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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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604/611

第604話 無垢な少年と奔放な女性

 小麦の実家である芝山家。帰省ラッシュに巻き込まれてすっかり遅くなってしまった満は、小麦と一緒に家に上がることになってしまった。


「やあ、満くん、おかえり。小麦もね」


「ちょっと、パパ。娘の方がついで扱いってどういうとこなのよ」


「いやまあ、コンサートに向かう前に駅まで送っていったから、気になっていてね」


「むぅ」


 父親の言い分に、小麦はずいぶんと膨れてしまっているようである。いくつになっても子どもは子どもなのだ。

 その小麦を差し置いて、小麦の父親は満に声をかけている。


「お風呂は入れるようになっているから、さっぱりしてゆっくり休むといいよ。君の家には、明日の朝に連絡を入れて送り届けてあげるから」


「パパ、満くんを送り届けるのは私の仕事だよ。いくらパパでも譲らないからね」


 父親のいうことに対して、小麦はいちいちかみついている。どうやら反抗期のようだ。

 あまりにも必死な小麦を見て、父親はつい笑ってしまう。


「なによぅ」


「いや、なんでもないよ。時間も遅いから、二人ともお風呂に入ってさっさと寝なさい。私ももう寝るからね」


 不機嫌そうにする小麦に対して、父親ははぐらかすように答えると、満たちにも早く休むように伝えている。満が頷くと、父親は安心したように自分の部屋へと向かっていった。

 呆れた二人は、一度小麦の部屋へと移動する。

 荷物を置くと、満は小麦に伝えて先にお風呂に行ってしまう。恋人同士になったのはいいものの、やっぱり一緒にいるのはまだ恥ずかしいところがあるみたいだ。

 ちょっとのぼせた頭をすっきりさせようと、満は先にお風呂に行ったわけである。

 だが、一人でずっとゆっくりお風呂に入れるわけではなかった。


「満くん、私も入るね」


「えっ、ちょっと!?」


 そう、小麦がすぐにやってきてしまったのだ。体は女性とはいえ、意識は男性の満は大慌てである。

 とはいえ、過去に何度か一緒にお風呂は入っているということもあり、慌ててしまった満も最後は観念していた。

 ただ、温泉に入った時にはルナ・フォルモントがいたのでどうにかなっていたが、今回は家の狭いお風呂に二人っきりである。満はなんとか自制心を持とうとして、かなり緊張している。

 東京の小麦の下宿先では別々に入っていたのに、なんで今日は一緒なんだと、満は緊張を強いられている。


「満くんの反応、そうやって見てみたら、しっかり男の子なんだなぁ。ふふっ、からかいがいがありそう」


「やめて下さいよ、小麦さん。こんなこと、小麦さんのお父さんに知られたら、どんな反応をされるか……」


「パパなら多分、想定済みだと思うよ。満くんのことを信じているからこそ、何も注意しなかったんだと思う」


 満は小麦の父親のことを警戒しているようだが、小麦はまったく気にしていないようだ。

 とはいえ、小麦も良識はあるので、満のことはちゃんと考えて必要以上にプレッシャーをかけないようにしてくれたようである。

 そんなわけで、お風呂では互いに背中を流し合ったくらいで、特に何もなく無事にやり過ごせたのだった。

 お風呂を出た時には、満はほっとしたものである。だが、その安心は長く続かなかった。

 小麦の部屋に戻ると、二人は同じベッドの中に入って横になっている。


「なんで?」


 満は混乱している。


「いいじゃないの。恋人同士なら、一緒のベッドで寝たりもするもんでしょ」


「ううう……」


 恋仲になったものだからか、ちょくちょく大胆になる小麦である。お風呂では気を付けた分、ベッドでは積極的なようだ。


「何を警戒しているのかな、満くんは。私はただ、満くんと一緒に寝たいだけなんだから。変なこと考えてない?」


「な、何も考えてないよ。ただ、小麦さんとの距離が近いなって……」


 満は小麦に背中を向けながら、顔を真っ赤にしている。


「小麦さんってば、やけに積極的じゃないですか。ぼ、僕は……」


「僕は、なんなのかな、満くん」


「い、意地悪ですよ、小麦さん。僕はもう寝ますから!」


 満の方に顔を向けている小麦は、意地悪そうに声をかけている。


「ふふっ、ごめんね、満くん。予想外に遅くなって一緒に眠ることになったから、嬉しくてからかっちゃって」


「も、もう……。こういうところは、レニちゃんみたいなんですから……」


「うん、そうだね」


 顔を真っ赤にして文句を言う満のことが可愛くて、小麦はその表情をかなり緩ませている。


「満くん」


「なんですか、小麦さ……」


 小麦が呼ぶので満が反応する。しかし、その反応が終わり切らないうちに、満の頬に思ってもみなかったものが触れる。


「ふふっ、おやすみのキスだよ、満くん。それじゃ、おやすみなさい」


 満の顔からすぐに離れた小麦は、にっこりと微笑んでそのまま背中を向けるようにして眠ってしまった。

 一方の満は、小麦の唇が触れた頬に手を当てて、顔を真っ赤にしたまま固まっている。


「小麦さん……。どうしてくれるんですか、眠れなくなっちゃったじゃないですか……」


 寝ようとしていた満は、まさかの行動を取られたせいで、すっかり目がさえてしまったようである。

 小麦の演じるアバター配信者である真家レニのような奔放な行動に、満は早速振り回されてしまっていたのであった。

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