勝っちゃった
「ま、まさかあの剣が私のコレクションの中に紛れ込んでいたなんて……」
竜から角の生えた人間の姿のお姉さんに戻って、なにやら呟いているウェスティアさん。
え、この剣のおかげで勝てたの?
「えーっと、俺の勝ちでいいんですよね?」
「そうですね。その剣のおかげでアナタの勝ちです」
なんかすごい悔しそう。
「これ、そんなにすごい剣なんですか?」
よくわからないが当たりを引いたらしい。
ラッキー!
「その剣は相手の魔力を吸い取り、服従させるもの……。つまり私はアナタの使い魔のようなものです」
「へ? 服従? 使い魔?」
そんな能力のある剣なの? しかもただ、爪の間に剣が勝手に挟まっただけだよ?
「よかったじゃない。 肉奴隷よ」
なにが面白いのか、ゲラゲラ笑いながらシェルティが肩をバンバン叩いてくる。
「このウェスティアを持ってしても、その力に抗えないとは……」
でもウェスティアさんって何者なんだろう? 急にドラゴンに化けたりするし、角生えてるし。
「この世界のこと、もっと詳しく教えてもらえますか?」
「わかりました。異世界人のアナタには知っておいてもらわなければなりませんし」
こうして手合わせは僕の勝利で終わり、ウェスティアさんを仲間に引き入れて幕を閉じた。
「この世界のマルベラスは人間と魔物が戦争しているというのはお話ししましたよね?」
「はい。それを止めるために何人もの異世界人がこの世界にやってきたとか」
「そのとおりです。人知を超えた屈強な戦士。圧倒的な魔力を誇る魔法使い。優秀な方々が挑みましたが、誰一人なし得ませんでした」
そんな大役僕に勤まるのか? シェルティはつまらなそうに、お菓子を食べてる。お前のせいでこんな事になってるんだから、話くらい真面目に聞けよ。
「でも、人間の僕が魔族の大陸にいて大丈夫なんですか? 殺されそうな気が……」
「それは大丈夫ですわ」
やけにきっぱり言うな。なんか根拠があるのだろうか?
「戦争は基本、セントラル大陸で行われています。そして、セントラル大陸以外で魔族、人間の排斥は認められていません」
セントラル大陸とやら以外では戦争しないってことか? なんかしっかり平和が維持できるようなシステムになってるんだな。
「むしろ、関係は良好なくらいで、戦争もスポーツ感覚で行われてます。なので、ヨーイチさんが襲われることはありません」
「それはよかった。でも、異世界人が戦争を終わらせると言うのは?」
しかも、ウェスティアさんはこんな山奥に住んでるくせにかなり世界情勢に詳しい。
「そういう言い伝えがあるのです。異世界人が人と魔族の戦争をやめさせる、と」
なるほど、でも未だに戦争が続いてるってことは……。
「今まで来た異世界人では無理だったと?」
「そういうことです。私はこの星の神に近しい存在で、この星が破壊されない限り死ぬことはありません。その私が何人もの異世界人を導きましたが、戦争を止めることができなかったのです」
なんかサラッと重要事項を口にしたような……。
それより、そんなの僕に勤まるのか? なんの能力かもわかってないんだぞ?
「人と魔族の戦いは拮抗していて、ここ何百年と決着がついていません。ですので、それをヨーイチさんが終わらせるのです」
「いやいや、さっきの戦い見ましたよね? 剣もろくに振れない男ですよ?」
自分で言ってて情けなくなるが、事実その通りなのだから仕方ない。
「戦闘面は私が指導します。旅をしながら、教えますね」
断れない雰囲気になってきたぞ。
「しつもーん」
今まで黙っていた駄天使が口を開いた。
「戦争を終わらせるって言ったって、どうやって終わらせるか検討ついてんの?」
「それは……」
ウェスティアさんが口ごもる。
「具体的な案もないのに、じゃあ戦争終わらせて下さい、じゃお話しにならないでしょ」
「人と魔族、両方の王からなぜ戦争をするのか事情を聞き、それを解決できれば……」
「そんな段階もうすでに終わってるんじゃないの? 話し合いしたけどどうにもなんなかったから、戦争になったわけだし」
「それはそうですけど、他に案がなく……」
「あと、勝敗が決まったらどうなんの? どっちかに加担して終わらすって手もあるけど」
「勝ったほうが負けた側を支配し、国に取り込むかたちになります」
なんか難しいな。平和な感じで終わらせられないかな?
「それにあんた、自分のこと神に近しい存在って言ってたよね? その力でなんとかすればいいじゃん」
「神との契約で、私たちは介入できないのです」
「その神はなにしてんの?」
「他の星を作りに行ってしまいました」
「はぁ、無責任ねー」
他人事のようにため息を付くシェルティ。
「とりあえず旅に出てみないか? どちらにしても、今の俺たちじゃなにもできない」
俺は強くならなきゃいけないしね。
「そうしましょうか」
「あれ? アンタ介入できないんじゃなかったの?」
「それは神が主だったからです。今の主はヨーイチさんなので、動くことができます」
「それってこの剣の力?」
「はい。詳しいことは後ほど話します」
じゃあ、ということで、ウェスティアさんの家で準備を整えてから俺たちは旅に出ることにした。




