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一見無能ですが、実は最強なんです  作者: 葛葉龍玄


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ヒュムロス大陸へ

 ヒュムロス大陸の港町ハルカ。

 ヒュムロス城から離れているはずなのに、新王の噂はすでに届いていた。

「重税を課すだけで、ちっとも市民に還元がない」

「税金の使い道が不透明すぎる」

「クーデターを起こすような奴は信用できない」

 悪口しか聞こえてこない。

「港町に久々に船が来て活気付いたよ」

 ハルカの町の町長直々にお礼を言われてしまった。

「本当にいきなりだったのか?」

「あぁ。……いや、もしかしたら、あの異世界人が密かに計画していたのかもな」

 なるほど。確かに腹に一物持ってるような奴だったな。

「しかし、異世界人の嫌がらせも物ともしないあんたらなら、なにかやってくれそうだな」

「まぁ、色々やることがあるから、もしかしたらこの国のためになるかもな」

「今夜は家に泊まっていってくれ。ヒュムロスの海の幸は、マギロスとも一味違うぞ」

「海の幸、アタシ気に入っちゃった!」

 こんがり小麦色のシェルティは今度は食い気らしい。

 呑気なもんだよ。

「では、お言葉に甘えて」

 俺も楽しみではあるけどな。

 イースティアも仲間に入れた俺たちは、町長の家で大層なおもてなしを受けた。


 さて、一応冒険者ギルドに来た訳だけど。

「お、イースティアの事が書いてあるぞ」

 なになに。失踪した聖竜、イースティアを探してほしい……。

「もうこのクエストは達成やな」

 イースティア本人(本竜?)が言う。そりゃそうだ。ここにこうしているわけだから。

「あー……。ギルド長さんはいるか?」

 受付嬢に声をかける。

「ギルド長はとても忙しい方なのですが」

 怪訝そうな顔でこちらを見る。

 自称魔王を名乗っていたデモンズを封印したり、メルビン伯爵の猫を探したりして星2の冒険者になった訳だが、所詮は星2。

 星5の冒険者とかに比べれば知名度も信頼度も全然違う。ギルド長への面会なんて、そうそうできるもんじゃない。

「いや、聖竜イースティアを見つけたんだ」

「はぁ?」

 もっと怪しい者を見る目をされてしまった。

「ホンマや! ウチはここにおるで」

 声を発したのはさらに怪しい関西弁を話す幼女。こりゃ信じて貰うのは難しいかもしれないな。

「せ、セントイースティア様!?」

 お、顔見知りだったか。

「せやから、コイツラに報酬渡したってや。あと、この町のギルド長にも会いたいな」

「た、ただ今呼んできます!!」

 受付嬢はすっ飛んでいった。

「聖竜なのに、ずいぶんと顔が知れてるな。ウェスティアさんはあまり有名じゃない感じなのに」

「私は聖竜、セントウェスティアの付き人、という体を装っていましたから」

「ウチはこの姿で祭場に住んどるからな。知名度があるんや」

 竜でも人それぞれなんだな。

「これはこれは、イースティア様!! で、君たちがイースティア様をお連れした冒険者か」

 満面の笑みを浮かべて近づいてきた。

「記録を調べさせてもらったよ。新人とは思えない活躍ぶりだな!」

 まだ現役でも通じそうな肉体をしたギルド長は、俺たちのことも知ってるようだった。

「話が早くて助かる。実はイースティアも好きで失踪したわけではなくてな」

 俺が代表して訳を説明する。

「なるほど。クーデターに異世界人か。しかし、それだけでイースティア様程の聖竜がやられるものなのですか?」

「ウチやウェスティアは信仰心が一番の力になるんや。クーデターを起こされて、信仰する者がいなくなる。しかも、精霊を2人も封印された状態でや。力も10分の1もでーへんわ」

「なるほど……。精霊までやられていたとは……。しかし、このままイースティア様を聖山へ戻しても、また元の木阿弥ですな」

 その辺はギルド長も思い至っていたらしい。

「せや。けど、このままウチが聖山に戻らんと、魔脈を制御できへんくて、この大陸が大変な事になってまうねん」

 さてどうしたもんか、と皆で頭を悩ませる。

「そう言えば、ウェスティアはどうやって聖山をぬけだしたんや? しかも大層パワーダウンしとるけど」

「私の場合は、力を吸い取り、使い魔とする魔剣を使われました。その魔剣がセントウェスティアにある限り、魔脈は乱れません」

「そんな事になっとったんかいな!? 誰の仕業や!?」

 皆が俺を指さす。

「た、たまたまクリティカルヒットしただけで、実力ではなくて……」

「まぁ、あんたなんかどうでもいいわ」

 ひどい!

「一時的にならわたしでもイースティア様の変わりになれるよー」

 そこで声をあげたのが風の精霊だった。

「お、そう言えばいたなぁ。ウチほどやないにしろ、魔脈を制御できるやつが」

「風の精霊様まで味方につけていたとは! では、一時的に風の精霊様にイースティア様の変わりをしてもらい、その間に水と土の精霊様を助けて、イースティア様の状態を戻した上で、さらに冒険者ギルド一丸となって、さらにクーデターを起こしましょう!」

 え、そんなことして大丈夫なの?

「でも、王様はどうするんだ? さすがに次がいないと話にならないだろう」

「た、確かに……」

「今は第一王子が王になったんよな? 第ニ王子はどうや?」

「たしか、一族全員、牢に閉じ込められているはずです」

 なら、クーデター前の状態で王政を戻せる人物に助けを求めるべきだ。

「では、きまりですな」

 ギルド長はニヤリ、と笑った。

 先ずは俺たちが水と土の精霊を助け、イースティアに聖山を取り戻してもらう。

 その隙に冒険者が、王城を奪還する。

 そういう作戦か出来上がっていた。

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