許せない。
気を失わせた敵3人は縛り上げて物置きらしき所へ放り込む。
なるべく見つからないように、奥を目指す。
その途中、何匹もの実験に使われたであろう魔獣と出くわしたが、あとで元の動物に戻せる、というカオスちゃんの言葉を信じて、気絶させるだけに止めた。
「地下何階まであるんだ?」
地下1階は実験で動物から魔獣にさせられた、モンスターたちの檻のようになっていた。
地上に出やすいようにだろう。
「よし、地下2階にいこう」
なんとなく俺がリーダーっぽいことを言ってはいるが、その実なにもしてないのは内緒だ。
地下2階は、研究室のような場所だった。
「ここで動物を魔獣に変えているようね」
いずれあぶり出すとして、今はこの研究所の責任者の所へ急ぐ。
「たった今、魔法でメルビン伯爵に、この施設のことを報告しました。直に近衛兵を連れて来てくれるでしょう」
「しかし、何のためにこんな施設を……?」
責任者がいるらしき部屋の前まで辿り着いた。
ここまで敵と会わなかったのは運がよかった。
「そこまでだ!」
俺は威勢よく扉を開け放ち、中に乗り込む。
「む? ネズミが紛れ込んでおったか」
焦る様子もなく、男は淡々と言い放つ。
「暴れるなよ。お前をこのまま捕まえて……」
と同時に上から檻が降ってきた。
俺は完全に閉じ込められてしまった。
が。
閉じ込められたのは一番弱い俺だけ。
残りの3人が一気に入って来ると、責任者はあっさりとつかまった。
「くそ! 伏兵がいたとは! 道理でお前は弱い訳だ」
なんとでも言え。くそ。
そうこうしているうちに、メルビン伯爵の近衛兵と私兵団が到着し、この基地を次々と制圧していく。
「聞き及びましたぞ。単身囮になり、敵を引きつけてから捕まえた、と」
メルビン伯爵はとんでもない勘違いをしている。
「いや、あれは本当に閉じ込められただけで……」
「ここまでの成果を挙げてもなお謙遜するとは……。できた御仁だ」
「そうですね。ヨウさんが飛び込んだからこそ、私たちは罠にかからず、自由に動けたわけですし」
「たまにはやるじゃない」
この2人はわかってて言ってるだろう。笑顔が邪悪だ。
カオスちゃんはというと、魔力を与えられた、魔獣と化した動物たちを元の姿に戻すため、魔力の吸い上げを行っていた。
「カオス殿もあのような事ができるとは……。いやはや、ヨウ殿は仲間にも恵まれてますな」
「そうですね会う人会う人、みんな俺の大切な仲間になってくれてますから、ありがたい限りです」
それから、あの施設で働いていた職員や責任者たちへの尋問が始まった。
コレがまたワンパターンで、クーデター起こそうとしてたらしいんだよね。
「各地でクーデターですか。それはもしかしたら、全ての組織が繋がっている可能性もありますな」
「加えて、今のデウス王の執政に不満を持っているものが多数いる、ということですね」
「恐らく、長引きなかなか終結を迎えない戦争のせいかとおもいます」
メルビン伯爵が断言するような形で言い放つ。
「そして、自分たちで強力な悪魔を生み出し、デウス王に変わって戦争を終わらせる。それが奴らのシナリオかと」
「なるほど。じゃあ、魔大陸にいる限り、クーデター組織と戦うハメになることは必須か」
「そういうことですな。まぁ、ヨウ殿がいればなんの問題もないでしよう」
がははと笑うメルビン伯爵。
その膝の上には猫に戻った元ブエルがゆっくりあくびをした。
俺たちはメルビン邸を後にして、風の精霊と契約するために、精霊の住む丘を目指していた。
「しかし、許せないな。俺のいた星でいうところの遺伝子操作みたいなものろう? そんなのあっちゃいけないことだ」
「お兄ちゃんの世界でもそういう事があったの?」
「あぁ、明確に禁止というわけじゃないが、新しい種族を自然交配以外で作ることはやってなかったな。クローンくらいは作ってたけど」
「でも、お父さん意外と嫌われてるのかなぁ。王城にいたんじゃわからなかったや」
デウス王というわけではなく、やはりメルビン伯爵が言っていたように、戦争を終結させられないのが原因かと。
ゆっくり世界を見聞したほうがいいのは解るが、焦る気持ちもある。
「焦らない、あせらない。そんな簡単に世界は変わらないわよ」
いつでもマイペースなシェルティに言われると、少し気が楽になる。ある意味見習ったほうがいいのかもしれない。
「あと一週間くらいかかるから、ゆっくり行きましょう」
ウェスティアさんも僕の肩を叩いて荷を下ろしてくれた。
「よし。気を取り直して、風の精霊と契約しに行くか!」
「「「おーっ!!」」」




