おっと、まさかの?
「まったく……。王の命に従ってクエストクリアしてきた人間に対してする仕打ちか? これが」
「だまれ、29番!」
番号で呼ばれるの腹立つな。
「いいからデウス王に連絡をつけてくれ! ヨーイチが戻った、って」
「うるさい! 大罪人めが!」
大罪って、俺たち何したのよ。ひょっとしてアレか? 収納石貰ったのがいけなかったのか?
それくらい返すからさぁ。
「なにをしておる」
そこへ現れたのはデウス王だ! やった!
「はっ! 王子を誘拐したものを閉じ込めてあります! この者等、のこのこ自分で戻ってきました!」
俺たちだってアホじゃない。本当に誘拐犯なら普通に逃げてたわ!
「ん? ヨーイチ殿ではごさらぬか! 貴様ら、この国の英雄に何という仕打ちをしたのだ! 即刻釈放だ!」
流石デウス王! はなしが早い!
てか、王子ってもしかして……。
「ドラゴンの件、しかと聞き及んだ。まさか謀反を企てていたとは」
王子は先遣隊としてドラゴン退治に行き、そこで行方不明になったらしい。
「お兄ちゃん、やっほー」
やっぱりあの時の女の子……。というか男の子だったのか……。
「テロ組織の壊滅に加え、我が息子の救出までするとは……。さすがヨーイチ殿とその仲間たちよ」
王から直々に礼を述べられる。
一応止め刺したの俺だからな! 剣放り投げただけだけど。
てか、そんな勝ち方が多すぎるぞ、作者!
それとも剣放り出せば勝てる能力とか?
「さて、ヨーイチ殿。お主は異世界人としてこのマルベラスの戦争を止める役目があるわけだが、この後どうするか決めておるのか?」
今後? 考えたこともなかったな。
「デウス王はなぜ人間と戦争してるのですか?」
王の質問に答える前に出た疑問。
「む? 単純な話だ。昔から人間憎しで戦い続けているからだ」
惰性かよ。
「我々魔族はもともと領地も持たず、自然と共存して暮らしていたわけだ。しかし、その自然を人間が破壊した。我々は住むところをうしない、この西側のマギロス大陸に集まり、奪われた領地を取り戻すために人間と戦うことを決めたのだ」
ふむ。アーバンベア問題みたいなものか。
「しかし、まだ南には未開の大地があるでしょう? 戦争せずとも、そこに住めばよかったのでは?」
「確かに南の地に住む同胞も人間もいるという。だがそれは別問題だ。東の大陸を追い出され、はいそうですか、と納得するほど我々のプライドは安くない」
やはり出てくるプライド、面子問題。
恐らくだが、人間の王に話を聞いても同じことを言うだろう。
「セントラル大陸以外ではみんな仲良くできてるではないですか」
「それはこの星の創造主がそのように我々を作り給うたからだ。セントラル大陸以外でいがみ合うべからず、と」
そこは絶対遵守なんだなぁ。
うーん。
「とりあえず、俺は世界を知らなさすぎる。世界を旅してどうするか決めたいと思います」
「敵に回るのか?」
王は怪訝そうな顔で俺を見る。
もしかしたら今度こそ殺されるかも知れない。でも。
「それはわかりません。世界中を旅して、魔族に与することがあるかも知れませんし、敵対するかもしれません」
「まだわからないと?」
「俺が戦争を止めるなら、できる限り遺恨のないようにおわらせたいです」
「ふむ。では、カオスよ」
「はい」
いきなり呼ばれたカオスちゃんは特段緊張した様子もなく、普通に答える。
「ヨーイチ殿とご一緒せよ」
「わかりました」
カオスちゃんはこの事を予測していたのだろうか?
「なぜその子を俺に?」
「我々魔族の事をよく知ってもらうため、我に逐一報告をするため。そして、可愛い子には旅をさせろということだ」
「というわけで、改めてよろしくね、お兄ちゃん!」
「ついでにカオスに剣の稽古を付けてもらいたまへ」
デウス王は、がははと笑い、カオスを俺の側に寄こす。
「あ、ちなみに僕は両性具有だから、お兄ちゃんのお嫁さんにもなれるよ」
「ぶっ!」
「それも折り込み済みだ」
カオスが俺の腕に抱きつき嬉しそうな顔をする。
「離れなさい、クソガキ」
ウェスティアさんがそれを引き剥がす。
「これはヤキモチではありません。使い魔として、主の貞操を守る義務があるのです」
それだけにしては顔が怖いよ? ウェスティアさん?
「よかったじゃない、ヨーイチ!」
シェルティがまたも爆笑しながら俺の肩をバンバン叩く。
「今夜は歓送会だ! 皆のもの、宴の準備だ!」
デウス王のその言葉を皮切りに、厳粛な場は宴会の席へと変わった。
「よし」
次の日。
しっかりと準備を整えた俺たちは旅に出る。
先ずは大陸を南下し、唯一の港町から東の人間たちの大陸にいく予定だ。
「カオス様。何かありましたら、我々をお呼びください。どこへでも駆けつけます」
およそ100名ほどの兵士たちが見送りをしてくれる。
「彼等は?」
「僕お抱えの私兵だよ。国じゃなくて、僕に仕えてるんだ」
「何かの時に役に立つな」
多くの人に見送られながら、俺たちは南へ旅立った。




