俺の能力!
朝。例のロリババアはまだ作業中のようだ。
俺たちが朝食を食べ終わるころに、ロリババアから声がかかった。
「新しい水晶玉ができたぞ。これでお主のことが占える」
お、やっとか!
待ちに待った俺の知られざる能力の全貌が明らかになる。
「早速占ってくれ!」
「まあ、そうせくでない。今から儀式の間に入る。そこでお主には試練に打ち勝ってもらう」
「試練?」
「そうじゃ。その試練をクリアすればお主の能力がわかるじゃろう」
なるほど、一筋縄ではいかないわけか。
「じゃあ、早速その試練とやらを受けさせてもらうか!」
館の中でも特別広い部屋に案内された。
その中央には魔法陣が用意されている。
「その中に入れば、試練の始まりじゃ。結界が張ってあって、周りに被害は及ばん。この水晶玉の力じゃな」
結界の中心部。空中に水晶玉は浮いている。
「サッサとクリアして、私にも神様が授けたあなただけの能力、見せたてみなさいよ」
シェルティが軽く肩パンしてくる。
「ああ、行ってくる」、俺が結界の中に入ると、ぼんやりと人影のようなものが浮かび上がる。
それは次第に姿を鮮明にし、ついに「俺」の形となった。
「戦うのは俺自身なのか?」
「なるほど、そう来たのか。これは、試練に挑む者の戦闘力に応じて相手が決まるものよ。まさか本人が出てくるとはおもわなんだ」
ロリババアでも、何が出るかは分からないってことか。
「その戦いのなかで、お主と試練とで決定的な違いがあるはずじゃ。それがお前の持つ能力じゃろう」
よし、そういうことなら。
俺が剣を構えると──仮にドッペルと呼ぶ──は同じく構える。
構えも一緒なら、間合いの詰め方や装備品まで同じだった。
隙をなかなか見せない。
力量はまったくの互角だろう。何ぜ俺を模して作られたドッペルなのだから。
意を決して攻撃するが、相手も同じ事を考えていたらしい。
剣と剣がぶつかり合い、火花を散らす。
「「爆熱の魔石!」」
魔石を使う所まで一緒だ。
魔石同士が衝突し、対消滅する。
それを紙一重でかわし、再び剣を振るう。
お互いに盾で受け、さらに剣戟は激しくなる。
「この!」
俺はドッペルの腹部に蹴りを入れて吹き飛ばす。その隙を見逃す手はない。
が。
体勢を崩したように見せかけただけだと気づき、距離を取る。
瞬間。俺が先程までいた場所に突きが繰り出されていた。
やりづらい!
まったく同じ能力値に思考回路。
ここまでは俺とドッペルの間に差は見られない。
ロリババアが言うには、このドッペルとの俺の間には何かしら能力の違いがあるというが……。
そんな事を考えていると、ドッペルはシールドバッシュを仕掛けてきた。
考えるに、爆熱の魔石を盾に付け替えてるはず。
対して俺は、反応できずに鎧でその攻撃を受けてしまう。
その時。
胸にはめられた水の精霊の魔石と爆熱の魔石が反応を起こす。
「また水蒸気爆発か!?」
しかし、今回は爆発こそしなかったが、とてつもない高温の水蒸気が発生する。
俺は一足先に逃れたが、ドッペルはその高温の水蒸気をまともにくらい、全身にやけどを追う。
「今だ!」
悶えるドッペルを一刀両断した。
「ふぅ。勝てた……」
ドラゴンよりよほどやり難い相手だった。
「なるほどのぉ」
得心言った顔で水晶玉を回収するロリババア。
「しかし、いい加減ロリババア扱いはいやじゃのう。我が名はアレグリアじゃ。そう呼べと行ってるじゃろ」
心の中まで読めるのか?
そんな事を思いながら、俺たちはクラリスに連れられて館の最深部に再び足を踏み入れた。
「この水晶玉で先程の戦いを鮮明に記憶させてもらった。その上で、同じ能力を持つ者と戦い、勝った理由を明確にするのじゃ」
しばし瞑想に入るアレグリア。
そして。
「わかったぞ、お主の能力が」
「本当か!?」
俺は思わず身を乗り出す。
「運の良さじゃな」
「は?」
「だから、お主の強さの根源は、『運』じゃ」
「うん? てことは今まで勝ててたのは、たまたまってことか?」
「まぁ、言うじゃろう? 運も実力の内と」
え? そのことわざこっちの世界にもあるの?
「ぷっ!アハハハハハハハっ!!」
シェルティが盛大に笑い出す。
「ヨーイチ、アンタにお似合いじゃない!!」
背中バンバン叩くなよ!
「なんだよ〜、そのカッコ悪い能力……」
「あとは人としての魅力があって、みんなお前に力を貸してくれるじゃろう」
なんとなくそれはあたっている気がする。
「……。ちなみに、運の良さって数値であらわせるか?」
「そうじゃのぉ。他のステータスを10とするならば、運の良さは1000じゃな」
破格の数値!
「いわれると心当たりが多数あるような……」
「ま、実力も付いてきてはいるみたいだがの」
異世界人だから、魔法回路もなくてパワードスーツもアーマーも使えなかったけど、そんな裏があるとは……。
「でも、今までの異世界転生者にはない能力じゃ。大体は戦闘特化だったりからの」
からからと笑うアレグリア。
「はぁ……。なんかガックリきたけど、それでもこの能力のおかげでここまでこれたんだからな……。受け入れるしかないか……」
俺は肩を落としたが、それもまた強さの一つだと思い、気を取り直すことにした。
「能力もわかったし、帰るか……」
「そんなしょぼくれないの! これからもきっと運でなんとかなるわよ!」
そう言ったシェルティの目は先程とは打って変わって優しいものだった。
「ちと待て。我も共に行こうぞ」
「へ? アレグリアが?」
「うむ。我が居れば、強くなるだけではない。その者の能力を見極め、適した才能の伸ばし方をできるようになる!」
「そんなことができるのか?」
「当たり前じゃ。我は世界一の占い師ぞ」
エヘン、と無い胸をはる。
「頼もしくていいじゃない。一緒に行きましょうよ」
「シェルティとやらも、少しは天使の力を取り戻せることができるやもしれんな」
「じゃあ、これからよろしく頼むよ、アレグリア」
「おう!」
こうして新しい仲間を加え、俺たちは町へ戻ることにした。




