話と違うじゃないか!
目を覚ます。
そこには見知らぬ天井が……。
いや、いくらなんでも見知らなさすぎる。
病院ですらない。
「お目覚めですか?」
声の指した方を見ると、角の生えた女性がこちらを見ている。
「ここは?」
寝ぼけた頭を覚醒させるように、身体を起こす。
「ここはマギロス大陸のセントウェスティアですわ」
マギロス大陸?
セントウェスティア?
まったく聞いたことがない。確実に日本じゃない。
俺は元の世界に戻れたんじゃないのか?
「顔色が優れないようですので、もう少しお眠り下さい」
名前も知らぬ美人さんに促されるまま横になると、すぐに眠気が襲ってきた。
「洋一よ」
この声は、神様!
「一体どうしたんですか? 俺は元の世界に戻って今まで通り暮らしていけるんじゃないんですか!?」
それがいきなり見知らぬ土地だ。混乱するのも当たり前だ。
「それがなぁ、転生先間違えちゃった」
てへ☆みたいなノリで軽く言う神様。
え? 間違えた? 転生先を?
「ちょ、ちょ、待って下さい! なら戻してくださいよ!」
神様なんだから、それくらいは簡単でしょ。
「それが、流石の神でも生きた人間に干渉するのはむずかしくてなぁ」
「いや、シェルティエラは思い切り干渉してたじゃないですか!」
「あれは木下裕二という人間が死ぬ定め《・・・・》だったから鑑賞できただけで……」
そしたら人違いで僕を殺してしまった、と。
「もし元の世界に戻りたいなら、その世界で洋一が成すべきことを達成したら、ということになるな」
成すべきこと? どんな世界なのかもわからないのに?
「この世界は常に人間と魔族が争っている。それを止めるのが、貴殿の役目だ」
え、めちゃくちゃハードル高くないですか?
「もちろん大変なミッションなのはわかっている。なので、一つだけ貴殿に能力を授けておいた」
あれ? これって異世界転生物で、もしかしたらすごい能力で無双できて、「俺、なんかやっちゃいました?」とか言えるやつ?
「その能力は追々わかってくるだろう。では、しっかりと天命を果たしてくるのだ!」
かっこよく言ってはいるが、そもそも論神様が俺の転生先を間違えたのが原因出会って、なぜそんな天命を全うしなければならないのか。
「神様! あまりにも理不尽過ぎます! 神様? 神様!?」
だめだ、完全に消えやがった。
仕方ない……。ここでその天命。人と魔族の争いを止めるしか帰る道はなさそうだ。
やるしか、ない。
あとは神様がくれたという能力に期待するしかない。
またもや見知らぬ天井。いや、さっきもみたな。
「やっと起きた?」
ぶっきらぼうな顔で僕の横に座っていたのはシェルティエラだった。
「まったく。アンタのせいで人間にされるわ、こんな僻地の星に転生させられるわで、踏んだり蹴ったりだわ」
いや、元はと言えば、アンタの不手際が原因だろうよ……。
「人のせいにするなよ」
身体を起こしてシェルティエラを見る。
天使の羽も消え、神々しさも全然なくなっている。
向こう100年人間として過ごす、というのは本当らしかった。
「あら、よかった。顔色も良さそうですね」
先程の角の生えた女性がお粥らしきモノを手に、部屋へ入ってきた。
「これでも食べて下さい。1人で食べられますか?」
「あ、はい。大丈夫です。ありがとうございます」
異世界人の優しさに触れ、涙が出そうになる。
というかお約束通り、言葉は普通に通じるのね。
もしかして、これが与えられた能力とかじゃないだろうな。
そんなんだったらしょぼ過ぎて、戦争を終わらせるなんてできないぞ。
でも今はとりあえず、弱った身体を治そう!
そう思って、角の生えた女性が持ってきてくれたお粥に手を付けた。
「ごちそうさまでした」
腹八分目。量も丁度良かったし味も抜群。あっと言う間に食べ終えてしまった。
「食欲は大丈夫そうですね」
クスクスと笑う角のお姉さん。
「で、聞きたいことがあるんですが……」
「でしょうね。あなた方がお召になっている衣服。明らかにこの世界のものではありませんもの」
う。早くもバレた。
「もしかして、伝説にある異世界人からの旅人では?」
「そ、そうなんです……」
伝説? 一介の高校生に過ぎない俺が?
もともと戦争を終わらせることすら難題なのに、伝説と来たもんだ。
「ここはマルベラス。人と魔族が争う世界です。伝説では、異世界からやってきた勇者様が、その争いを止め、世界を平和に導いてくれると残っております」
「そんなこと言われても、僕にはそんな能力は……」
「あるでしょ?」
突如シェルティエラが口を挟む。
「神様に授かった能力があるはずよ」
そういえば、神様もそんなこと言ってたような。
「確かにそう言ってましたが」
「やはり! 見込み通り、アナタはこの世界の救世主さまですわ! 一体どんな能力をお持ちなのですか!?」
「いや、それが、神様も教えてくれなくて……。追々わかると言われました」
頭を掻きながら伝える。ほんとにどんな能力なんだよ〜。
「ちっ。今回もはずれか」
え?今、ちって舌打ちした? 角のお姉さん? しかもハズレって。
「ううん。今まで何人もの異世界人がこの世界に来ては、争いを止めようと必死になってくださいましたが、誰一人として、その使命を果たすことができた者はいないのです」
えぇ~。そんな無理難題押し付けられたの〜?
「とりあえず、しばらくはお休みください。身体が良くなったら、貴方様のお力を探してまいりましょう」
そう言われ、僕はしばしの休息とリハビリをするのだった。




