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一見無能ですが、実は最強なんです  作者: 葛葉龍玄


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辺境の魔王

 歩くこと2日。

 魔王軍に完全管理されている魔脈はとても過ごしやすかった。

「爆熱の魔石も、使用回数が増えて3になったな。まとめて一回にすれば、かなり強力な魔法にもできる!」

 俺自身は強くなくても、装備だけはどんどん強くなっていく。

 実力じゃないのが残念なところだ。

「アタシも魔法回数が5になったわ」

 シェルティも順調に強くなっているようだ。

 ウェスティアさんも身体能力が2割ほど上がったし、カオスちゃんは正に魔王レベルの強さだ。

 今夜はここで野営して、明日から5日かけて辺境の魔王退治に向かう。

「それにしても嫌になっちゃうな! 勝手に魔王名乗ったりして」

 魔王デウスの息子からするといい気はしないのだろう。

 そりゃそうだ。知らん奴が急に自分の親と同じ名前を名乗るようなもんだ。いや、ちょっと違うか。

「じゃあ、お兄ちゃんいくよー」

 お互いに木剣を構える。

 俺はカオスちゃんと相対して攻撃を仕掛けようとするが、まったく隙がない。

 フェイントを掛けても引っかからない。

 思い切り突撃すると、あっと言う間にひっくり返される。

「じゃあ、こっちから行くねー」

 カオスちゃんはカオスちゃんなりに手加減している。赤子をあやすレベルで。

 それにすらついていけず、ボコボコにされる。

「いてて……」

 シェルティに回復魔法をかけてもらいながら休憩する。

「ダメダメですね」

 全員にボロクソ言われてしまう。

 くそー。本当に俺の能力ってなんなんだよ……。

 不安を残したまま、夜は更けていく。


「はぁ、はぁ、はぁ、」

 慣れない山道に、強い魔獣や、自称魔王の手下らしき魔族との戦い。

 なかなかにハードだ。

「でも、戦えてるよ、お兄ちゃん!」

 カオスちゃんが精一杯励ましてくれる。

 山を登りきったその先に、廃村はあった。

「今日はここから少し離れた所で野営しましょう」

 気配を消す魔法を使い、安全にゆっくりと休息をする。

 そして翌朝。

 俺たちは気配を消す魔法を使い、見つからないように自称魔王の所へ向かう。

「この建物の中か」

 一際大きな建物。昔は教会にでも使われていたのか、その作りは堅牢で、廃村となった今でもまだ威厳を放っていた。

「ほう、ここまで来るものがいたとは」

 気配を消す魔法を使っているのに気付かれた!

「魔力の無駄ね」

 シェルティは魔法を解くと、俺たちの姿は魔王の前に現れた。

「よくぞここまで来たな。って、カオス様!?」

「あ、召使いのデモンズだ! 勝手に魔王名乗って!」

「だ、だが今の我は一味違うぞ!」

 祭壇の向こう側。

 そこには巨大な魔脈。いや、ここまでデカいと魔力の泉と呼んだほうが正しいかもしれない。

「こんな魔脈、報告になかったよ!」

 魔都から南側は魔王軍がほぼ魔脈を押さえてるはずだった。

 それが、こんな巨大な泉を見逃していたなんて。

「この魔力の泉のおかけで、我は魔王にも匹敵する力を手に入れたのだ!」

 デモンズが右手を翳すと、強力な魔力が放たれる。

 その衝撃波はあまりにも強力。

 ウェスティアさん、シェルティが、2人がかりで防御魔法を使ってやっと防げたほどだ。

 ちなみにカオスちゃんは片手で受け止めていた。

「まさか、こんなに強力になってるなんて……!」

 カオスちゃんも驚愕している。

「ハハハハッ! どうだこの力! 今の我はデウスをも超えたぞ!」

 連続で魔力弾を放つ。

 俺以外はみんな避けながら、デモンズに反撃するチャンスを伺っていた。

 俺は何してるかって? アワアワしてたらたまたま当たらなかっただけで、目で見て避けれるほど身体能力は高くない!

「さぁ、どうする!!」

 デモンズはまたも特大な魔力弾を放とうと、魔力を溜めている。

 そうだ、カオスちゃんにも効いたんだ。もしかしたら、コイツにも効くかも知れない。

 強さ的にはさほど変わらないはず。

 幸い、デモンズは俺みたいな雑魚は歯牙にも掛けていない。

 俺はこっそり後ろに回る。

「これで終わりだ!!」

 今まさに魔力弾が放たれる瞬間、俺はデモンズに収納石を投げつけた。

 ドラゴン退治の時、テロを企んだ村長から盗んできた唯一の収納石だ。

 収納石が光ると、まずデモンズの魔力が吸い込まれた。

「な、なんだ!? この光はっ!?」

「お兄ちゃん!!」

「ヨーイチ!?」

「ヨーイチさん!?」

 見事デモンズを収納石に閉じ込めることができた。

 これでデモンズは実質俺の使い魔になる。

「こんな終わらせかたするなんて……」 

 シェルティが眉間をつまむ。

「カオスちゃんにも効いたから、コイツにも効くかな? って思って」

 アハハ、と笑って見せた。

「なんか、可哀想になる終わり方しましたね……」

 ウェスティアさんは憐れな者を見る目で、収納石を見た。

 その時、他の魔族たちが慌てて駆けつけてきたが、デモンズがいないのを見ると、大人しく投降した。

 それから、魔界軍が来るのを魔の泉を守りながら待ち、一週間ほどで来たテセウスに引き渡した。

「こんな馬鹿でかい魔脈があるなんてな……」

 テセウスも驚いた様子だ。

「この魔脈ってどうするんだ?」

「魔都の城にある、魔高炉に集めて、電気に変えたり、医療現場に分配したりして、インフラになるんだよ。余剰魔力で僕ら王族はどんどんレベルアップするんだー」

 カオスちゃんが教えてくれた。

「なるほど、それならいくらあっても問題ないな」

「私たちもレベルアップさせてもらいましょ。ヨーイチ以外」

 なにがおかしいのか、シェルティは、キシシ、と笑いながら魔の泉に向かった。

 魔力を持たない俺はその恩恵に与れない。

 とほほ……。

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