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一見無能ですが、実は最強なんです  作者: 葛葉龍玄


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港町カナタ

 風鳴の丘から歩いて1ヶ月ほど。

 俺たちは港町カナタに来ていた。

 ここから船で人間たちの住む大陸、ヒュムロスに渡るのだ。

「潮風が気持ちいい!」

 シェルティが機嫌よく話す。

 船が出るのが1週間後。

 それまで海で泳いだりするのもいいかも知れない。

「普通の装備なら潮気で手入れが大変そうですが、さすが名工か作っただけのことはありますね。錆びたりしなさそうです」

 そうか、普通の武具だとそういう気遣いも必要なのか。

「僕生のお魚食べるの楽しみにしてたんだ!」

「私もー」

 カオスちゃんと風の精霊は食べ物の話で夢中になっている。

 てか、精霊も飯食うのか。

 俺たちは宿に荷物を置くと、町に繰り出した。

「え? 船が出ない!?」

 船着場で声が聞こえてくる。

 マジかよ。俺たちにとっても死活問題だぞ。

「妙なことになってますね」

 ウェスティアさんも駆けつけてきた。

「主に騒いでいるのは商人たちだな」

「人間側に出た異世界人が、船旅の邪魔をするために、嵐を起こす機械を使ってるらしいんだ」

 船乗りたちとしても困ったもんだろう。

「セントラル大陸以外じゃ、そういう嫌がらせみたいなのは禁止じゃないのか?」

「そのはずですが、イースティアはなにをやってるのでしょうか。人間の王もそのような事を許すはずがないのですが……」

 ウェスティアさんも怪訝そうにしている。

「じゃあ、その異世界人が独断でやってるのか?」

「そうなりますね」

 それは俺たちも困ったことになるぞ。

「嵐くらい私がいれば、なんとでもなるよー!」

 風の精霊が会話に混ざってきた。

「風にまつわることなら、できないことはなにもないのだよー!」

 偉そうに小さな胸を張る。

 船長らしき人に話しをしに行こう。


「なんだ? アンタたちは」

 船長も対応に追われているらしく、忙しそうにしていた。

「実はな、訳あって俺たちは四大精霊の内の風の精霊と一緒に旅をしててな。この風の精霊がいれば、嵐が起こっても大丈夫なんだ」

「風の精霊だって!?」

 今のご時世、風の精霊が旅をしているなんて思いもよらないだろう。

 俺の隣で優雅に飛び回る風の精霊。

「本当ならこの程度の嵐なんとかなるだろうが……」

 船長は疑っている! まぁ、当たり前か。

「ダメ元で試してみないか?」

「まぁ、アンタみたいな立派な装備の旅人が言うなら試してみるか……」

 なるほど。装備は見る人が見ればどれだけ高価な物かわかるから、それだけで身分証みたいに使えるのか。

「とはいえ確証はない。一度、試しにその精霊様を乗せて予行練習してもいいか?」

「あぁ、もちろん」

 早速明日、嵐が必ず起こる地点まで船で出ることにした。


「ふふーんどうよ! 水着に浮き輪に、日焼け止め! 完璧じゃない?」

「お兄ちゃん! このお店が有名みたいだよ! 食べに行ってみようよ!」

 お気楽だなぁ、この人たちは。

「海が大変な事になってるみたいでね」

「え? どうしたの?」

 カオスちゃんの顔が真面目モードになる。やはりカオスちゃんはいい子だ。

 シェルティなんか話しを聞いちゃいない。

「かくがくしかじかで、船が出ないところだったんだ」

「お父様、そんなこと言ってなかったから、最近の出来事だろうね」

 魔王ことデウスの息子が王都にいたころに聞いていなかったと言うことは、カオスちゃんが旅に出た後に起こったということか。

「アタシはいかないわよ! 海を満喫するんだから!」

 わかってましたよ、シェルティさん。

「とりあえず明日は、俺とウェスティアさん、風の精霊の3人で行ってみるよ。カオスちゃんは情報収集してて」

「うん、わかった!」

 カオスちゃんは早速父親である、デウス王に使い魔をだしてくれた。

 デウス王はこの事を把握しているのだろうか?


 翌日。

 まだ霧の深い時間から、俺たちは船長に船を出してもらい、嵐が起こるという地点にまで来ていた。

「だいたいこの辺りなんだが……」

 船長が言うのが早いか、急に風が強くなりはじめた。

「風の精霊!」

「まっかせてー!!」

 俺の一声に、風の精霊がその力を振るう。

 ビタリと暴風雨は止み、船は安定を取り戻した。

「これはこれは。まさか、この機械を無力化できる連中がいるとは」

 現れたのはほぼ全身タイツの変態だった。

「お前、その格好恥ずかしくないのか?」

「くっ! これはこの星より遥かに進んだ文明で作られた高度なパワードスーツなのだ!」

 そうか、コイツがヒュムロスに現れた異世界人とやらか。

「少しは隠すための努力はしろよ。そんな格好していいの、CatsE◯eくらいだぞ」

 まぁ異世界人がCats◯ye知ってるわけないか。

「うるさい! 人が気にしてることをズケズケと……!」

 あぁ、一応気にしてたんだ。

「とにかく、セントラル大陸以外での妨害行為は禁じられてるはずだ!」

「これはヒュムロス王、クレイモア様の意向でもあるのだ」

「ヒュムロスの王が!?」

 ウェスティアさんが驚きの声をあげる。

「そんな事をしたら、セントイースティアご黙っているはずがありません!!」

 そうだ。ヒュムロス大陸にも、ウェスティアさんに相当する聖竜がいるんだ。

 神の次にこの星の秩序を守る存在だ。黙っているはずがない。


「あぁ、あの竜ね。俺が倒した」



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