どうやって?
ドラゴンが坑道に出てから、町の人たちは山に入らなかったらしく、道中でもかなりの数の魔獣と遭遇した。
「やっと俺も戦力になれた気がするよ」
「確かにこの坑道は魔脈が湧いていて、かなり強敵ですが、だいぶ戦えるようになりましたね」
ウェスティアさんにも褒めてもらえた。
「しかし妙ですね」
「なにが?」
「普通の魔獣は、ドラゴンなんて大物がいたら、恐ろしくてにげてしまうのですが……」
たしかに。
「それにこの辺りの魔獣は魔力の流れがおかしいわ」
二人はなにか違和感を感じているらしいが、俺はなにも感じなかった。
「とりあえず行って見るしかないだろ」
それは二人も同じなのか、頷いて先に進んだ。
坑道の中でも魔獣は多く、シェルティもウェスティアさんも魔法を温存して戦っている。
「鞭は得意なのよね。しばく感じがたまらなくゾクゾクするの!」
天使に似つかわしくない発言だ、うん。
「この先にドラゴンの気配を感じます」
ひときわ広く掘られた奥地に、そのドラゴンはいた。
「grrrrrrr……」
「私の話を聞いて下さい」
思い切り人間の言葉で喋ってるけど、伝わるのか、これ?
でも、なんだ? この違和感は。
今度はシェルティもウェスティアさんも気付いてないみたいだけど。
「アナタはここにいるべきではありません。早く別の……」
その瞬間、ドラゴンの素早い攻撃がウェスティアさんの服をかすめる。
? 今の禍々しい泉みたいなのは……。
「人の話を聞きなさい!」
坑道。狭い通路の奥。ドラゴンが入れるスペース……。
「待って、ウェスティアさん」
「なんですか!」
どうでもいいけど、この人結構キレやすいよね?
そうじゃなくて。
「このドラゴンは、どこから入ったんだ?《・・・・・・・・・・》」
「どこって……」
天井もある。
入口はトロッコが通るくらいの幅。
どう考えてもこのドラゴンがここに入ってこれるスペースがない。
「!?」
シェルティもウェスティアさんも気づいたようだ。
「このドラゴンは誰かに閉じ込められたんだ」
「で、でも何のために!?」
「ここの坑道の魔獣は魔脈で強くなってるよな? しかもなぜかドラゴンを恐れない。じゃあ、ドラゴンの餌はなんだ?」
ここから動けないドラゴンは当然襲ってく魔獣を食べる。
魔脈に汚染されるように強くなった獣を、だ。
「そしてあのかじり跡」
壁にある噛み跡。それは竜の牙によるものとしか思えない。
「この竜は意識を奪われ、魔鉱石も食べてる」
「でも何のために?」
「ウェスティアさん、このドラゴンが普通のこの年齢のドラゴンと比べてあまりにも強いとか、魔力が高いとか、そういうことはないか?」
「それは……」
ウェスティアさんが魔力を集中させ、ドラゴンの潜在魔力を探る。
「た、確かに強すぎるくらいの魔力量です」
「しかも、さっき見えたんだ。あのドラゴンの身体の下に魔脈があるのを」
このドラゴンをどうしても強大な魔力を持った存在にしたい者たちがいる。
そうとしか考えられない。
「じゃあ、なぜ冒険者なんて雇ったの?」
「冒険者たちも食われたのさ」
このドラゴンの糧にするために。
「魔獣も魔鉱石も、冒険者も、このドラゴンの魔力を強くするためにいるってこと!?」
「恐らく」
「そう考えられなくもないですが、一体何のために?」
「それは」
あの人に聞くしかないだろう。
「おや、もうドラゴンを退治してくださったのですか?」
俺たちは町に戻り、町長の所へ来ていた。
「いや、アンタに用事があってね」
「ほう……。どのような?」
町長は感情を表に出さずに目を細める。
「なんであんな所でドラゴンを育ててる?」
「はて、何のことでしょう? 私にはなんのことだか、さっぱり……」
「嘘。コイツは理由を知ってるわ」
騎士団員か使っていた嘘を見抜く魔法。
それを一度見た事のあるシェルティは本の能力でその魔法を習得したのだ。
「魔法、ですか。では言い逃れできませんな」
町長が合図すると、町の人たちが襲いかかってきた。
やばい、明らかに俺より強い!
スタコラと逃げ回る俺を追いかける町人。
その間にも、ウェスティアさんとシェルティが少しずつ数を減らしてくれている。
俺は逃げながら振り返り、死なない程度に、でも動けないくらいの傷を負わせて、また逃げるを繰り返していた。
体力だけは馬鹿みたいについたからな!
痺れを切らした町人が一斉に襲いかかってくる。
やっべ!
俺は咄嗟に1日一回しか使えない防御魔法を展開する。
5人からなる攻撃を一発出止めて見せた。
その間に逃げて、遠くから魔力をセーブした、爆熱の魔法を打つ。
本気の一発でなければ3回は打てる。
こうして少しは活躍? しつつ、戦闘要員の町人を倒し切ることに成功した。
「そ、そんな馬鹿な……」
「ぜぇ、ぜぇ……。あとは、アンタだけ、だぜ……。町長。ぜぇ、ぜぇ」
息も絶え絶えでかっこよさの欠片もないが、一応町長を追い詰めることに成功した。




