聖竜揃い踏み!
戦力強化のために、ウェスティアさんには、今の町人たちに試練を与えてもらって、レベル上げをしてもらっていた。
そんな折の来訪者。
「おっす、ヨウ」
「ハヤテ! 来てくれたのか!」
「面白そうなことしてるし、当たり前じゃねぇか!」
ハヤテと、握手をかわし、他の2人にも挨拶をする。
オーガの戦士、ハンナさん。
ハーピーの斥候兼魔法使いのエリシアさん。
「久しぶり! よく来てくれたな」
「来ちゃいましたぁ」
「また楽しそうなことしてるね」
ハヤテの後にはさらに数名。
「ギルドでも、何十人か来たい、って奴がいてな。声掛けて連れてきた」
約五十人くらいか。
ヒュムロスでのクーデターの時に見た顔がほとんどだった。
「みんなお前の事を褒めまくってた奴等だ。すぐに付いてきてくれたぜ。しかも、さらに強くなれるんだろ? 渡りに船とはこの事だ!」
よしよし、ウェスティアさんのこともしっかり伝わってるな。
ついでに聖竜セントウェスティア様が、マギロス大陸からこの未開の大地に住処を変えた、ということも真実として振りまいておいた。
そうすれば、熱心な信者は近くに住んでくれるもんだ。
「よし、早速試練受けに行くとするか!」
ハヤテは手を叩くと、早速ウェスティアさんの所に駆けていった。
「相変わらず猪突猛進だなぁ」
「すみませぇん」
「また、ゆっくり飲みましょうね!」
ハンナとエリシアさんの2人も後を追いかけるように走って行った。
「これで町人は今千人くらいか?」
手元の帳簿を見ながら言う。
俺はこの町に住みはじめた人たちと面会したり、住む場所をどうするか、どんな仕事をしてもらうか、などを決めたりしていた。
引っ越して来るのはなにも、戦闘できる人だけじゃない。
その人の家族、非戦闘員だっている。
そういう人には農業などの他の仕事をしてもらわなきゃいけないし、この町独自の産業だって必要になる。
なかなか大変な作業なのだ。
その辺はカオスちゃんもウェスティアさんも帝王学をガッツリ学んでいるので、教えてもらいながらなんとかこなしていた。
「ん? 客?」
そんなある日、アポなしで会いたい、という人がいると聞いて、誰かと思って会ってみたら、なんと。
「久しゅうな!」
「イースティア!」
他に誰もいない所だったから良かったものの、人前でイースティアの名前なんて叫んだら、大混乱になる。
聖竜、セントイースティア。
ヒュムロス大陸を守護する、国作りの神。
マギロス大陸のウェスティアさんと双璧をなす存在だ。
「暇やから来たったで!」
その後からは、冒険者や聖職者らしき人たちがぞろぞろと。
「おふ。ありがとう……。って、聖山の管理は!?」
「あぁ、あれか。可哀想なスライムに任せてきたで!」
可哀想なスライム?
「もしかして、水の精霊か!?」
確かイースティアに呼ばれた、とか言ってたような。
「せや。力は無くなっても、精霊は精霊。それなりの場所に配置してやれば力も戻る、いうもんや!」
それに、こっちの方が楽しそうだから、という理由らしい。
「あら、イースティア」
お、早速ウェスティアさんが。
「よう、ウェスティア。今日からウチもここに住むで」
「え!? 職務はいいのですか!?」
「へーきへーき! ちゃんと能力あるやつに任せてきたんや」
さて、流石聖竜。その信者の数も半端ではない。
一気に倍くらいに増えたぞ。
建築も間に合わないな、こりゃ。
んで、こんだけ町がデカくなると、大変なことはまだある。
近隣の部族への挨拶だ。
いきなりでかい町ができたんだ。
いい顔をする町は少ない。
中には数十人しかいない部族もあるしな。
うちに吸収合併してくれるのが一番何だけどな。
「決闘を申し込む」
え? 話の前後の文脈すっ飛ばしていきなりですか?
「儂が決闘に勝ったら、町を解散しろ。お前が勝ったら好きにするがいい」
脳筋だなぁ。でも、受けないとまた面倒になるしな。
やるしかない。
町の広間に出る。
町人全員が集まっていた。
みんな殺気立ってるな。
ここはロモスの町。
特質すべき点は、戦闘能力の高さかな。
セントラル大陸で戦うことになったらかなりの戦力になると思う。
しかも、ウェスティアさん、イースティアの試練付きでもっと強くなる。
仲間にしない手はない。
「いくぞ!」
業物とはいかないが、研ぎ澄まされた手斧で襲いかかってくる町長。
一撃、二撃と盾で受け止めるが、重すぎる。
こっちの手がしびれて、剣を握れなくなるぞ。
そうなる前に反撃だ!
「はっ!」
リーチならこっちが上。
実力は五分五分。
「あ」
地面の石に蹴躓いて、思い切りコケた。
「ウィンドスラッシュ! って、え?」
町長渾身の魔法は、コケた俺の頭上を通り過ぎる。
さらに俺は剣を前方に構えていたため、ソレがそのまま攻撃になってしまった。
虚を突かれた町長は避けることもできず……。
ぺしん。
斬らないように歯をねかせるのが精一杯だった。
それでも一本は一本。
「く、まさかそんな手を使って来るとは……」
まぁ、アレだ。勝ちは勝ちだ。
「約束通り、好きにさせてもらうぞ。うちの町の傘下に加わってもらおう」
「男に二言はない。そうさせてもらおう」
こうしてロモスの町は俺たちの傘下になった。
とはいえ、町の運営は今まで通り。
この町の人には聖竜の試験を受けてもらって、強くなってもらい、なにかあった時には力をかしてもらう、という感じで落ち着いた。
ただいまの人口は戦闘員、非戦闘員合わせて2000名低度。
戦闘員は500名ほど。
コレでは中央に殴り込むなど夢のまた夢だ。
どうしたものか……。
そんな折、ヒュムロス大陸で巨大なクーデター組織が摘発されたそうだ。
魔人、人間、モンスター問わず編成された組織は、やはり身の丈に合わない装備をしていたそうだ。
一族郎党、島流しになるそうだ。
そして島流しの先はもちろん未開の大地で。
つまり、俺たちの所に呼び寄せることも可能だ。
町は大きく発展させたいがために、かなり家にもあまりがある。
クーデターを起こすくらいヒュムロスの人間に恨みを持つなら、それに反発して戦争を起こそうとする俺たちの味方になってくれるかも知れない。
話す価値はあるだろう。
もしかしたら、一連のクーデター事件の元締めかも知れないしな。
「でも、どこからそんな上品質な装備を手に入れたんだ?」
「一つだけ、宛があります」
そう言ったのはヒミカだった。
彼女は凄腕の商人だ。心当たりがあってもおかしくはないだろう。
「ベンズ商会というところです」
ベンズ……。
「いわゆる死の商人、と言うやつですね。相手がお金を払うなら、誰が相手だろうが物を売る。そういう奴等です」
どうやらヒミカはベンズ商会の事を、あまり良く思ってないらしい。
「商人にも、義理というものがあります。ベンズ商会は確かに優秀ですが、信頼に値する商会でないことはたしかですね」
なるほど。
商人の世界にも色々あるわけだ。
とりあえず俺は、クーデターを起こした巨大組織とやらと接触する事に決めた。




