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一見無能ですが、実は最強なんです  作者: 葛葉龍玄


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ペットを飼うのも大変だ

 さて、メルビン邸へやってきたわけだけど、すごいデカいかと思いきや、意外とそうでもなかった。

「メルビン伯爵は、自分の暮らしは質素で、最低限の賃金しかもらわず、他は公共事業とかにお金を回してるんだー」

 滅私奉公と言うやつか。あたまが下がる。

「おぉ、あなた方が私のペットを探してくれるという冒険者様たちですな」

 現れたのは、いかにも良い人! という感じの壮年。

「実は少し込み入った話でして……。詳しくは応接室でお話しいたします」

 込み入った話か。そんなんばかりだな。

 こうして俺たちは応接室へ通された。


「実は、逃げ出したペットというのは、ブエルなのです」

「ブエル?」

「ブエル!?」

 俺とカオスちゃんで反応があまりにも違った。

「そんなもの飼っていいわけないですよ!」

 え? 違法で飼ってたってこと?

「それが、家で飼い始めた時は普通の猫だったのです」

 なんか益々話がわからなくなってきたぞ。

「ブエルというのは、元々悪魔の名前です。ライオンの頭にヤギの足を5本はやしています」

 なにそれ怖い。そんなの逃がしたのか、このメルビンさんは。

「でも、普通の猫がいきなりそんな悪魔になることなんてあるのか?」

「隔世遺伝か、他者の手による介入か、悪魔合体ならありえますね」

 悪魔合体! なんかロマンある響きだな!

「恐らく他者の手によるものかと思われます。うちは代々、魔力の高い猫を保有するしきたりがあるのです」

 猫を保有しなければならないとか、ある意味羨ましいな。

「その高い魔力をさらに高め、ブエルに変化させたのだと思います」

「その根拠はなんですか?」

「この1枚の写真です」

 そう言って渡されたのは、どこかの草原で走り回る悪魔の姿。

 この悪魔が伯爵の飼い猫だったのか?

「魔力の波長で、このブエルがうちの猫だとわかりました。そして、何者かの魔力も検知してます」

 そこまでわかっていて、動かないのはどういうことだ。

 伯爵自ら行けばいいだけなのでは?

 いくら仕事が大変だろうが、それくらいはできるはずだ。

「私が行けば、責任を取って猫を殺さなくてはいけなくなる。あなた方には、猫の保護と同時に、犯人を見つけ出し悪魔の姿から元に戻す方法を探って頂きたいのです」

 やっぱりただのペット探しじゃないじゃん。そんな気がしたんだよなぁ。

「つまりあたしたちに尻拭いを全部させようってわけね?」

「簡潔に言えば……」

「まぁ、せっかく受けたクエストだし、やれるだけやってみようか」

「そうですね。このまま真犯人が見つからなければ、メルビン伯爵が悪魔を逃がしたという罪を被ることになります」

 ウェスティアさんはやる気になってくれたみたいだ。

「本当に、他に犯人がいるなら、ね」

 シェルティはまだメルビン伯爵を疑っているみたいだ。

「猫がいなくなった当日の話を聞いてもよろしいですか?」

 乗りかかった船だ。やれるだけやってやる。


 猫は完全室内飼い。

 餌やトイレは決まった場所でするが、それ以外は基本自由に行動してるらしい。

 いなくなったことに気がついたのは、夕飯の時間になってもやってこなかったことでだ。

 猫は人間以上に体内時計が正確で、ルーティンを守る生き物だ。

 夕飯の時間、メルビン伯爵はまだ仕事から帰ってなかったため、メイドさんがご飯をあげる係だったのだが、現れないどころか、家中を探してもいなかったという。

 自分で逃げ出したか、誰かに攫われたか。

 一番怪しいのはメイドさんということになるだろうが、その事件以降も働き続けていることを考えると、その方向性はないのかも知れない。

 監視役としてここに留まっているのでなければ。

「家の中は好きに探してください。妻も娘も了承してます」

 こうして猫探しならぬ悪魔探しがはじまった。


「この魔力波だね」

 カオスちゃんが、家に残った猫の残留魔力を検知した。犬みたいな子だなぁ。

 家の中を探し回るうちに、複数人の魔力が確認された。

「残留魔力の強さで、なんとなくの日付はわかるよ!」

「猫がいなくなったのが5日前って言ってたな」

 それから屋敷中をくまなく探してみたところ、一つの部屋で、屋敷の誰とも合致しない魔力が見つかった。

「恐らく、それが犯人だと思う」

 カオスちゃんの言うことが正しければ、だ。

 しかしそこは窓こそあるものの、色々な人物が通る場所。

 家族やメイドたちもこの通路を使うはずだ。

 共犯がいないとも限らない。

「とりあえず、犯人らしき魔力波を追ってみるね!」

「カオスは役立つわね、どこかの誰かと違って」

 そのどこかの誰かを間違えて殺したのはどこの駄天使だよ。


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