早速戦闘することに!?
身体は思った以上に鈍っていた。
「死ぬ、ってことはそれだけで体力を消耗するものなのよ」
駄天使がなにか言っている。
「まぁ、私にも責任があるから、今回の件は手伝ってあげるわ」
「なんで上から目線なんだよ。元はと言えば、お前のせいだろ?」
ため息をついてストレッチを再開する。
「お前、じゃないわよ。シェルティエラ。特別にシェルティって呼ぶことを許してあげるわ!」
どこまでも高慢ちきだな。しかも犬の種類みたいな名前しやがって。
「んで、そのシェルティ様は人間になってしまったわけだが、なにができるんだ?」
これでなにもできない村娘Aとかだったら洒落にならん。
「一応魔法が使えるみたいね。この世界で魔法を使える人間は珍しいそうよ」
「へぇ。それは頼もしい」
僕も魔法とか使えるのかな。
「ファイアボール!!」
しかしなにも起きない。恥ずっ!
「ファイアボール!」
シェルティーがそういうと、火の玉が飛び出した。それは十分に人にダメージを追わせることのできる一撃だった。
「すごい……」
「当たり前でしょ。これでも元天使なんだから」
「今は堕天使だけどな」
「うるさい!」
騒ぎを聞きつけて角のお姉さんがこっちに来た。
「あら、シェルティさんは、魔法が使えるんですね」
にっこりと笑った。一応笑顔だが、目は笑っていなかった。
「こんな木々が生い茂る中で、炎の魔法を使わないで頂けますか?」
あ、あかん。青筋が立ってる。
そりゃそうだ。森に火がついたら止める間もなく山火事だ。
「は、はい。すみません……」
あまりの迫力に、シェルティも謝らざる負えなかった。
「そう言えばまだ名前をお聞きしてませんでしたね。俺はヨーイチ。ヨーイチ・キノシタです」
なんとなく西洋風に名乗ってみた
「シェルティエラよ。シェルティって呼んで」
「これは失礼しました。私はウェスティアと申します。以後お見知りおきを」
そう言って優雅にお辞儀をする。
うーん。こんな山奥に住んでる割には令嬢みたいな振る舞いをするんだよな。
舌打ちはされたけど。
「ここはマギロス大陸。魔族が住む大陸ですわ」
魔族! 人間と敵対してる種族じゃないか。そんな所に、人間である僕がのこのこ出ていったら、それこそ殺して下さいって言ってるようなものだ!
「それって、僕詰んでません?」
「のちのち説明しますが、そのへんは大丈夫ですわ。それより、ご自身の能力がどんなものかわかりました?」
ウェスティアが訪ねてくる。
「いや、それが全くわからなくて……。身体能力も頭脳も、魔力もあがってなくて」
「ちっ」
あ、また舌打ちしやがった! 地味に傷付くからやめてそれ。
「しかし異世界人。何かしらの能力があるはずですわ。一手、私とお手合わせ願えませんか?」
え、ウェスティアと? もしかして強い村娘だったりするの?
「ウェスティアさんとですか?」
「もちろんです。こう見えて私、とても強いのです」
結局押し切られる形で、ウェスティアさんと手合わせすることになってしまった。
まずは僕の装備。
鉄や鋼の鎧は重すぎて、着込むとまったく動けなくなってしまうので、皮の鎧部分鎧にした。
そして武器は剣。ウェスティアさんが集めた剣の中から好きなものを一本選んで手に取った。
「なんかいいな、この剣」
完全に見た目と直感で決めてしまった。
それにしても重い。やはり身体能力強化とかそういうのは使えないらしい。
「そんな装備で大丈夫?」
「大丈夫だ、問題ない」
シェルティーの問いにテンプレで返す。
「準備ができたみたいですね。では、行きますよ」
そう言うや否や、ウェスティアさんの身体が徐々に大きくなっていく。
「嘘でしょ?」
それは巨大な竜。体高3メートルはあろうかという程の大きさだ。
「本気で行きます」
言い終わるや、早くも口から炎のブレスを吐き出す。
さっき森の中で火を使うなって言ってたじゃん!
いや、そんなツッコミを入れてる場合じゃない。なんとかしないと丸焦げだ。
大体一番最初に戦うのが竜ってどういうことなの? 普通、スライムとかゴブリンとか、弱い敵と戦ってちょっとずつ強くなっていくものでしょ?
俺は咄嗟に剣を掲げる。
すると、俺の目の前に障壁みたいなものが現れ、炎を防いでくれた。というより吸い込んだ?
「ラッキー。この武器のおかげだよ」
「まさか、その剣は……。ま、待ちなさい。その剣は使ってはいけません!」
竜の姿でも喋れるんだ。
「呪われてたりするんですか?」
それは嫌だな。
「そういう訳ではありませんが……。まぁ、どうせ斬撃もへなちょこで鱗を通すほど鋭い攻撃はこないでしょう」
なんか悪口言われてる気がする。
とりあえず僕からも仕掛けてみる。
ウェスティアさんは完全に俺を舐め腐っているのか、避ける素振りすら見せない。
大上段に構え、剣を振り下ろす。が。
「重てぇーっ!」
あまりの重さに耐えきれず、剣がスッポ抜けてしまった。
飛んでった剣は、ウェスティアさんの爪と肉のスキマに突き刺さる。
あれは地味に痛いやつだ。
「痛った!!」
やっぱり。針とか爪の間に入ると痛いもんね。
とはいえ、対したダメージにもならず、剣も手放してしまった。
俺は丸腰で竜と対峙してるのである。
あ、これは死んだわ。
早くも2回目の死、確定である。
父さん、母さん、ごめんよ。僕は生き返れないみたいだ。
そんなことを考えていたら、ウェスティアさんの身体が角の生えた人間の姿に戻っていく。




