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一見無能ですが、実は最強なんです  作者: 葛葉龍玄


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なん……だと……!

 聖竜を倒した?

「コレがその亡骸だ」

 そう言って投げて寄越したのは、まだあどけない姿をした少女。

 この娘がイースティア。

「あなた……! よくもっ!!」

 ウェスティアさんがいきりたつ。

 飛びかからんばかりの勢いだか、相手が悪い上に、ウェスティアさんの力は俺が封じてしまった。

 本当にイースティアを倒す力がある相手なら分が悪すぎる。

「ヒュムロス大陸はオレが頂いた。今に駆逐してやるから、待っていろ、魔族ども!」

 異世界人はそういうとその姿を消した。

「イースティアっ!!」

 ウェスティアさんがイースティアに駆け寄り、その身体を抱きしめる。

「っ」

 ほんの一瞬、イースティアが息をした。

 俺はイースティアの手首に指を当てる。

 まだ脈がある!

「まだだ、ウェスティアさん。イースティアは生きてる!」

 とはいえ、どうしたものか。

 人間の相手の心肺蘇生法なんて、通じるのか?

 でも、なにもしないよりましだ!

 俺はイースティアの胸に両手を当て、心臓マッサージの体勢にはいる。

「ヨーイチさん!」

 珍しくウェスティアさんが泣きそうな顔で俺を見つめる。

 こ、こんな時に……!!

「ゔぇっくしっ!!」

 俺はクシャミをした。

 その瞬間、胸の爆熱の魔石が落ちて、手の上に乗る。

「やっべ!!」

 このままじゃ暴走して大爆発を起こしちゃう!

 俺は慌てて両手で包み込むが、もう遅かった。

 アワアワしてるうちに、イースティアの胸の上で大爆発を起こす。

「あわわ……。こ、こんなつもりじゃ……」

 腰を抜かして仰け反る俺の眼の前で、イースティアは先程より楽そうに息をしていた。

「ん……」

 その顔は苦しみから解放されたように、穏やかなものになった。

「イースティア!」

 ウェスティアさんが彼女を抱きかかえる。

「……。ウェスティア……?」

「イー……スティア……」

 爆熱の魔石が大爆発した時はどうしようかと思ったが、それくらいの衝撃がないと、強靭なイースティアという竜の心臓を再び動かすことは叶わなかったらしい。

 運がよかった。ただの心臓マッサージじゃあ、こうはいかなかっただろう。

「だ、大丈夫かっ!!」

 甲板で大爆発が起きたのだ。嵐を止める邪魔にならないように避難していた船員たちがすごい勢いで走り寄ってきた。

「は、はい。なんとか。船も無事なようで……」

 この船も相当頑丈なのだろう。

 焦げ跡はついても破損は一切無かった。

「とりあえず、嵐も一段落しましたし、一度港町に戻りましょう」

 俺がそういうと、怪我をしたイースティアを慮ってか、急いで船をカナタに向けてくれた。


 俺たちはベッドで未だうなされているイースティアのベッドを囲み、沈黙していた。

 とにかく彼女が目を覚まさないことにはなにが起こったのかわからない。

 約一名、日焼けして小麦色になった駄天使がいるが、この際放っておこう。

 丸3日。

 世界秩序を守るほどの聖竜が昏睡状態に陥ってからそれ程の時間をかけてやっと蘇生した。

 一体どれほどの傷を負ったのか。

「ここは……。」

 目を覚ましたイースティアは当たりを見渡し、ウェスティアさんに目を向ける。

「私がわかりますか? イースティア!」

「ウェスティア……。ウチは……」

「イースティアっ!! よかった、よかったです!!」

 イースティアを抱きしめるウェスティアさん。

 よかった。大丈夫そうだな。

「イースティアがやられるなんて、あの異世界人はそんなすごい能力をもっているのですか?」

「いや、やつの力やない。精霊や」

「え?」

「ヒュムロス大陸にいる、土と水の精霊が封じられて、魔脈がくずれたんや」

 どうでもいいけど、この世界でも関西弁ってあるんだな。

「精霊が!?」

 風の精霊が飛んできた。

「アンタは?」

「風の精霊だよ!」

「俺たちの仲間になったんだ」

「なんか変な経緯みたいやな。後で詳しく聞かせてな。とりあえず、ウチのことを話すわ」

 ヒュムロス大陸には土と水の精霊がいて、イースティアと共に魔脈の管理をしているらしい。

 その精霊たちが封印され、魔脈が乱れ、一人で魔脈を管理することになったイースティア。

 その魔脈を抑えるのに力の大部分を裂き、戦闘できるほどの能力はなかったらしい。

「そこに人間の軍団がやって来たんや。さすがに無理やった」

 今もまだ、完全には程遠い。

「そっちはどうなってん?」

 イースティアに、俺たちの事情を説明した。

「なんや! アンタも人間にやれたんか! アハハ! いてて……」

「全くもって不覚でした。まさか爪と肉の間を狙ってくるとは……。考えたものです」

 いや、たまたまなんだけどな。

「魔脈はどうなるんだ? 管理者がいなくなったら暴走して大災害が起こるって聞いたぞ」

「そうや。今は人間の技術でなんとかなっとるけど、ウチと精霊の力無しじゃ、遅かれ早かれ、大陸全土が大変な事になるで」

「ヒュムロス王はどうしたんだ? 魔族と戦争してるのに、そんなことする程頭悪いのか?」

「……。死んだ」

「え?」

「せやから、ヒュムロス王は死んだんや。クーデター、ってやつやな」

「偶然か? マギロスでも、クーデターを企てた奴らがいたんだ」

「なんやて!?」

「巨大な魔脈を押さえて、言いなりになる魔獣を育てたり、ドラゴンに巨大な魔力を注ぎ込んで特攻させる爆弾みたいなことをさせようと企んでた」

 これは一体、どういうことなのだろうか。

 マギロスとヒュムロス。

 時を同じくしてクーデターが起こっていたとは。

「今ヒュムロス大陸は誰が指導者なんだ?」

「死んだヒュムロス王の息子や。どうせ誰かにそそのかされたんやろ。どれ程愚かなことをしとるかも知らんと」

「とりあえず、ヒュムロス大陸に行って見るしかないか……」

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