第11話・後編 『ギャル、リンネと“ひとつの味”を作り上げるき』
こはるの厨房。
アリスとリンネは、並んで鶏肉を焼き始めていた。
フライパンに油をひき、中火でじゅわっと音が立つ。
アリスは緊張しながら鶏肉を並べた。
「うち……焼き加減、まだちょっと苦手やけど……頑張るき……!」
リンネは優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ。焦げ目がつくまでは触らないのがポイントです」
アリスは目を丸くした。
「え、そうなが!?なんか……焼きながらちょこちょこ触ってしまうき……」
リンネは首を振った。
「触ると温度が逃げてしまうんです。まずは“待つ”ことが大事ですよ」
アリスは真剣に頷いた。
「待つ……うち、頑張って待つき……!」
じゅわぁぁ……
鶏肉の表面がこんがり色づいていく。
リンネがそっと言った。
「アリスさん、今です。ひっくり返しましょう」
アリスは慌ててトングを持った。
「う、うん……!」
二人は同じタイミングで鶏肉を返した。
ぱちっ……
油が弾ける音が、まるで二人の息が合った合図みたいだった。
アリスは嬉しそうに笑った。
「なんか……二人でやると、うちでも上手にできる気がする……!」
リンネも微笑んだ。
「アリスさんの動き、すごく丁寧ですよ。昨日の特訓の成果ですね」
アリスは照れながら言った。
「うち……リンネちゃんと並んで立ちたいき……頑張ったき!」
壮真が後ろから声をかけた。
「ほんならタレ入れるぞ。二人で作ったタレや。焦らず、ゆっくり入れろ」
アリスとリンネは頷き、二人で鍋を傾けてタレを流し込んだ。
とろり……
甘さと香りが混ざったタレが、鶏肉に絡んでいく。
アリスは目を輝かせた。
「うわ……めっちゃええ匂い……!」
リンネは静かに言った。
「アリスさんの甘さと、私の香り…… ちゃんと合わさってますね」
アリスは胸が熱くなった。
「なんか……うちの味が、リンネちゃんの味と一緒になって……新しい味になっちゅう……めっちゃ嬉しい……!」
リンネは少し照れたように微笑んだ。
「私も嬉しいです。二人で作ると、ひとりでは出せない味になりますね」
壮真が言った。
「ほんなら最後の仕上げや。照り焼きは“照り”が命や。タレを鶏肉にかけながら煮詰めろ」
アリスとリンネはスプーンを持ち、鶏肉にタレをかけ続けた。
とろり……とろり……
アリスは息を止めるほど集中していた。
(うち……絶対失敗したくない……リンネちゃんと作る初めての料理やき……絶対綺麗に仕上げたい……)
リンネも同じように集中していた。
「アリスさん、火加減そのままで……もう少し煮詰めましょう」
「うん……!」
二人の動きは、まるでひとつのリズムみたいに揃っていた。
タレがとろっとしてきた瞬間、壮真が言った。
「……よし。完成や」
アリスとリンネは同時に息を吐いた。
皿に盛り付けると、照りのある美しい照り焼きが姿を見せた。
アリスは思わず言った。
「うち……こんな綺麗な照り焼き作ったことない……!」
リンネは微笑んだ。
「アリスさんと一緒だったからですよ」
アリスは顔が真っ赤になった。
「そ、そんな言われたら……なんか……照れるき……!」
壮真は照り焼きを一口食べた。
沈黙。
アリスは緊張で手を握りしめた。
リンネも静かに待っている。
壮真はゆっくり口を開いた。
「……悪うない。二人の味になっちゅう」
アリスは目を丸くした。
「え……ほんまに……?」
壮真は頷いた。
「アリスの甘さと、リンネの香り。どっちもちゃんと生きちゅう。これは二人にしか作れん照り焼きや」
リンネは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます」
アリスは涙を浮かべた。
「うち……リンネちゃんと並んで立てる……?」
壮真は言った。
「立てる。胸張れ」
アリスは力強く頷いた。
「うん……!うち、もっと上手になるき!」
リンネは優しく言った。
「アリスさん。これからも一緒に作りましょうね」
アリスは笑った。
「うん!よろしく!」
二人の距離は、照り焼きの照りみたいにゆっくり、でも確実に近づいていった。
◆照り焼き
■材料(2〜3人分)
鶏もも肉……1枚(約250〜300g)
塩・こしょう……少々
油……大さじ1
●照り焼きのタレ
醤油……大さじ2
みりん……大さじ2
酒……大さじ1
砂糖……大さじ1
■作り方
1. 鶏肉の下処理
余分な脂と筋を取り除く
塩・こしょうを軽くふる
2. 焼く
フライパンに油をひき、中火で皮目から焼く
焦げ目がつくまで触らず“待つ”
ひっくり返して裏面も焼く
3. タレを作る
醤油・みりん・酒・砂糖を混ぜる
甘めにしたい場合は砂糖を少し増やす
4. タレを入れて煮詰める
鶏肉に火が通ったらタレを入れる
弱めの中火で煮詰める
スプーンでタレをかけながら“照り”を出す
5. 完成
タレがとろっとしてきたら火を止める
食べやすい大きさに切って盛り付ける




