再びマギロス大陸へ?
さて、アレグリアを仲間に、無事に町へ帰ってきた訳だが。
その成果は、俺が強いのは運がいいからだだと判明したことだった。
それと、人望に厚いこと。
なんかこう、もっとかっこいいの期待したんだけどな。
まぁ、なんとなく心当たりはあるし、俺のたまたまやラッキーをみんな都合よく「ヨーイチの機転は凄い!」みたいに受け入れてくれてた節はある。
それでもここまでやってこれたんだから、これからもそうなのかもしれない。
んでもう一つ。
「ぶーっ」
ぶーたれてるのはカオスちゃん。
「僕の知らないところでシェルティちゃんとお出かけなんてズルい〜っ」
どうやら二人旅というのが気に食わなかったみたいだ。
あまつさえ、新たに連れてきたクラリスを見て「また新しい女の子みつけて、連れてきた!」って怒ってたし。
またってなんだ、またって。それじゃあ、いつも俺が女の子引っ掛けて帰るナンパ野郎みたいじゃないか。
というわけで(どういうわけだ?)今度はカオスちゃんに連れて行かれる事になった。
ちょうど未開の大地にヒミカが呼び寄せた商船が来るらしく、その船を雇って実家帰りをしたいのだとか。
特に断る理由もないので、引き受けることにした。
「やったー! お兄ちゃんと二人旅だぁ!」
無邪気にはしゃぐカオスちゃんを見とこちらまで楽しくなってくる。
船旅は約3日。
カナタの町からハルカの町に行くより全然楽だ。
船も安全化した聖素エネルギーで動く最新式だし、空模様も旅をするにはちょうどいい。
とはいえ出るものは出る。
「おわぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!」
巨大なクラーケンに襲われたり。
「ひぇぇぇぇっ!!」
変な鳥に連れて行かれそうになったり。
もちろんこの船も武装はしているが、カオスちゃんが倒したほうが手っ取り早い。
「お兄ちゃん、散々だったね」
よしよし、と頭を撫でてくれるカオスちゃん。
やはりいい子だ。
とはいえ、良性具有らしいが、見た目は完全に可愛い女の子なわけで……。
でも弟や妹みたいに思う気持ちも存在しているなんともむず痒い感じがしちゃうんだよなぁ。
「ん〜! 久しぶりの故郷の土だぁ!」
確かに未開の大地とも違う独特の空気や香りが漂っている。
俺としても何年かぶりのマギロス大陸だ。
「で、ところで、どうしていきなり里帰りを?」
「ほら、お兄ちゃんが連れて帰ってきたクラリスなら、その人の適正に合った修行の仕方を教えてくれるわけでしょ? 実際に効果出てるけど、聖竜様は2人しかいないから、町民が増えてきてなかなか指導受けたくても受けられない人がふえてるんだ」
「確かに。ウェスティアさんとイースティアでも受け持つ数には限りがあるからな」
「でしょ? だから、王都から必要な人材をスカウトしようと思ったんだ。魔法のことなら、マギロスの王都! 合理的でしょ?」
しかし、そんな優秀な人材なかなか引っこ抜けるわけも……。
「魔王の息子のカオスちゃんなら簡単か」
「そうそう! こういう時の魔王子だからね!」
職権乱用とはもはや言うまい。
こっちもお遊びでセントラルに第三勢力として参入しようとしてるわけではないからな。
どんな手を使ってでも、欲しいのが実情だ。
「じゃあ、早速レッツゴー!」
そんなに俺と2人が嬉しいのか、カオスちゃんは終始ごきげんだ。
歩き疲れて付いた宿場町にはなんと、温泉が湧いていた。
「おぉ、温泉なんて久しぶりだな」
「お兄ちゃんの世界にもあったの?」
「あぁ。天然の温泉なんてめったに行けなかったけどな」
「僕もお城の大浴場位しかしらないや」
確かに王城ならもっと豪華で凄い設備の整ったよくじょうがあるだろうな。
「時間も時間だし、今日はここで休むとするか」
えぇ。この時までは浮かれたましたよ、俺は。
旅が続くと水で濡らしたタオルで身体を吹くことすらままならないからね。
町をでてからこっち、水浴びくらいしかしてなかったから久々のお風呂でテンションが上がってたんだ。
「ふぅ〜。生き返る〜」
もう一回死んでから生き返ってるんだけどね、なんつって。
「あ、お兄ちゃん。背中流すね〜」
「あぁ、ありがとう、カオスちゃ……って!!えぇ〜っ!?」
「どうしたの?」
「いや! どうしたもこうしたも、こっちは男湯で……っ!」
「? 僕は対外的には王子だから、男扱いだよ? ついてるし」
見せなくてよろしい!
「と、とはいえ、いきなり一緒にお風呂入るのはだなぁ……」
「もしかして、お兄ちゃん、僕のこと女の子扱いしてくれてた?」
ニヤニヤが止まらないカオスちゃん。
「〜〜っ!」
俺は黙り込んで水風呂で頭を冷やすことしかできなかった……。
んで宿屋を探したものの、このシーズンは観光が盛んらしく、街道沿いにあるのに本格的な温泉街はここにしか無い、と言うことでかなり混雑していた。
どれだけ混雑していたかと言うと。
「部屋が一部屋しかない!?」
カオスちゃんと相部屋!?
「わーい! お兄ちゃんと一緒に寝るー!」
ギュッと抱きついてくるカオスちゃん。
なんか嫌な予感が……。
と言うものは当たるもので、カオスちゃんは当たり前のように俺のベッドに潜り込んできた。
「えへへ」
確かに今までもキャンプで一緒に寝たことあったけど、これほど近くで寝てなかったし、なにより魔獣や盗賊などの心配もあり、深く眠ることもできなかった。
ここは町で警備もしっかりしてるし、そんな心配せずゆっくりできる。
「お兄ちゃん」
カオスちゃんが真っ直ぐに俺を見つめてくる。
「今はまだ答えは聞かないけど、僕はお兄ちゃんのこと、本気だよ」
真剣な声。
結局その日は抱きついてくるカオスちゃんの切なる本音の前に動揺して寝れずじまいだった。




