らす剣とソード。
俺はわざと力を抜き、ヒミカの体勢を崩す。
渾身の一撃を叩き込むと同時に、爆熱の魔石を発動させた。
「!!」
ヒミカは弾かれたように後にさがる。
普通のパワードアーマーなら木っ端微塵の威力のはずだが、ヒミカのパワードアーマーはびくともしていなかった。
「さすがです。人間の身一つでこのアーマーと渡り合えるなんて」
「俺も、今ので終わったと思ったんだけどな」
俺は剣撃を斬りから突きに変える。
アーマの繋ぎ目を狙う作戦だ。
「くっ!」
ソードと円盾で回避をしてはいるが、明らかにやりづらそうだ。
やはり繋ぎ目は弱点のようだ。
「風刃!」
一度後に引き、風の精霊の力を借りて刃を放つ。
狙うは膝。
しかし、それは完全に弾かれた。
「魔法は効きませんよ」
爆熱の魔石が防がれたのもこの力か!
魔線鋼に虹彩、さらにはセントライドというこの世のあらゆる幻と言われる鉱石を使って作られたアーマーには精霊の力すら及ばないらしい。
魔法に頼らず、戦うしかなさそうだ。
「はあっ!」
アーマーを着込んでるとは思えない速度で動き回るヒミカに振り回される。
「八重桜!」
俺はウェスティアさんの試練で手に入れた技を繰り出す。
一息で八連撃を放つ大技だ。
普段は斬撃だが、今回は突きでいく。
しかし。
慣れない技で、アーマーに弾かれて体勢を崩す。
その頭上を、ヒミカの突きが掠める。
「っぶね!」
しかし剣は飛んでいってしまった。
俺はもう一本の剣を抜き、ヒミカの猛攻を凌ぐ。
たまたま換えの剣を持っててよかった。普段は持ってないんだけどな。
戦いはほぼ互角。
そこで信じられないことが起こる。
弾かれた剣が頭上から降って来たのだ。
俺はそれをもう片方の手で受け取ると、二刀で斬り付ける。
流石に予想してなかったヒミカのアーマの両腕の関節を切り裂いた。
「ま、参りました……」
両腕が使えない限り、勝つことは難しだろう。
「まさか、二刀流にするために剣を手放すとは思いませんでした」
「はは……」
これも俺の運の良さの一つだろう。
戦闘を終え、近くの川で水浴びをしていた所、何故かヒミカがやってきた。
「ちょっ! ヒミカ!?」
ヒミカは一糸纏わぬ姿だ。
「お背中を流そうと思いまして」
「い、いや! お構いなく!」
「そう言わずに」
石鹸なんて高価な物を使い、背中を洗ってくれるヒミカ。
「きれいになりましたね。では、ヨーイチさんも、私の背中、流して下さい」
「お、おぅ」
スレンダーな背中に石鹸の着いたタオルでヒミカの背中を洗う。
「んっ!」
くすぐったいのか、ヒミカは艶っぽい声を出す。
「こ、これいじょうは終わり!!」
俺は体の泡を流すと、川から上がってヒミカに背を向けた。
「ヨーイチさん」
その背中にヒミカが抱きついてくる。
「他の方もヨーイチさんに恋心を抱いているのはわかってます。でも、何番目でもいいので、私を妻にして下さい」
「そ、それは……」
「わかってます。すぐに返事ができないことくらい。ですので、私のことも頭の片隅に置いておいて下さい」
そう言ってヒミカは離れて川に浸かった。
俺は何も言えず、体を拭き新しい服へと着替えた。




