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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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598/611

第598話 コンサートの終わりに

 ルナがイリスに呼び出されてやってきたのは、関係者立ち入り区域との境目だった。


「あっ」


 そこで見かけた姿に、ルナは思わず声を上げてしまう。


「やっ、満くん。メリークリスマス」


「小麦さん……。め、メリー、クリスマス」


 そう、そこにいたのは小麦だった。どうやら今日のコンサートを見に来ていたらしい。

 実はこっそり、イリスが小麦にコンサートのチケットを贈っておいたのだ。ものすごく早い段階で。

 小麦を見たルナは、ものすごく照れくさそうにしている。なんといっても自分はアイドルの格好をしているし、小麦も小麦で、気合いを入れたのか、ここ一番の可愛い格好をしていた。

 お互いに挨拶をした二人は、直視できないのか視線をそれぞれ相手から外してしまっている。まったく、年齢のことを考えれば初々しい反応というものだ。


「ちょっと二人とも。あんまり時間が取れないから早めに終わらせて。話しづらいんなら席を外すから」


「あっ、ごめんなさい」


 イリスに言われて、ルナは思わず謝ってしまう。

 急かされたこともあり、ルナは顔をあちこち向けながら悩む。だが、こういう時にきちんとやらなければ男が廃る。

 ルナは小麦をしっかりと見つめている。目をじっと見つめられて、小麦はドキッとした表情でルナを見ている。

 とその前に、確認することを思い出したルナはイリスに質問をする。


「イリスさん、明日の僕の予定はフリーですよね?」


「いや、私に聞かれても困るんだけど……。まあ、フリーになるように努力はする」


「ありがとうございます」


 イリスからはなんともあいまいな返答があったが、イリスはルナのスケジュール管理をしているわけではないのでしょうがない。それでも、事務所の先輩として多少の融通は利かせてあげようという返事だった。

 それを確認したルナは、改めて小麦をじっと見つめる。


「小麦さん、明日は一日僕と一緒に過ごしましょう」


 その瞬間、イリスの表情はほころんでいた。


(ああ、ついに覚悟を決めるのね、満くん)


 なんとも察しのいい先輩である。

 先程のセットリスト外のソロ曲を聞いた時にも感じていたことを確信するには十分だったのだ。


「はい、私は明日はフリーにしているから、お付き合いするよ、満くん」


 小麦の方はというと、顔を赤くしたままにっこりと微笑んで了承をしている。

 だが、喜びも束の間、コツコツという足音が聞こえてくる。


「よし、話は済んだね。誰か来るみたいだから、ここは解散にしよう。明日の朝九時、私が小麦ちゃんのところまでルナちゃんを送っていくからね」


「うん、ありがとう、舞お姉ちゃん」


 まだコンサートの真っ最中なのである。こそこそとファンと会っていることを知られると面倒になるので、その場は最低限の約束だけして、ルナと小麦はその場を立ち去ったのだった。


 その後、無事にコンサートが終わる。

 なんとか二十二時までにはすべての予定が終わったのだが、最後の全員集合の挨拶ではルナは顔を出せなかった。二十二時を過ぎる危険性があったからしょうがない。

 コンサートが終われば服を着替えて、近くに予約してあった居酒屋で、芸能事務所の所属アイドルと演奏を担当してくれたバンドとスタッフの一部が集まっての打ち上げが行われた。

 周りは大人ばかりなので、それは食えや飲めやの大騒ぎ。ルナは唯一の未成年として参加していたので、なんとも肩身の狭い思いをしていた。

 盛り上がりも最高潮に達した頃、時間は日付が変わる頃になる。


「それは、私はルナちゃんと一緒に失礼をさせていただきますね」


「おい、イリス。付き合い悪いぞ」


「そうだぜ、まだ十二時じゃねえか。もっと騒ごうじゃないかよ」


 ハロルドたちが絡んでくるものの、イリスはきっぱりと断っている。


「マネージャーがいるとはいっても、私はこの子の保護者みたいなものなので、ちゃんと面倒を見てあげないといけないんですよ」


「わわっ、イリスさん、何を?!」


 イリスがルナをぎゅっと抱き締めて頬ずりを始めたものだから、ルナは目を白黒させて慌てている。


「ははっ、デビュー前から目をかけていたから、すっかりお母さんしちゃってんな」


「しょうがない。今日のところはルナに免じて見逃してやるよ。また一緒に飲もうぜ」


「ええ、またの機会に。では、社長。失礼させていただきます」


「おう、お疲れ様!」


 すっかりでき上がってしまっている会場を横目に、イリスはルナを連れて居酒屋を後にしている。

 居酒屋を後にしたルナは、イリスの方を見て何かをしきりに気にしているようだ。


「あの、なんだかすみません。僕のせいで」


「気にしなくてもいいわよ。ああなっちゃうと止められないから、巻き込まれる前に脱出するのが一番なの」


 ルナは申し訳なさそうにしているものの、イリスは清々しいまでの笑顔を見せている。よっぽど長居をしたくなったようだ。


「それよりも明日よ。今日は私の家に泊めてあげるから、小麦ちゃんとのデートを楽しんでいらっしゃい」


「で、で、デートだなんて、そんな……」


 イリスにはっきりデートと口走られてしまい、ルナは恥ずかしさのあまり、真っ赤になってしまっている。耳まで真っ赤なので相当である。

 ちなみに、ルナが持ってきた荷物は環がキマから預かっている。なので、このままイリスの家に向かって問題ない。

 そんなわけで、イリスの部屋にお泊りすることになったルナは、シャワーを浴びてすっきりした後、疲れからかぐっすり眠りについてしまったのだった。

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