第7章・後編『ギャル、初めて“誰かに食べてもらう”き(後編)』
昼休み。
アリスはお弁当箱を抱えたまま、机の上で指をそわそわ動かしていた。
「今日が本番やき。お腹キュッてなるわ」
ミナとユズがやってきた。
「アリス〜、来たで!」
「うちら、めっちゃ楽しみにしちゅうき!」
アリスは深呼吸して、お弁当箱をそっと開けた。
中には、昨日壮真と作った
生玉ねぎ入りジューシーハンバーグがきれいに詰められている。
照りのあるソースが光り、玉ねぎの白がほんのり透けて見える。
ミナとユズは同時に声を上げた。
「「うわっ!見た目からして美味しそうやん!」」
アリスは耳まで真っ赤になった。
「そんな言われたら緊張するき」
ミナが箸を取り、ハンバーグをそっと持ち上げた。
「いただきます」
アリスは息を止めた。
ミナが一口かじる。
サクッ
じゅわぁぁ
肉汁があふれ、玉ねぎの甘さがふわっと広がる。
ミナの目が大きく開いた。
「アリス、これめっちゃ美味しいで!」
ユズも慌てて食べる。
「んっ…!ジューシーやし、玉ねぎの甘さがちょうどえい。これほんまにアリスが作ったが?」
アリスは小さく頷いた。
「うん。頑張ったき」
ミナは口いっぱいに頬張りながら言った。
「美味しいどころやない!これ“ちゃんとした料理”やき!」
ユズも続ける。
「うち、正直びっくりした。アリス、料理できる子やったがやね。感動したで」
ミナは二口目をゆっくり噛みしめた。
「玉ねぎ、生やのに辛くない。むしろ甘い。ひき肉とめっちゃ合うやん」
ユズはソースを少しすくって舐めた。
「このソース、ケチャップだけやないろ?肉汁と混ざってコク出ちゅう。深い味や」
ミナはハンバーグを切りながら言った。
「中までふわふわやし、でもちゃんと肉の味する。これ初めて作ったん?」
アリスは照れながらも誇らしげに頷いた。
「壮真に教えてもろうたき。うち、めっちゃ気持ち込めた」
ユズは笑った。
「その気持ち、全部味に出ちゅうで」
ミナも頷く。
「アリス、これからも作ってや。うちら、ずっと食べるき」
アリスは涙を拭きながら笑った。
「ありがとう。うち、もっと上手になりたい。もっと色んな料理作りたい。みんなに“美味しい”って言ってもらいたいき」
放課後。
アリスがこはるに向かって歩いていると、商店街の角に新しい看板が立っていた。
《Cafe Lumière》
近日オープン!
若手料理人が作る創作ランチ!
アリスは思わず立ち止まった。
「若手料理人?」
その瞬間、店の中から制服姿の女の子が出てきた。
アリスと同じくらいの年齢。
いや──高校生。
エプロン姿で、手には仕込み用の野菜。
少女はアリスに気づき、にこっと笑った。
「こんにちは。ここ、もうすぐオープンするんです。私、ここの料理担当なんです」
アリスは目を丸くした。
「高校生なが?」
少女は胸を張った。
「はい。料理、大好きなんです。是非食べに来てください!」
アリスは背筋を伸ばした。
「うっ!うちも、今おばあちゃんの小料理屋を継ぐためにりっり料理の頑張っていますです!」
(ぎゃあああ!噛んだ!!!恥ずかしいちや!!!)
少女は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、いつか食べに来てください。同い年の料理人さん」
アリスの胸がドキッとした。
「同い年…料理人…?」
新しい刺激。
新しい目標。
そして──新しいライバル。
アリスの中で、またひとつ火が灯った。
◆生玉ねぎハンバーグのレシピ
■材料(2〜3人分)
合いびき肉……300g
玉ねぎ……1/2個(みじん切り・生のまま)
卵……1個
パン粉……1/2カップ
牛乳……大さじ2
塩……小さじ1/3
こしょう……少々
ナツメグ……少々(あれば)
サラダ油……適量
■ソース
ケチャップ……大さじ2
ウスターソース……大さじ2
みりん……大さじ1
バター……5g
■作り方
玉ねぎをみじん切りにする。
ハンバーグに入れるので、できるだけ細かく。
ボウルにひき肉・玉ねぎ・卵・パン粉・牛乳・調味料を入れる。
手早く混ぜる。
出来るだけ指先で手の平の温度が伝わらないようにする。
成形する。
手に油をつけ、空気を抜きながら小判形に。
フライパンで焼く。
中火で両面に焼き色をつけ、弱火にしてフタをして蒸し焼きに。
ソースを作る。
フライパンに残った肉汁に調味料を入れ、軽く煮詰める。
ハンバーグにソースをかけて完成。




