クーデター組織
さて、俺は今、海岸線に来ていた。
例のクーデター組織の一味がこの海岸にやってくるからだ。
大型の船が近づいて来るのが見えた。
「よし、時間も場所もぴったりだ。さすが俺!」
ゾロゾロと降りてくる、手錠を掛けられた人々。
総勢300人くらいか。
確かにそれなりの規模だな。
手錠を外され、この地に置いてきぼりにされる。
「これからどうやって生きて行けばいいんだよ……」
一人がポツリと呟いた。
そこで俺の出番だ。
「お困りのようだな」
「あぁ? なんだ、テメェは」
「俺はこの大陸で街興しをしてる者だ」
「こんな大陸で街興しだと? 一体何を企んでる?」
リーダーらしき男が立ち塞がる。
「魔人、人間の戦争に第三勢力として立ち塞がる。できれば倒して、戦争を終わらせる」
「は?」
男は何を言っているのかわからない、という顔で俺を見る。
「……。マジで言ってるのか?」
「マジもマジ。大真面目だ。そのためには戦力が必要だ。しかもあんたらは、クーデターを起こすほど、今のヒュムロス大陸に不満をもってるんだろ?」
「確かにそうだが……。パワードスーツもアーマーも武器も防具もなにもないぞ?」
「大丈夫。うちには凄腕の開発者がいるんだ。かならず気に入るはずだ」
「……」
「いく宛もないんだろ? 見るだけ見て嫌なら別れてもいい。悪い話じゃないだろ?」
「わかった。野郎ども、取り敢えずコイツに付いていくぞ!」
他の面々も文句は無さそうだ。
「俺はカイル。この組織のリーダーだ。」
「俺はヨーイチ。一応町を束ねる町長ってやつだな」
お互いに自己紹介しながら町を目指す。
「どうしてクーデターなんて?」
「俺たちは元々貧民街の出身でな。ただそれだけで、まともな職にも付けやしねえ。差別ってやつだな」
「更生する余地も与えられなかった、と」
「どれだけ真っ当に生きても、クソ真面目に暮らしていたって、貧民街出身てだけで人間扱いされない。それが現実さ」
「それでクーデターを?」
「最初はそれほど過激でもなかった。デモを起こすくらいさ。そんな時、ベンズ商会が俺たちの所に来たんだ」
ここでベンズ商会の名がでるとは。
「奴等は試作品だと言って、見たこともないパワードスーツやアーマーを無料で提供してくれたよ」
「無料で?!」
「あぁ。俺たちも最初は疑ったさ。しかし、2回目に現れた時には、最新鋭の装備を人数分揃えて来やがった。俺たちはそれを使って、最初は盗賊からはじめて、仲間を増やしてクーデター組織になったんだ」
ベンズ商会が裏で手を引いてるのか?
「しかし、やはり国の軍隊は強い上に数が違いすぎた。それで捕まってこのザマさ」
自虐的に笑ってみせたカインだが、その目はまだ死んでいなかった。
「なるほどな。取り敢えず俺の町を見て行ってくれ。必ず後悔はさせないぜ」
そう言って町を目指した。
「ここが俺たちの町だ。名前はまだない」
そういえば付けるの忘れてたな。
「ほう、なかなか賑わってるな」
未開の大地、という偏見があったのだろう。ここまでの町があるとは思わなかったようだ。
「優秀な商人たちもいてな。物資や食料、衣料品に医者にも困らない」
そして一際目立つのが、巨大な建物に行列をなす、いかにも戦闘できますよ、といった風情の人たちだ。
「この行列は?」
「この町にはセントウェスティア様とセントイースティア様がいる。二人とも、来るものに試練を与え、その試練に受かったものに力を授ける事ができる。みんなもっと強くなりたくて、こうして列をなして試練を受けに行くんだ」
「まさか! 聖竜様が二人ともいるのか!?」
「あぁ。俺たちの味方だ。しかも、稽古をつけてくれるのは魔王デウスの息子とその私兵だ」
「!? そんなのありかよ! アンタ何者だ!?」
「いわゆる異世界人って奴だな」
「まじか……。なにから突っ込んでいいかわからなくなってきた……」
「取り敢えず、メカニカル部門行ってみるか? いい装備が揃ってるぜ」
俺はヒミカの所にいく。
そこには、ヒミカが信頼して整備や新規作成できる天才たちが集まっている。
「これは……」
「ベンズ商会の物と比べてどうだ? 遜色ないだろう?」
「あ、あぁ……。それ以上かも知れん」
「試してみるか?」
「いいのか!?」
カインの目が輝く。
それは単純にパワードスーツやアーマーが好きだと物語っているような、少年のような瞳だった。
「これはすごい。まるでタイムラグがない!」
パワードアーマーの欠点としてあげられるのが、本人の意思で動け、と命令してから実際にアーマーが動くまでのタイムラグが挙げられる。
良いアーマーほどそのタイムラグは少なくなり、ことこの町で作られるアーマーに至ってはそのタイムラグはない。
「このエネルギー銃やソードも試してくれ」
アーマーのエネルギーを銃弾として、または刀身として使う武器だ。
これの難しい所は、もちろんアーマーのエネルギーを使うため、変換効率やどれだけ少ないエネルギーで最高火力を出せるかにある。
カインたちは的に向かって何度も銃弾を浴びせ、ソードを振り抜く。
「すげぇ……。全然エネルギーが減らないのにこの威力か……」
「戦闘機も戦車もあるぞ」
俺は惜しみもなくその技術を披露していく。
「しかも、身体能力は聖竜様が底上げしてくれる。高待遇だと思うがどうだ? もちろん、農業や色んな仕事をしてもらうのは当然だが」
「……本当いい、のか? 俺たちは貧民街の出身だぞ?」
「関係ない。共に戦ってくれるなら仲間だ」
カインはその瞳に涙をたたえていた。
「お前ら。俺はこの人に付いていく。ここで離反したい者がいたら、この場で申し出てくれ。無理強いはしたくない」
その問いに、誰もこの場を離れようとしなかった。
「決まりだな。家族がいる者は言ってくれ。秘密裏に連絡を取って、ここに来るよう伝える。お抱えの船もあるんだ」
「そこまでしてくれるのか!」
「当たり前だ。家族はもっとも大切なものだろ? 別れたままなんて悲しすぎる」
「恩にきる……」
カインはついに泣き出してしまった。
他のメンバーも何人かすすり泣いている。
こうして俺は心強い仲間を手に入れたのだった。




