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一見無能ですが、実は最強なんです  作者: 葛葉龍玄


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火の精霊

 歩くこと約一週間。

 やっとフレイアの住む町、カルビムにたどり着いた。

「へぇ! 珍しいアクセサリーが売ってるわね」

 シェルティとカオスちゃんが目を輝かせる。

「私たちは火の精霊の加護を受けた民。装飾品も、炎に耐性のあるものや、逆に氷系に耐性のある物もある」

 自慢げにいうフレイア。

「コレがあれば、私のアーマーもパワーアップできるかも……!」

 ヒミカにとっても魅力的なようだ。

「まずは町長の所に挨拶に行こう。私も帰ってきたと、報告したいしな」

 というわけで町長の家へ。


「よくぞお越しくださった。そしてお帰り、フレイア」

「町長も元気そうでなにより」

「さて、フレイアはともかく、旅人とは珍しい。いったいこの町にどのようなご要件で?」

「火の精霊に会いに来たんだ」

 俺がいうと、あからさまに顔をしかめる町長。

「それが難しい事はご存知か?」

「知ってる。でも、他の三精霊の力は手に入れてるんだ」

「なるほど……。火の精霊様の居場所を知りたいなら、私を倒してからにしなさい」

 まじか。

 戦いたくないんだけどなぁ。

「ヨーイチ、町長は私とは比べ物にならないくらい強いぞ。お前では勝てない」

「でもやらなくちゃ火の精霊の居場所わからないんだろ? ならやるしかないさ」

 今までだって格上の相手としか戦って来なかったんだ。

 やってやる。


 町の広場。

 俺と町長が向かい合わせに立っている。

 周りはすでに人集りができていた。

 町長の武器は槍。

 その佇まいに隙はない。

「そなたの腕、フレイアと同格とみて良さそうですな」

 言うが早いか、町長は足元の土を蹴り上げ、俺の顔にぶっかけてきた。

「卑怯とは言いますまいな」

 俺はそれを避けながら、槍をかわす。

「もちろん」

 どんな手を使ってでも勝つ。

 戦場での心得だ。

 しなる槍は、不規則な軌道を描きながら足元を執拗にねらってくる。

 躱したり避けたりは俺の得意分野だ。

 華麗な(?)ステップでそれらをかわしていく。

 すると、突如下からの斬り上げに変わった。

「っぶな!」

「ほう、コレも避けますか」

 しかし、俺が攻撃をかわしたことで、大きく隙ができた。

 そこに斬り込もうとした瞬間。

 炎が飛び出して来た。

 魔法特有の溜めがない。

「これは……」

 盾でなんとか防ぐ。

「貴方が欲してる火の精霊の力です」

 やはり。

 俺の場合は、精霊と契約ができないため、基本的に精霊にお願いして、精霊の意思でその力を使ってもらっている。

 そのため、魔法と同じようにタイムラグが出るか、この前みたいに精霊の機嫌が悪いと力を貸してもらえないことすらある。

 火の精霊と達人レベルの槍の使い手。

 このままじゃ勝てない。

「水圧斬!」

 水の刃。

 水も圧縮すればダイヤモンドもきることができるのだ!

 精霊には精霊を。

 一撃、二撃、と放っていくが、まるで当たらないどころか避けられて間合いを詰めて攻撃される。

「どうしました? この程度の実力では、火の精霊の力を借りるなど叶いませぬぞ!」

 俺は剣に爆熱の魔法をハメると、町長に斬りかかる。

「魔石、ですか」

 それを難なくかわす。

 紙一重で。

 その紙一重が命取り!

 爆熱の魔法を発動させると、強力な爆発が起きる。

「なるほど、これが狙いでしたか」

 しかし町長は無傷。

 なんでぇ〜。

「爆熱はいわば炎。火の精霊には効きません」

 くそっ。

「おろ?」

 爆熱の威力が強すぎて俺が吹き飛ぶ。

 それまで俺がいたところには槍が突き刺さっていた。

「あぶね〜」

「これもかわすとは、見事、見事」

 たまたまなんだけどな。

 しかし、町長の槍が手から離れた瞬間を 見逃すわけには行かない!

「罠です!」

 ウェスティアさんの声が上がる。

 町長は手に短剣を持っていた。

 しかし、俺は倒れた時に握りしめた土を町長目掛けて投げつけた。

「卑怯、なんていわないよな?」

 まともに顔面に土を浴びたはずだが、町長は的確に攻撃してくる。

「もちろんですとも」

 気配だけで俺の相手をしてる。

 だが。

 町長の頭に鉄の棒が落ちてきた。

 正確には、町長が使っていた槍の柄が倒れてきたのである。

 それをまともに食らった。

「がっ……!」

 バタン、とその場に倒れる町長。

 まぁ、倒れただけとはいえ鉄塊だ。まともに当たったんだ。          ひとたまりもないだろう。

「敵の武器をああいう使い方をするとは……」

 フレイアが感心する。

 俺も予想外でしたよ。

「いつつ……」

 幸いすぐ目を覚ました町長は、自分の負けを認めて改めて俺たちを家に招いた。


「さて、火の精霊なのですが、実はあなた達はすでに出会っています」

 ん? どういうことだ? 会った記憶はないぞ。

「フレイア。実は彼女が火の精霊なのです」

「「「!?」」」

 全員が絶句する。

「フレイアが?」

「私は強い奴としか契約しない主義なんだ。火の精霊としての能力を使って私に勝てたのは町長だけだ。その町長を倒したお前には私の力を貸してやろう」

 まじっすか。

「ありがたい限りだが、俺は魔力回路が無いんだ。だから、契約ができない。だから、必要に応じて君を呼び出すことになるが、それでも大丈夫か?」

「なに!? 魔力回路を持たないだと!?」

「異世界人だからな」

「まぁ、しかたない。お前の呼びかけには極力応えるようにしよう」

 こうして俺たちは期せずして、火の精霊の力を借りることができるようになった。


「わーい! 皆揃ったよー!何百年ぶりかな〜?」

 風の精霊は無邪気なものだ。

 それに比べて、水の精霊と土の精霊は寡黙だ。

「なぁ、このへんてこなスライムはなんだ?」

 水の精霊の成れの果てです。はい。

「お前が四大精霊の力を集めたというのは本当らしいな。ならば、この先どうするつもりだ?」

「この大陸には、沢山の部族がいるんだろう? 彼らと交渉して仲間になってもらい、俺だけの町を作る」

「は? ははははははっ! なかなかだいそれた事を思いつくものだ! なぜ我々が別々に暮らしてるか、検討がつかない訳でもあるまい?」

「まぁ、意見や主張の食い違いがあって半ば対立してるようなところはあるかも知れない。でも、俺には皆の力が必要なんだ」

「確かにこの地に住む人間や魔物は強力だ。パワードスーツやパワードアーマーなしでも、お前より遥かに強いやつは五万といる」

「だからこそ力を借りたいんだ。これからセントラル大陸にのりこむわけだからな」

「その気概、私は好きだぜ。みせてみろよ」

「あぁ、もちろん」

 そう言って火の精霊であるフレイアと握手をかわした。

「あっちー!!」

「そうか、この体温でも人間にとっては熱いのか」

 流石火の精霊。体温だけ取ってみてもとてつもないエネルギーだ。

 ともかく、俺たちは拠点を作り、町を発展しさせなければならない。

 長い旅になりそうだ。

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