もう一人の異世界人
王家の人たちも助けた所で、城の内部は把握することができる。
そして、この3人も戦闘できるのだから心強い。
「しかし、ライオットとやらはなんでこんな無謀なことに手を染めたんだ?」
善政をしいていた王を殺し、民に重税を課し、回路を封鎖して魔族に本来ならば許されない直接的な被害を加えかけている。
「あの異世界人が来てから、ライオットはおかしくなりましたそれは、私たちも一緒です」
「どういうことだ?」
「あの男には、なぜか惹かれる物があるのです。今は物理的にも離れているので、なぜアレほど彼を心酔していたかわかりませんが……」
「もしかして、それが奴の能力なのか?」
催眠術のようなもので人心を掌握し、自分の都合のいいように操ることができる。
それならば、人々の信仰心をイースティアから離し、自分に向けさせることも可能だ。
「なるほど。パワードスーツは自分のいた世界のもので、その人を操る能力が神から授かった力というわけですね」
ウェスティアさんも得心がいったようだ。
「確信じゃないけどね」
「でも、それだったら私たちも危ないんじゃないの?」
「船で会った時になにもしてこなかったし、イースティアや精霊たちにその能力を使わなかったのは、人間以外には効かないからじゃないか?」
「確かに……。ではなぜヨウさんは平気なのですか?」
「俺には魔力回路がないからじゃないかな」
「魔力回路がないっ!?」
王家の御三方には大層驚かれてしまった。
そこまで珍しいのか。
「実は、俺も異世界人なんだ」
「そんな……! 一つの時代に2人も異世界人が来るなんて前代未聞です!」
王妃が叫ぶ。
マギロスでも同じようなこといってたな。
「しかも、この女は聖竜ウェスティアでーす! この男に負けて、力を10分の1以下に封じられちゃいましたー」
シェルティは相変わらず楽しそうだ。
「え、魔脈の管理は……」
「それは特殊なアイテムでなんとかなってます」
と、色々な情報交換をしていると、王家の3人が足を止めた。
「この先に、例の異世界人がいます」
「え? マジで?」
「気配でわかります。私たちは近づいたら、また操られてしまうかも知れません」
なら、この3人には先にライオットの所へ行ってもらって、俺たちが相手をするしかないな。
その時。
外から雄叫びとともに、ギルドのクーデターメンバーが突撃してきた。
城の兵士たちは総出で立ち向かいに行った。
「いいタイミングだぁ!」
カオスちゃんも喜んでいる。
「では、俺たちで異世界人はなんとかするので、御三方はライオットの所へ!」
「わ、わかりました。ご健闘をお祈りいたします!」
二手に別れた俺たちは、例の異世界人がいるという部屋に入りこんだ。
「ちっ。お前らか。人間ならオレの意のままに操れたのだがな」
やはり奴の能力は人間を自在に操る能力だ。
「まぁ、そんな能力なくとも、お前たちに負ける気はしないがな」
「それはどうかな? 俺はともかく、他の3人は強いぞ!」
言ってて情けなくなってくるが、本当のことだから仕方ない。
「このパワードスーツの力、見せてやる!」
目にも止まらぬ、とはこの事だろう。
俺には残像すら見えなかった。
が、俺も遊んでいたわけじゃない。
奴の拳を盾で受け止める。
「なにっ!? 一番弱そうなのに!」
「うるさい! 俺だって特訓してたんだ。コレくらいできるさ」
気配を察知する、とでもいえばいいのか。
元来、運動神経と受けたり避けたりするのは上手かったらしい。
だから、攻撃よりもその防御面に全振りで特訓してきたんだ。
「ならば、このパワードバスターをくらえ!!」
あれは、いつか見た、大岩をも蒸発させるほどのエネルギー砲だ!
さすがにこの鎧と盾でも、アレを防ぐことはできない。
「相手は他にもいるのよ!」
シェルティが業火の魔法を放つ。
倒すには至らないが、パワードバスターとやらを止めることはできた。
さらにウェスティアさんが2合、3合とレイピアで切り結ぶ。
接近戦にさらされては大技は使えない。
「はぁっ!!」
さらに背後に回ったカオスちゃんが渾身の突きをくらわせた。
「がっ!!」
大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる異世界人。
「くそっ。なかなかやるな……」
あのパワードスーツ、防御力もなかなかだぞ。
カオスちゃんの一撃まで耐えるなんて。
「くらえ、エネルギーウォール!」
巨大なエネルギーの塊が壁のように迫ってくる。
「逃げ場がないわ!」
あのエネルギーの奔流を食らうわけにはいかない。
どうする!?
「あの程度の力、私の能力を同じように使えば相殺できるわ」
頭の中に響いてくる声。
コレは水の精霊か?
確かに水の加護は莫大だ。
俺は剣に水の精霊の力の入った魔石を嵌めると、同じように壁を作り出し、相手のエネルギーウォールにぶつけた。
「ば、ばかな! 俺のエネルギーウォールが!」
そういえばコイツの名前聞いてなかったな。
水の精霊の加護は絶大で、エネルギーウォールを押し返し、異世界人に迫る。
「パワードバスター!」
さっきの技で自分が助かるくらいの穴を開け、なんとか水の壁を凌ぐ。
「くそ、俺のパワードスーツと互角に渡り合うとは……」
異世界人は悔しそうにしているが、水の精霊の力を奪っていなければ危なかった。
また運に助けられた感じだ。
しかもお互いに決定打には至っていない。
どうすればこの戦況を打破できる?




