殺せるのか?
さて、王城奪還の準備はギルド長はじめ、冒険者たちに任せて、俺たちは水と土の精霊を解放しに行く。
先ずは比較的近い水の精霊からだ。
「しかし、邪魔者が入らないとも限りません。気を引き締めて行きましょう」
魔石への魔力供給も満タン。
アイテムも、装備の点検も済んで、あとは出発するだけだ。
「先に行っておくわよ、ヨーイチ。人間だからって手加減なんてしちゃダメだからね」
珍しく真顔でシェルティが忠告する。
「わかってるよ。逃がした敵が、現政権の関係者に情報を漏らすからだろ」
「なんや、ちゃんとわかっとるやないか。大して強くなくても気はきくんやな」
誰のおかげで生き返ったと思ってるんだ、まったく。
「秘密裏に動かなくちゃいけない。逃がすくらいなら、この手で……」
できるだろうか。
魔人だって殺せたんだ。人間だってやれるはずだ。
「お兄ちゃん、無理しなくてもいいんだよ? 僕がやるから……」
「いや、カオスちゃんにはやってもらいたいことがある」
そう、風の精霊精霊が聖山に変わりに着くのはいいが、護衛がいないと話にならない。
「カオスちゃんなら適任だ」
「……。分かった。僕に任せて!」
もしかしたら、そこに例の異世界人が現れるかも知れない。
そうなったら太刀打ちできるのはカオスちゃんしかいない。
「まぁ、でもコイツも一応異世界人なんやろ? なんか窮地に置かれたら一気に眠った力が引き出されるかも知れへんしな」
期待されてるのか、馬鹿にされてるのか。
「じゃあ、ここで二手に別れよう」
そう言って、風の精霊とカオスちゃん、俺とウェスティアさんとシェルティとイースティアに別れて行動することになった。
「先ずはリムルの町を目指すで。大体一週間くらいや。そこで物資の補給をして、水の精霊がおる、ミンティスの泉まで3日や。なかは複雑なダンジョンになっとるから、待ち伏せするにはもってこいやな」
天然の要塞か。厄介だな。
「でも、出入り口は一つや。そこを固めとけば、情報は漏れることはないやろ」
さすがにヒュムロス大陸のことはイースティアがよく知ってる。
「出入り口の守りについては俺に考えがある」
「なんですか?」
「収納石のデモンズを使う。アイツは使い魔みたいなもんだろ? それなりに強かったし」
「なんや、収納石なんてレアなもんも持っとんのかいな。運がええなぁ」
「たまたま手に入れてね。その収納石に、それなりに強かった魔物を閉じ込めてあるんだ」
「確かに、今のデモンズに太刀打ちできるのはイースティアくらいですね」
「ええ使い魔やんけ。あのいけすかん異世界人がこなんだら、そいつで十分かも知れへんな」
そしてリムルの町までの一週間、ウェスティアさんとイースティアにしごかれまくって剣の腕を少しでもあげる日々が続いた。
リムルの町に向う道中は穏やかなもので、代わりに俺が荷物持ちやら重りをつけさせられて身体を鍛えながら歩いていた。
「兵士らしき人もいるが、普通だな。なんか、魔物排斥思考みたいなのに陥ってるかと思ったけど」
「神の作った定めにより、それはできないことになっています」
ウェスティアさんがいうが、一つ納得がいかない。
「それならどうして、イースティアがやられたり、精霊が封印されたんだ?」
「それは試練、という形を取ったからやな」
代わりにイースティアが答えてくれる。
「うちらは人に試練を与え、乗り越えた者に聖竜の祝福を与えるのが仕事なんや」
「なるほど。例外って訳か。あの異世界人にも祝福を与えたのか?」
「いや、そんなことする前にボコられたわ」
あらら。
「今夜はこの辺りで野宿しようよー」
歩き疲れたシェルティが駄々をこねる。
本当に自由奔放だな、この駄天使は。
「少し早いですがいいでしょう。ヨーイチさんをしごかなければいけませんし」
それからウォーミングアップがてら素振り千回。
その後、実践形式でウェスティアさんとイースティア2人を相手にする。
一対多数の戦闘も想定しなければならないからだ。
「今日は私も参加するわ! 最近魔法ぶっ放してなかったから、ストレス溜まってたの」
そんな理由で!?
レイピアで中間距離から攻めてくるウェスティアさん、格闘戦とブレスで近距離も長距離もできるイースティア。その2人の合間を縫うように見えないところから魔法を放つシェルティ。
かなりハードな戦闘になった……。
「死ぬかと思った……」
「ですが、ヨーイチさんは基本運動神経は悪くないですね。避けることに関してはかなり上手いと思います」
「せやな。魔法で身体能力あげられてないとは思えへん。そこは自信持ちー」
「魔法も一発も当たらなかったしね。あー疲れた」
「それが俺のもらった能力なのかな?」
「その低度じゃないと思うけどね。神の力は偉大よ? あの異世界人見たでしょう? あの変態みたいなパワードスーツ、恐らく神様が用意したものよ」
まじか。アイテムの場合もあるんだな。
「とりあえずご飯にしましょう。リムルの町までまだ3日ほどありますから」
こうして夜は更けていった。




