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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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605/611

第605話 家に戻りて

 結局よく眠れなかった満は、芝山家で朝食を食べて、小麦に家まで送られていった。


「それじゃ満くん、初詣は一緒に行こうね」


「あ、うん。送ってくれてありがとうございます、小麦さん」


「いいのいいの、恋人同士なんだし、遠慮はいらないって。それじゃあね」


 満を家の前で降ろした小麦は、颯爽と立ち去っていった。

 眠そうな顔をしながらも、笑顔で小麦を見送った満は、家の方を向いたとたんに大あくびをしてしまう。


(ああ、部屋に戻ったら寝よう……)


 そう思って玄関に手をかけた時だった。

 唐突に玄関が開いて両親が飛び出してきた。


「お帰り、満!」


「満、よく戻ってきたな」


「あ、ただいま、お父さん、お母さん」


 どうやら玄関の前で待ち構えていたらしい。いきなり出てきた両親にびっくりする満だが、眠すぎる顔で帰宅の挨拶をするものだから、両親に心配されてしまった。


「あ、朝ご飯は食べてきたから、僕、部屋で少し寝てるね」


「ああ、疲れてるんだからゆっくり休みなさい」


「東京なんて大変だったでしょうに。怒らないからしっかり休むのよ」


「うん」


 両親の反応に戸惑いつつも、満は自分の部屋に戻って荷物を置くと、布団を敷いて横になったのだった。


 どのくらい眠っただろうか。外から呼び鈴の音が聞こえた気がして、満は目を覚ます。


(インターホンが鳴ってるな……。誰か来たのかな)


 目をこすりながら起き上がり、満は部屋から出ていく。

 階段をゆっくり降りていると、誰かの話し声が聞こえてくる。


(あっ、この声は風斗か。って、香織ちゃんもいる?)


 玄関にいるのが風斗たちだと分かると、満はパチッと目を覚まして玄関へと姿を見せる。


「あっ、満」


「満くん、やっと戻ってきたんだ」


「あ、おはよ。どうしたの二人とも」


 目が覚めたばかりの満は、のんきに二人に声をかけている。


「何言ってるんだ。今は昼の二時だぞ」


「もしかして、今まで寝てたの?」


「あ、うん」


 満の言動にびっくりした二人だったが、寝てたと知ってあんぐりとしている。二人の態度を見て、満はまだ眠たそうな顔をきょとんとさせている。


「だって、東京観光してから、朝戻ってきたんだもん。しょうがないじゃないか。それで、なんで二人がうちに来てるの」


 間違っちゃいないが、恥ずかしいので小麦と一緒にいたことをバッサリ隠して事実を言い放つ満。間髪入れずに、風斗と香織が家に来ている理由を尋ねる。


「あ、いや」


「あのね、今日は満くんを労いに来たのよ。だから、一緒にどこか行こう?」


「もう、しょうがないなぁ。着替えてくるからちょっと待ってて」


 風斗はちょっと躊躇したようだが、香織はさらりと理由を話している。内容に納得をした満は、さすがに寝ていた時の服のままでは出かけられないと、服を着替えることにした。

 敷きっぱなしになっている布団を畳み、しっかりと服を着替えた満は玄関に戻ってくる。


「お待たせ、それじゃ行こうっか」


 戻ってきた満は、にっこりと笑っている。


「この笑顔は、反則だ……」


「さすが芸能人、笑顔の破壊力が半端ないわ」


 衝撃を受けている風斗と香織。その二人の反応を見た満は、どうしたんだろうと笑顔のまま首を傾げていた。


 そんなわけで、三人はいつもの通り、駅前の商店街へとやって来る。

 今日は降っていないものの、道路脇の積もった雪と年末という時期が重なってか、少し人通りはまばらになっている。


「そういえば、なんで眼鏡かけてるんだ?」


「ああ、イリスさんから変装用ってね。これ、レンズの入っていない伊達眼鏡だよ」


 満は風斗の質問に対して、眼鏡の枠の中に指を突っ込みながら答えている。


「有名人になると大変よね」


「本当だよ。アバ信で顔出しせずに有名になりたかったのに、どうしてこうなったんだろう」


「本当にな」


 満の苦笑いに、風斗と香織もつられるように困った笑いを浮かべていた。

 書店によっていつものように本を買うと、これまたいつものハンバーガーショップに寄って本のチェックを始める。


「あっ、そうだ」


「なに、香織ちゃん」


 席に座って少しすると、香織が思い出したかのように話しかけてくる。満はびっくりしたかのように反応している。


「うん、いつ言おうかと思ったんだけど、コンサートお疲れ様」


「ありがとう」


 唐突にコンサートの労いをされて、満はちょっと恥ずかしそうにお礼を言っている。


「もらったチケットで配信を見たけど、最後の方のあれは何なんだよ」


「あれね。ちょっとわけありで僕が入れさせてもらったんだ」


「あ、やっぱり? あれ、告白ソングよね?」


「えっ……」


 風斗に指摘されて正直に答えていると、香織からすかさずツッコミが飛んでくる。あまりに図星だったので、満は顔を引きつらせて固まってしまう。


「お前、配信もされてるようなコンサートでそんな大胆なことをしたのか? あんなに人の気持ちに鈍かったお前がか?」


 満の反応を見た風斗が迫ってくる。満はおめめぐるぐるになりながら、こくりと頷いている。

 首が縦に振られたのを見て、風斗と香織はそろって唖然としてしまった。


「で、どうなったのよ、満くん」


 恋バナとなると、香織が興味津々になって食いついてくる。

 香織の勢いに驚きはしたものの、満は頭の後ろを擦りながら照れた笑顔を見せる。この時の満の姿を見た二人は、どうやらすべてを察したようである。


「なんか許せないな」


「そうね。散々私たちを振り回しておいて、ね」


「なんだよう、二人とも!」


 風斗と香織の態度に、満はぷんすかと怒っている。思った通りの反応に、二人はつい笑ってしまっていた。

 いろいろと状況の変化した三人ではあるものの、根本の関係性は、どうやら変わっていないようである。この三人であるなら、今後も仲良くやっていけそうだ。

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