名工を訪れる
さて、なんとなく、俺たちの町、と呼んできたが、そろそろ本格的な名前も欲しい所だ。
「確かに呼び名があると便利かもね。てか、なんで今までつけなかったのよ」
「付けそびれたというか、なんというか……」
「ヨーイチ王国でいいんじゃない? お兄ちゃん」
「い、いや。それはちょっと……」
小っ恥ずかしくて付けられん。
「それよりも、書類がたまりに溜まってますよ、ヨーイチさん?」
ヒミカが怖い顔してる……。
「今行きます、はい」
てかなんで俺が町の運営をする事になってんだ?
そういうのは他の町で長を勤めてた人とかにやってもらった方がいいんじゃないか?
まぁ、街作りの言い出しっぺが俺なんだから仕方ないのかな?
「おつかれ、ヨウ!」
「お、ハヤテか。どうした?」
「実はな、貿易も盛んになってきたし、冒険者ギルドをこの町に作ったらどうか、って話が来てるんだ」
「冒険者ギルドか。そうすれば、もっと優秀な人材集められるな」
「そうそう。こんなうまい話しないだろ?」
「まだまだこの大陸も未開発だからな。森林とかの乱伐は避けたいけど、資源を探すクエストとかやってもらってもいいかもな」
「じゃあ、ギルドマスターは私がやろうかしら? 万物の書があればどこに何があるかわかるし、指示もしやすいわ」
シェルティが名乗り出てくれた。
「それは助かるな。これ以上仕事増やされたら過労死してしまう……」
学生がどれだけ楽だったかよくわかる。
これが社畜ってやつか。
「ほら、行きますよ、ヨーイチさん!」
しばらくあっちこっち行ってたから溜まりまくった書類を片付けるために3日かかった。
とほほ……。
やっとこさ書類も片付いた所で、はたとまた町の名前の事を考えてしまった。
シェルティはギルド立ち上げに大変だし、ウェスティアさんは他の竜たちと一緒に人や魔族に試練を与えている。
カオスちゃんは姉のヴァルスと共に魔法の研究。
ヒミカは相変わらずパワードアーマーやスーツを作るのに一生懸命だ。
「おう、何やしけた顔して」
振り返るとイースティアがいた。
「いや、ね。この町の名前をどうするかで悩んでるのよ」
「なるほどなぁ。確かに名前なかったもんな。ほならやぁ、ウチにちょっと付き合わへん?」
「ん? 何か用か?」
「人間が作る平気は、ヒミカがおるから心配ないんやけど、魔族が使う武具を作る人材がおらへんねん。宛があるから、連れてこよう、おもうてな」
「なるほど? で、町の名前決めるのとどう繋がるんだ?」
「息抜きや!」
俺はズッコケそうになったが、イースティアの言うことも一理あるのかも知れない。
「わかった、行くよ。で、どこまで行くんだ?」
「前に竜の三馬鹿がおったやろ?」
あぁ。クーデターのやり玉になりそうな所を俺たちが助けた時のトリオか。
「あの辺りにな、腕のいい武具職人がぎょうさんおるんやって」
「そらまた、辺鄙なところに」
「王族やら貴族やらに無茶振りされて、人嫌いになっただの、あまりに強力な武具を作って人里を追われただの、そういう奴等や」
ほぇーそんな場所があるんだ。
「よっしゃ、善は急げや!」
「今からかよ!」
慌てて支度すると、俺はイースティアの後を付いていった。
「ほら、はよ乗りんかい」
「ドラゴンの姿で行くんだ」
「船より早いやろ?」
ウェスティアさんの時もそうだったし別に普通のことなのかな?
「言っとくけど、誰でも乗せるわけちゃうで」
心を読まれていた。
「ウチが背中に乗せてもいいと思えるんわアンタだけや」
「それは嬉しいね」
仲良くしてはいるが、聖竜といえばこの世界の准神様みたいなものだ。
「飛ばしてくでー!」
「うわぁ〜っ!」
ウェスティアさんは相当手加減して飛んでくれてたんだな……。
空の魔物はイースティアが簡単に倒してくれるし、道中は大変楽なものだった。
「オェェェッ!!」
飛行が荒いこと以外は。
「すまんなぁ。久しぶりに飛んだもんやさかい、楽しゅうてつい。たはは」
「まぁいいや……。ここからその鍛冶屋がいる所までは近いのか?」
「まぁ、2日ほどやね。これ以上先は、うちの巨大じゃ降りられへんねん」
なるほど、だからこの場所なのか。
「でも、今日ももうすぐ暗くなる。ここで夜営するか」
「せやな。ヨーイチも色々溜まっとるやろ」
「色々ってなんだよ」
「最近女と2人で出かけること多いやん? そんときに発散しとるんちゃうん?」
「してないよ!」
「なんや、してないんかい。あんさんそれでも男かいな」
「あのねぇ……」
「ウチが発散したろか?」
にやにや笑うイースティア
「今はそんなことしてる暇はありません」
「今はなんやな」
ぐ、つい本音が。
「なら、ウチが立候補しても問題ないな」
「え?」
「でも、この世界は一夫多妻でもOKやし、みんなまとめて相手するのもいいで」
「ち、ちょっと! 何言ってるんだ!?」
「まぁウチも女やさかい、いい男には惚れてまう、いうわけや」
そんな真剣に言われると、どきりとする。
こんな見た目幼女に……。
イースティアが近づいてくる。
「ウチが聖竜や知っても普通に接してくれたんはアンタだけや。みんな信仰の対象や試練を受けにしかけぇへん。しかも命まで助けてもろうたしな。好きにならない理由があらへん」
これもまたイースティアの本音なのだろう。
「今はまだ答え出さんくてええよ。戦争に勝ってからや」
そう言いつつ、俺と同じ寝袋に入り込む。
その身体は小さいのにとても温かかった。
「よっしゃ、行くで!」
昨日のことなど何も無かったかのように振る舞うイースティア。
こっちは緊張して、あまり寝れなかったというのに……。
歩くこと2日。
集落のようなものが見えてきた。
川のほとり。毛森が立ち込めている。
「こんなところで商売になってんのか?」
「それなりの販売通路は持っとるみたいよ。ヒミカみたいな無名の凄腕商人が買い付けに来るらしいで」
なるほど、それでこんなに賑わってるのか。
もっと偏屈者の集まりだと思ってた。
「よう、長老、元気にしてるか?」
「なんだ、イースティアか。どうした。」
「あんさんたちの力を借りたいんや」
「儂たちの?」
いかにも屈強で繊細なドワーフの親方って感じだ。
長老と呼ばれているが、まだまだ現役バリバリだな。
「それまたどうした」
「カクカクシカジカて……」
俺は経緯を説明する。
「あんた、なかなか無謀なこと考えるな。気に入ったぜ」
お、戦闘無しで仲間になってくれるパターンか?
「ただし条件がある」
やっぱりな……。
「この辺は隕鉄であるセントライドが、よく取れる地域でもある。それを大量に持ってきて欲しい」
「お安い御用だ」
持ってくるだけの、簡単な、お仕事。
俺とイースティアは二つ返事でOKした。




