魔線鋼とシェルティと
さて、例の悪魔たちは、この大陸で取れる魔線鋼を独り占めしていた。
正に魔線鋼の山だ。
「元から糸状の鉱石なんだな」
「そうよ。それをほぐして、素材にするの」
「す、すごいです! これならアーマーに魔力を付与できて、人間でも魔法を使えますし、状態異常系の魔法に抵抗もできます!」
ヒミカの目が輝いている。
「ウチらも虹彩持ってきたでー」
イースティアが虹色に光る鉱石を取り出した。
「そ、そそそ! それはまさか、聖山にしかないと言われる幻の鉱石!!」
ヒミカがぶっ倒れそうな勢いで駆けていった。
「あぁなったら、10日は飲まず食わずだな」
「それプラス寝ず、ね」
ヒミカはそれくらい真っ直ぐで分かりやすい。
「しかし、悪魔のボスも可哀想ね。名前を名乗る前に封印されちゃうなんて」
「デモンズがもう仲間として戦ってくれてる以上、収納石で命令聞かせる必要がないからな」
あの悪魔もなかなかすごいが、カオスちゃん程ではない。
そのカオスちゃんを封じることができた程の収納石だ。
封じられない魔物を探す方が難しいだろう。
「さて、私は散歩でもしてこよーっと! ヨーイチはどうするの? また特訓?」
「それがなぁ。強さ的にはもう頭打ちっぽいんだよ」
「もうこれ以上強くなれないってこと?」
「いや、強くはなれるんだろうけど、行って達人位なんだ。本当に俺の能力ってなんなんだよ〜」
伸び悩み。
それが俺の課題だった。
確かにパワードスーツやアーマーを装備してない割には強い。
でも魔法は使えない。
パワードスーツもアーマーも、戦闘機や戦車もなぜか俺が装備すると起動しなくなる。
結局剣や銃で戦わなくてはいけないのだ。
「でも、ウェスティアやイースティアには勝ててるんでしょう?」
「そうなんだよなぁ。なんかいい具合にはまるんだよ、戦いになると」
自分でもなんと言っていいかよく分からんが、なぜか勝てる。
だからたちが悪い。
「えぇと」
そうか、シェルティには万物の書があるんだ!
その本になら、俺のことも書いてあるかもしれない!
「この世界の事しか書かれてない書物に、異世界人のあなたのことが書いてあるわけないでしょ。そう言うのを鑑定とか占いできる人を探してるの」
確かに。
「あ、この大陸に一人、職業鑑定士みたいなのがいるみたいよ」
「マジか!」
これで俺の能力がわかるかもしれない!
やったね!
魔線鋼のことといい、なんかこの大陸に都合よく集まってるけど、ラッキーだ。
「早速会いに行こうぜ!」
「あー……。はいはい。わかったわよ」
こうして手持ち無沙汰なシェルティと2人で、その鑑定士の所に行くことにした。
道中、知らないで町や村に寄ることもあるだろうから、スカウトする準備だけは整えておく。
しかし、こっちはこの大陸最大の集落である、悪魔の軍団を倒して仲間に引き入れた実績がある。
武力面での抗争はないと見ていいだろう。
「シェルティと2人だけ、ってのも初めてかな」
「そうね。なんだかんだといつも皆と過ごしてたものね」
なんとなく訪れる沈黙。
「いっとくけど、アンタとラブコメする気はないからね」
「なんだよ、ヤブから棒に」
その頬はなんとなく紅い気がする。
「はっは〜ん、照れてるな、シェルティさん」
「べっ! 別に照れてなんかないわよ!!」
そんなシェルティがなんだか可愛くて、その手を取ってみる。
「なっ!?」
首まで真っ赤になる。
手を握ったまま、ブンブンと振りながら道を歩く。
「ちょっと! いつ魔獣が出るかわからないのよ!?」
そう言いながらも手を振りほどこうとはしない。
「まったく……」
そう言ってされるがままになってしまった。
この未開の地では街道なんてものはなく、道なき道をコンパス頼りに進んで行くだけだ。
当然地図なんてものもなく、どこに村や町があるかわからない。
これから行く先には町の明かりは見えなかった。
「こりゃ、今夜はキャンプかな」
「キャッ、キャンプ!?」
「なんだよ、いつもしてるだろ?」
「そうだけど、そうじゃないでしょ!?」
なるほど、シェルティと2人だけのキャンプというのは初めてだな。
「ちゃんとテントわけるし、いいだろ」
「当たり前でしょ! バカ!」
「それとも、一緒がよかった?」
「誰がアンタなんかと!」
キャイキャイ話しながら、テントを建てていく。
夕飯を食べ終えて、一息付く。
沈黙。
さっきまでのはしゃぎ様が嘘のような沈黙。正直気まずい。
「ねぇ……」
「お、おう」
変な声出た。
「ごめんね」
謝られる理由がわからず、ポカンとする。
「ほら、アタシが人間違えで殺しちゃったから、こんなことになってるわけだし」
「あぁ、そのことか。別に気にしてないよ」
それはおためごかしとかではなく、本心だった。
「でも、この世界に来てもう4年近くになるのよ? 学生の2年は大きいでしょ?」
4年か。もうそんなになるか。
「元の世界にいたら、こんな出会いはなかったかもな」
長いような短いような年月。
俺が前の世界に戻れたとして、どうなっているのだろう?
「それに、シェルティも十分に罰を受けてるだろ? 一緒にこの星に飛ばされてさ」
「まぁ、ね」
「確かに最初は理不尽だって思って、腹も立ったけど、今はこの世界もそんなに悪くないと思ってるよ」
「でも、いつ死ぬかわからないのよ?」
「……。」
俺は茫然とする。
今までだって死の危険を感じたことは何回もある。
しかし、何故か不思議と自分だけは死なないと思っていたのだ。
「皆が強かったからかな」
シェルティにウェスティアさんにカオスちゃん。
この3人が常に俺を守り続けてくれていたこと。
そのおかげか、死ぬという選択肢を除外していた。
「なにそれ。変なの」
アハハ、と笑うシェルティ。
「きっと俺は恵まれてここまでやって来れたんだと思う。んで、これからもそれは変わらないんじゃないかなって」
「なに? ずっと私たちに守られ続けるわけ?」
「まさか! もっと強くなって皆を守る側に回るつもりさ。そのためにも、自分がどんな能力があるのかしりたいんだ」
今よりもっと強くなるために。
俺たちの町もそれなりに有名らしく、たまたまたどり着いた村落を2〜3、説得する事ができた。
なにより、ウェスティアさんとイースティアの名前が効いたみたいだ。
「では、村の戦える者をそちらの町にいかせます」
「よろしく。悪いようにはしないさ」
そんな道中がありつつ、やっとこさ目的地についた。
「っても、なにもないぞ?」
「なんかの魔法がかかってるわね」
歩いていると、すっ、と何かを通り抜ける感覚があった。
すると、眼前に大きな館が姿を現した。
「今まで何もなかったのに……」
「結界みたいなのを通り抜けたみたいね」
「しかし、なんで結界を越えられたんだ?」
「館の主が招いたか、私たちがこの世界の人間じゃないから、かしら?」
どちらにしろ目的地はここなんだ。
俺たちは大きな扉を開けて中に入った。




