まるで迷路だ
城内に入ること30分。
俺たちは取り敢えず地下にいることがわかった。
しかし、逆にいえばそれ以外わからない、ということだ。
「あんたの得意なマッピングとやらでなんとかならないの?」
「シェルティさんや、簡単にいうけど、俺は異世界の城なんて初めてなんだぞ? 洞窟とは訳が違うんだ。一回行った所なら覚えられるけど、行ったことのない場所は無理だ」
というわけで、しらみつぶしにさまようしかない。
「また分かれ道ですね……」
三つに別れた通路。
よし、ここは!
「この棒を立てて……」
出にした棒をその場に立てる。
俺が手を話すと、棒は倒れて一つの通路を示した。
「お兄ちゃん、なにしてるの?」
「俺の世界のおまじないみたいなもん。こうして倒れた棒の指した方へ向かうんだ」
そう言って俺は棒の倒れた通路に向かって歩き出す。
「なんですか、それは……。ただの運任せじゃないですか」
ウェスティアさんがぶつくさ言っているが、そんなもんは関係ない。
しばらく歩くと、兵士が4人くらいで見張っている場所に出た。
「やたら警備が厳重ですね」
「この先に何かあるのか?」
俺たちは隠密の魔法を使い、なるべく戦闘を避けて進むことにした。
「ここは、牢屋……。ですかね?」
ズラリと並ぶ鉄格子の部屋。
もしかして……。
「なぁ、牢屋でコレだけ警備が厳重ということは……」
「そうですね。もしかしたら、ビンゴかも知れないですね」
パワードスーツまで着込んだ兵士が2名。
一つの牢屋を守っていた。
俺たちはバレないように近づき、男たちを制圧する。
「なっ!? どこから!?」
「行け! カオスちゃん! ウェスティアさん!」
俺の号令で2人が飛び出す。
兵士たちはあっという間に亀甲縛りにされてしまった。
「いつの間に覚えたの、ウェスティアさん」
「イースティアがやってるのを見ました。コレくらいすぐ覚えられます」
得意げに自慢するウェスティアさん。
変な癖に目覚めなければいいけど……。
「どなたですか?」
中には3人の男女がいた。
1人は妙齢の女性。王妃だろうか。
1人は青年。この人が第2王子だろうか。
1人は少女。恐らく王女だろう。
「俺たちは冒険者ギルドを中心とした、クーデター組織の先遣隊だ。王族に連なる方々であってるか?」
「えぇ、私たちは王を殺されると同時に、ここへ投獄されました。今はどうなっているのでしょうか?」
「ここはゆっくりできない。今この牢を開けるから、時間をかけて話せる所へ移動しよう」
「しかし、これは聖素で……!」
「俺なら大丈夫だ」
そう言って、聖素でできたパズルを解く。
「よし」
「聖素が効かないなんて……。貴方は何者ですか?」
「話は後だって。取り敢えずここを出るぞ」
兵士たちから剥ぎ取った装備で、3人がいるように見せかけて、また身を隠す魔法を使ってその場を後にした。
城の内部は王城に詳しい王妃たちに案内されながら、比較的安全な場所で話をすることにした。
「そうですか……。ライオットがそんなだいそれたことを……」
第一王子。つまり王を殺し、元王となった王はライオットと言うらしい。
彼は異世界人と共にこのヒュムロス大陸で暴虐の愚行を犯し尽くしている。
「俺たちはその愚行を止めに来た。あんたらには申し訳ないが、最悪そのライオットとやらには死んでもらうかもしれない」
俺は冷たく言い放つ。
奴はこの数ヶ月で、ヒュムロス大陸をめちゃくちゃにした。
その罪は償わなくてはならない。それはもちろん、異世界人にも言えた。
「分かっています。私たちとしても、あの子の罪は自分で償わせるつもりです」
王妃たちも覚悟を決めているようだ。
「あの……。もしかして、そこにいらっしゃるのはカオス王子でしょうか?」
王女がこえをあげる。
なるほど、王族同士なら謁見したこともあるだろう。
「バレちゃったか。そうだよ。マギロス大陸の王、デウスの息子のカオスだよ」
カオスちゃんの王子としての側面は初めて見るかも知れない。
「カオス王子まで! それは大変心強いですわ!」
どうやら王女はカオスちゃんのことを高く評価しているようだ。
「この子は人間にしては魔力が高く、ずっとカオス様に憧れていたのです」
なるほど。科学が発展している人間社会でも魔力に特化した人がいるのか。
「カオス様がリーダーなら、こちらとしてもとても心強いですわ」
王妃も王女も王子まで頷いている。
「違うよ。リーダーは、このヨウお兄ちゃん」
王族のみんなが、そんな馬鹿な、という顔で俺を見てる。
そんな珍奇な者を見るような目で見ないで! 自分だってリーダーに向いてないと思ってるんだから!
「確かにヨウさんは、剣の腕はそこそこ。パワードスーツも装備していませんが、とても機転がききます。 あの淺竜を一撃で倒し、魔王であるデウス王にも深手を負わせました」
それを聞いて、3人は驚愕する。
「デウス王に……!」
「戦場に出れば、一騎で千はくだらない被害を私たち人間に与えてきたあの猛者が……」
やっぱつよかったんだなぁ、デウス王。元気にしてるかなぁ。
「ちなみに、風の精霊、水の精霊、土の精霊を倒して仲間に引き入れたのもヨウよ」
シェルティも今回ばかりは自慢げだ。
「それなら、リーダーの資質は十分ですね」
こうしてヒュムロスの王族の方々にもお墨付きを貰って、俺たちは作戦会議を始めるのだった。




