第10話・前編『ギャル、友達に“本音”ぶつけるき』
リンネに煮込みハンバーグを食べてもらった翌日。
アリスは朝からずっと落ち着かなかった。
教室に入っても、席に座っても、ノートを開いても──胸の奥がざわざわしている。
(リンネちゃんと……一緒に料理するって言われたけど……うち、ほんまに並べるがやろか……昨日の煮込みハンバーグも、壮真にめっちゃ助けてもらったし……うち一人やったら絶対あんな味出せんかった)
授業中、先生の声が遠く聞こえる。
(リンネちゃん、包丁の持ち方も綺麗やった。火加減も、味の見極めも、全部プロみたいやった。うちは……まだまだや。このままじゃ……一緒に料理する資格ないき)
チャイムが鳴ると同時に、ミナがアリスの机にドンッと手をついた。
「アリス、今日なんか暗くない?昨日あんなに嬉しそうやったのに!」
ユズも覗き込む。
「そうそう!リンネちゃんに褒められて、めっちゃキラキラしちょったやん!」
アリスは唇を噛んだ。
「……うち、怖いがよ」
ミナとユズは同時に「え?」と声を上げた。
アリスは机に突っ伏しながら言った。
「リンネちゃんと一緒に料理するって……めっちゃ嬉しいけど……うち、まだ全然やき……昨日の煮込みハンバーグも壮真に助けてもらったし……うち一人で作ったら絶対あんな味にならん……リンネちゃんの横に立つなんて……なんか……申し訳ない気がするがよ……」
ミナはアリスの肩をぽんぽん叩いた。
「アリス、あんた真面目すぎ!ええやん、助けてもらったって!料理ってそういうもんやし!」
ユズも笑った。
「そうそう!うちらだってアリスに助けられまくりやし!アリスのハンバーグ、ほんま美味しかったで!」
アリスは首を振った。
「でも……リンネちゃんはずっと料理しゆう。うちは最近始めたばっかり。レベル違いすぎるき……このままじゃ……“アリスさんと一緒に作りたい”って言われたのに……うち、足引っ張るだけや」
ミナは机をバンッと叩いた。
「アリス!あんた、昨日リンネちゃんがなんて言ったか覚えちゅう?」
アリスは顔を上げた。
ミナは指を立てて言う。
「“アリスさんの味、もっと食べてみたいです”やで?」
ユズも続ける。
「そう!リンネちゃんはアリスの味が好きなんやって!アリスが頑張って作った味を、ちゃんと感じ取ってくれたんやって!」
アリスは胸がぎゅっとなった。
「……でも……もっと上手になりたい。リンネちゃんと並んで立つなら……今のままじゃ足りんき」
ミナはニッと笑った。
「ほんなら練習したらええやん!アリス、やる気あるんやろ?」
ユズも拳を握る。
「そうや!アリスなら絶対できるき!うちら応援するし!」
アリスは二人の顔を見て、少しだけ笑った。
「……ありがとう。うち、ほんまに……もっと上手になりたいき」
ミナが背中を押す。
「ほんなら行こ!こはるで壮真に頼んでき!」
ユズも笑う。
「“もっと教えて!”って言うたらええやん!壮真、絶対嬉しがるで!」
アリスは深呼吸した。
「……うん。行く。うち、もっと上手になりたいき。リンネちゃんと並んで立つために」
ミナとユズはハイタッチした。
「それや!アリス!」
「やっぱり、前向きなアリスが一番可愛いで!」
アリスは立ち上がった。
(うち……絶対もっと上手になるき。リンネちゃんと一緒に料理するために……うち、変わる)
アリスはこはるへ向かって歩き出した。




