モノリスの町へ
魔都マギロスから歩くこと約3日。
路銀はあるが、冒険者として名を売っておきたいということもあり、俺たちは様々な依頼をこなしながら旅をすることに決めた。
「ねえ、なんでそんなに売名行為に力入れるの?」
「内緒。まだヒュムロス大陸見て回ってないから、なんともいえないけど、恐らく俺の考え通りにするから」
「私はなんとなくわかりますが」
「えぇ〜? なんだろ」
次に着くのはモノリスの町。
あと5日かかる道のりだ。
「あ、なんか馬車が脱輪してるみたい」
カオスちゃんが声をだすが、豆粒みたいなのが蠢いてるようにしか見えない距離だ。
視力も相当いいらしい。
「助けに行くか」
俺たちは脱輪した馬車を直すため、現地へ向かった。
かなり大規模な商隊の馬車の一つ。最後尾を走っていた馬車が脱輪したらしい。
「申し訳ありません」
その馬車の責任者らしい人は平身低頭、そういった。
前を走るキャラバンからはだいぶ差をつけられてしまったみたいだ。
見たところ、護衛も心許ない。
「よければ、俺達も護衛に付きましょうか?」
「本当ですか? いやはや、捨てる神あらば拾う神ありです。モノリスの町まで、どうかよろしくお願いします」
護衛には3人の魔族か付いていた。
「オレはハヤテ。この3人パーティーのリーダーだ」
「俺はヨウ。しばらくはよろしくな」
ヨーイチという名前はこの世界では珍しく、異世界人とバレないように用心した結果、ヨウ、とだけ名乗ることにした。
「アンタがリーダーか? 失礼だが、一番弱そうだぞ」
本当に失礼な。
「交渉事や金勘定が得意なんだ」
間違いでないのが悲しいところだ。
荷物もかなり乗っているが、ハヤテのパーティーと俺達が乗り込んでもまだ余裕がある荷台。
この馬車は魔力を使う馬が引き、荷台にも魔力が通っているので、日本で乗っていたバスや電車より乗り心地が良いくらいだ。
ハヤテのパーティーは、他2人は女性。
オーガの戦士、ハンナ。
ハーピーの斥候兼魔法使いのエリシア。
「しかし、人間がマギロスで魔族連れてパーティー組んでるのは初めて見たな」
「科学っていうのがどうも嫌でね。男なら自分の身一つで強くなりたいと思ったら、こうなってた」
「なるほど。修行の成果は?」
「程々かな。これからの伸び代に期待だ」
俺達は他愛もない会話に花を咲かせていた。
それも、あと数時間でモノリスの町に着く、という時までだった。
「なんでこんな所に……」
出会したのは淺竜
竜とは名乗っているが、オツムの方は残念で、本能のままに暴れまわるだけ。
ただ身体能力も高ければブレスも吐く。
知能がない分、普通の竜より厄介かも知れない相手だ。
「くそっ! やるしかねぇか!」
ハヤテたちも臨戦態勢に入る。
俺達も応戦するが、コイツは明らかにでかい。ドラゴンの姿のウェスティアさんの倍くらいはある。
「先ずは目をもらうぜ!」
ハヤテはその名のごとく、目にも止まらぬ早さで淺竜の身体を駆け登ると、目を潰そうとする。
「まて! 今コイツを変に傷つけて馬車をやられたら意味がない!」
馬車はやっと逃げ出そうという所だ。暴れられたら巻き添えを食らう。
「くそ!」
やつの目がオレを見ている。まさか、一番弱い俺を狙うつもりか?
ならば!
俺はその場から脱兎のごとく逃げ出す。
足の早さは自信あるんだ!
「おい! ヨウ! くそ、アイツ逃げやがった!」
「お兄ちゃんはそんな人じゃないよ!」
俺の予想通り、淺竜は俺を追いかけて来た。
コイツ、図体のわりに早えぇ!
「!? 囮だったか!」
一人竜の囮になる。そうして馬車から遠ざかれば、遠慮なく戦える!
「うわっ!?」
淺竜のの右足が俺のすぐ横の地面に叩きつけられる。
そうだ!
俺はやつの爪と肉の間を剣で斬りつける。
オレだってレベルアップしてる。ヤツの爪と肉のごと切り落とす。
「graaaaaaaa!!!!」
やっぱりそこは痛いよな!
そのまま踵の方に回り込み、腱を切ろうとしたが、こちらは刃が通らない。剣だけは一流でも、使い手が悪いとこんなもんか。
淺竜が咆哮を上げて痛がっている。
「すまねぇ、誤解した!」
ハヤテが再び淺竜に飛び乗り、今度こそ目玉を2つとも切り裂く。
これで少なくとも視力はなくなったはずだ。
俺は爆裂の魔石を剣にハメると、淺竜に突き刺そうとする。
斬るのは無理でも、刺すだけならできるはず。
足の一本でももっていけば、ヤツも追ってこれないだろう。
そう思い、足目掛けて思い切り剣を突き立てた。
つもりだったの。いや、正確には突き立てることには成功したが、場所が違った。
竜が身体を回転させたせいで、刺す場所がズレたのだ。
刺さった場所はなんと、竜の肛門。
「あっ」
と思った時には、肛門に剣が突き刺さり、体の中、直腸で大爆発を起こした。
足だけならいざ知らず、流石に体内から爆発されたら、いくら竜とは言えど一溜まりもない。
淺竜は内蔵をズタズタにされ、その生命を散らした。
「わぉ」
みんなも驚いているが、自分が一番驚いている。
「す、すげぇな、ヨウ」
ハヤテ達も目を丸くする。
「あはは。倒しちゃった」
こうして運よく淺竜を倒した俺たちは、再び馬車と合流して、モノリスの町へ向かうのだった。




