第11話・中編 『ギャル、リンネの技術に驚きながらも“自分の強み”を見つけるき』
こはるの厨房。
アリスとリンネはまな板の前に並び、鶏肉の下処理を始めていた。
アリスは包丁を握りながら、ちらっと横目でリンネを見る。
(リンネちゃん……包丁の動きがめっちゃ綺麗……なんか、音まで上品やし……うちのトントントンって感じと全然違う……)
リンネは鶏肉の余分な脂を、まるで絹を扱うような手つきで丁寧に取り除いていた。
アリスは思わず見惚れた。
「リンネちゃん……なんか……すごいね……包丁の動き、めっちゃ綺麗やし……うち、見とれてしまうき……」
リンネは少し照れたように笑った。
「ありがとうございます。でも、アリスさんの切り方も丁寧ですよ。昨日、特訓されたんですよね?」
アリスは胸を張った。
「うん!壮真にめっちゃしごかれたき!じゃがいもの面取りとか、玉ねぎの火の通りとか、
調味料の順番とか……もう頭パンパンになるくらい覚えたき!」
リンネは目を丸くした。
「面取りまで……?それはすごいです。煮崩れ防止のための処理ですよね」
アリスは嬉しそうに頷いた。
「そうそう!壮真が“面取りは愛情や”って言いよったき!」
リンネはくすっと笑った。
「壮真さんらしい言い方ですね」
壮真が二人の後ろから覗き込む。
「ほんなら次は鶏肉の筋を取れ。火が通りやすくなるし、食感も良うなる」
リンネはすぐに筋を見つけて、スッと包丁を入れた。
アリスはそれを見て驚いた。
「えっ……リンネちゃん、筋見つけるの早っ!」
リンネは少し照れたように言う。
「慣れですよ。毎日やってると、自然と見えるようになります」
アリスは鶏肉をじっと見つめた。
「うちも……見えるようになりたい……どこやろ……筋って……」
壮真が指で示した。
「ここや。ほら、白い線みたいになっちゅうやろ」
アリスは目を凝らした。
「……あっ!ほんまや!なんか……見えた気がする!」
壮真は笑った。
「気がするんやなくて、見えちゅうんや。昨日の特訓でだいぶ目が良うなったな」
アリスは嬉しそうに頷いた。
「うち……成長しゆう……!」
リンネはその様子を見て、優しく微笑んだ。
「アリスさん、すごいです。昨日の特訓がちゃんと身になってますね」
アリスは照れながら言った。
「うち、リンネちゃんと並んで立ちたいき……頑張るき!」
壮真が調味料を並べた。
「ほんなら照り焼きのタレ作るぞ。二人で相談してやってみい」
リンネはすぐに動いた。
「まずは醤油とみりんを同量……そこに酒を少し足して……甘さは砂糖で調整……」
アリスはその手際の良さに驚いた。
「リンネちゃん、めっちゃ早い……なんか……迷いがないき……」
リンネは少し照れたように言った。
「照り焼きは家でもよく作るので……慣れてるだけですよ」
アリスは自分の調味料を見つめた。
(うち……昨日の肉じゃがで調味料の順番覚えたけど……照り焼きはまた違うき……でも……負けとうない)
アリスは慎重に調味料を量り始めた。
「えっと……醤油とみりんを同じ量……酒をちょっと……砂糖は……うち、甘めが好きやき……少し多めに……」
リンネはアリスの手元を見て言った。
「アリスさん、甘めの味が好きなんですね」
アリスは笑った。
「うん!なんか……優しい味になるき!」
リンネは少し考えてから言った。
「それ、アリスさんの“味”ですね。前回の煮込みハンバーグも、優しい味でした」
アリスは胸が熱くなった。
「リンネちゃん……覚えちゅう……?」
リンネは頷いた。
「もちろんです。アリスさんの料理、すごく好きでしたから」
アリスは顔が真っ赤になった。
「そ、そんな言われたら……なんか……照れるき……!」
壮真が二人を見て言った。
「ほんなら、二人でタレ合わせてみい。お互いの味を比べて、ひとつの照り焼きにするんや」
アリスとリンネは顔を見合わせた。
アリスは言った。
「うち、甘めが好きやけど……リンネちゃんは?」
リンネは少し考えて言った。
「私は……甘さ控えめで、香りが立つ味が好きです」
アリスは笑った。
「なんか……うちとリンネちゃん、全然違うね!」
リンネも笑った。
「でも……違うからこそ、合わせたら面白いかもしれません」
壮真は腕を組んで言った。
「そうや。料理は“違う味”が合わさって深くなる。二人の味、混ぜてみい」
アリスとリンネは配合を考えをタレを合わせた。
甘さと香りが混ざり合い、ふわっと優しい匂いが広がる。
アリスは目を輝かせた。
「なんか……めっちゃええ匂い……!」
リンネは微笑んだ。
「アリスさんの甘さと、私の香りが合わさって……すごく綺麗な味になりそうです」
アリスは胸が熱くなった。
(うち……リンネちゃんと一緒に作ると……なんか……自分の味が広がる気がする……)
壮真は言った。
「ほんなら次は焼きや。二人で相談して火加減決めてみい」
アリスとリンネは頷いた。
二人の“初めての共同作業”は、ゆっくりと、でも確実にひとつの料理へと向かっていった。




