クエストをこなせ!
扉がひとりでに閉まる。
すると、次の扉が開く。
「あっちに行けってことかな」
「でしょうね」
開く扉に誘われ、館の奥へと入っていく。
すると、館の一番奥と思われる場所に一人の幼女が座っていた。
いかにもな巨大な水晶玉も置いてある。
「よく来たのぉ。お主らが来ることはわかっておったぞ、異世界の住人よ」
どうやら俺たちの素性も知っているらしかった。
「なら話が早い。単刀直入に言う。俺に与えられた能力が何なのか、教えてほしいんだ」
「若者はせっかちじゃのぉ。ただで教えて貰おうなどと、虫が良すぎんか?」
「じゃあ何か欲しいものでもあるのかしら?」
「この先に洞窟が有っての。そこで取れる水晶がお主のことを占うのに必要なんじゃが、最近魔物が住み着いての。わしは戦闘はからきしじゃ」
「それを俺たちに取ってこい、と」
「そういうことじゃ」
かかか、と笑う魔幼女。
それがないと占えないというなら、取りに行くしかないだろう。
「わかった。でも、今日は疲れた。明日でもいいか?」
「もちろんじゃ。今日はこの館でゆっくりするがいい。部屋は一緒がいいか?」
「別々で!」
なにをぬかすか、この幼女は。
「ちなみにわしの名はアレグリアじゃ。幼女などと呼ぶなよ。こう見えて、お前たちの何十倍も生きておる」
「わかったよ。よろしく、アレグリア」
握手をかわし、今日はこの館でゆっくりさせてもらうことにした。
翌日。
俺たちは装備を整えると、早速その洞窟とやらに行ってみることにした。
「よし、準備はいいか?」
「もちろん」
館を出て、さらに森の奥。
そこに洞窟はあった。
シェルティの魔法も15回まで使えるようになっている。
さらに魔石で2回、MAXまで回復できるので、頼もしいことこの上ない。
湿った土を滑らないように踏みしめながら、広い洞窟内を探索していく。
「お得意のマッピングは?」
「今のところ一本道が続きそうかな。でも、隠れられる場所があるから、待ち構えられてることも念頭に入れた方がいいかも」
洞窟内自体は広いものの、鍾乳石が沢山ある。
もしかしたら、その影に魔獣が……。などと考えると、気を引き締めねばと思う。
「分かれ道ね」
「左に行こう」
「その心は?」
「左手の法則ってのがあってね。迷った時、壁に左手を付いて歩いていくと、ゴールにたどり着けるんだ」
「右手でもよくない?」
「それは言わないお約束」
警戒は解かないが、リラックスするのも大事だ。軽口を叩きながら先に進む。
「行き止まりか」
「本当に魔獣なんているの?」
「もっと奥の水晶がある辺りにいるのかもな」
来た道を戻る時に、狼型の魔獣数匹と交戦したが、ものの敵ではない。
もう一つの道に差し掛かった時に、自体は一変した。
「なんだこれ……」
「水晶が」
本来なら、壁一面に水晶があったのだろうが、それが全て食べられている。
「一体どんな魔物なんだ?」
「ちょっと待って」
シェルティが万物の書で、水晶を食べる魔獣を調べている。
「あった。弱い魔獣なら、ムカデみたいな奴がいるわね。数が厄介なだけで大したことないわ」
でも「水晶を食べるドラゴンもいるらしいわ」
「ドラゴンか……。また厄介な」
定期的に出てくるな、ドラゴン。
しばらくあるいても、他の魔獣は出てこない。
「ビンゴ、かな?」
奥に蠢く巨体。
「grrrrrrrrr……」
「あたってほしくない予想が当たったわね」
ドラゴンはこちらを視認すると、いきなり話しかけてきた。
「貴様らは何者だ? 我の邪魔をしに来たのか?」
「喋れんのかよ!」
「なんでここで水晶を食べているの?」
「しばらく寝ている間に、我のいた魔穴に町が出来ていてな。そこには我より強い竜が2人もいるではないか。それで、ここの水晶には魔力が含まれてるのを思い出したのだ」
やべぇ、元凶俺等じゃん。
「すまん、そこに町を作ったのは俺たちだ」
「何だと! 我の住処を奪ったのは貴様らだったか!」
竜は問答無用というように襲いかかってきた!
「ま、待て! 一緒に暮らしたり、やりようはいくらでもあるだろ!」
「八つ当たり位せねば気が済まん!!」
八つ当たりかい!
ドラゴンはいきなりブレスを吐き出す。
だが、シェルティがそれを魔法で無効化する。
そこに俺が足元に滑り込み、踵を狙って斬りつける。
流石に鱗は硬いが、それでもダメージは通ったようだ。
「grrrrrrrrr!!」
痛みに咆哮をあげる水晶竜。
すかさずシェルティが呪文で竜の口を塞ぐ。
魔力の高い個体は魔法も使うこともあるし、ブレスも塞げるいい一手だ。
竜の腹のしたまで潜り込むと、俺は土の精霊の力を使い、地面を隆起させる。
「エクスプロージョン!」
殺さないように、先端は尖らせず、打撲だけ与える。
下から突き上げられたドラゴンの巨体は宙を舞い、地面に叩きつけられると、二転三転して横たわった。
しかし、すぐに体勢を立て直すと、鋭い爪で攻撃してくる。
俺はそれを紙一重で避けた。
あんなもんまともに食らったら、この盾と鎧でもひとたまりもない。
喋れなくなったドラゴンはそれでも抵抗を続けてくる。
巨体に見合わない素早い動きに、一撃必倒の強力な攻撃。
やはり竜は厄介だ。
「しまっ!?」
しまったと思った時には遅く、眼前に竜の尻尾が高速で迫っていた。
慌てて盾をかかげ、踏ん張る。
しかし、盾に嵌っていたいたのは水の精霊の力を吸い取った魔石。
その精霊の力が刃となって尻尾を切り落とした。
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
声にならない声で苦痛を表現するドラゴン。
あぶねー。たまたま水の精霊の魔石を装備しといてよかった。
ドラゴンが落ち着くのを待ってから声をかける。
「どうだ、まだやるか? 降参してくれるなら、一緒に魔穴の所まで行って、一緒にくらそう」
ドラゴンは喋れないため、コクコクと頷いた。
「よし、一見落着だな」
一応拘束して手も足も出ない状況にしてから連れていくことにした。
先日仲間にした悪魔──名前はジードと言った──に町まで連れて帰ってもらうことにした。
「よろしくな、ジード」
「大悪魔ともあろうオレが……」
ぶつくさ言ってはいるが、命令には逆らえない。
俺たちはジードがドラゴンを連れて行くのを見届けてから、占い師の館に戻った。
「早かったのぉ。おかげでまた綺麗な水晶玉が作れそうじゃ」
のじゃロリババアは笑いながら、新しい水晶玉を作るから明日まで待て、と言ってその場はお開きになった。
「竜なんてそうそう出くわすもんじゃないんだけどね」
シェルティがそう言って伸びをする。
「淺竜だの聖竜だの、クーデターに使われそうになった竜だの、作者の引き出しがないだけなのか、やたらと遭遇するな」
その日はまた館でゆっくりとくつろいで、明日の水晶玉の出来上がりに備えることにした。




