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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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595/611

第595話 当日・コンサート前

「おはようございます」


 ルナは会場入りをする。

 時間は朝の八時だ。


「おはよう、ルナちゃん」


「おはようございます、イリスさん」


 会場入りをして最初に声をかけてきたのは、やはりイリスだった。イリスはなにかとルナには目をかけているので、当然といえば当然だろう。

 最初は憑依していたルナ・フォルモントに対して、退治屋として敵意を向けていた。だが、ルナ(満)に才能を感じ、何度となく自分の仕事を手伝わせ、最後には事務所に引き込んだのである。


「その子が、イリスが引き込んだ子?」


「ええ、そうよ」


「ふーん、……可愛いじゃん。今日はよろしくな」


「はい、よろしくお願いします、先輩!」


 同じ事務所に所属する女性アイドルが声をかけてきた。ルナは精一杯の気持ちで返事をしている。

 あまりにも純粋な態度に、先輩アイドルは顔を赤くして驚いている。


「い、今じゃ珍しい、ものすごく素直な子じゃん。はぁ、もっと早くお知り合いになりたかったぜ」


 なんとも男性っぽい口調で話す女性アイドルだ。だが、その赤くなる様子はなんとも可愛らしいもので、ルナはにこにこと笑顔を見せ続けている。


「本当にな。一緒の事務所なんだから、もっと同じ仕事をしてもいいだろうに」


「ダメよ。ルナちゃんはまだ高校生。学業が優先なんだから」


「そうか。なら、もうしばらくは我慢か。まっ、今日はどんなものか見させてもらうぜ」


 ひょっこり顔を出した男性アイドルは、一方的に話すだけ話して姿を消してしまった。なんだったのだろうか。

 だが、その直後に全員集められたので、すぐに再び顔を合わせることになった。

 あとは夜の本番開始まで、時間の許す限りの練習だった。なにせ、ルナが現地でパフォーマンスをするのはこれが初めてなのだから。一部のアイドルからは、新人のくせにヘマしやがったら許さないぞというような視線が向けらていた。

 が、その心配もなんのその。ルナは全体曲のリハーサルも一発で乗り切っていた。


 時刻は十七時。

 開場は十八時半、開演は十九時。本番までは泣いても笑っても二時間を切った。

 ルナの出番は、大先輩がオープニングを飾ったその次だ。そして、二曲連続で披露し、あとは二十一時半頃に迎える全体曲。アンコールなどを含めれば、大体三時間くらいのスケジュールとなっている。

 そのため、このタイミングで一度最終チェックを打ち切り、食事を行う。

 ルナの部屋にも仕出しのお弁当が届いており、どうやら個別に食べることになっているようである。同じ事務所の所属とはいえどライバルなのだ。仕方のない処置なのかもしれない。

 一人きりで食べるのかと思ったその時だった。


「ルナちゃん、一緒に食べましょうか」


「イリスさん?!」


 ルナを芸能界に引き込んだ張本人であるイリスがひょっこりと顔を出したのだ。ちなみにマネージャーである環も一緒のようである。


「いやぁ、ルナちゃんをこっちに引きずり込んだ責任があるから、気になってきちゃったのよね」


「そ、そうなんですか。わざわざありがとうございます」


 お弁当を手に取ったまま、ルナはイリスに頭を下げている。そのようすをみながら、イリスはルナの正面に座っている。


「お礼を言うのはこっちの方かな。ルナちゃんのデビューが決まってからというもの、うちの事務所はにぎわってね。この会場だって、急きょ半年前に使用が決まったのよね。普通なら無理よ」


「そ、そうなんですか」


「うん、そうよ。ルナちゃんのおかげでこんな会場を押さえるだけの資金力と行動力が、うちの事務所に備わったんだからね。本当に、本当にありがとう、ルナちゃん」


 笑顔を見せた上で、イリスが頭を下げている。予想外の行動に、ルナはあたふたと慌ててしまっている。なにせ自分は今年デビューしたばかりの新人なのだ。そんな新人が先輩にお礼を言われるだなんておこがましいと考えているからこそ、慌てふためている。


「おっ、イリスじゃん。新人ちゃんに対して抜け駆けかい」


「は、ハロルド。違うわよ。後輩の知り合いだから、心配しているというかなんというか」


 急に別の人物が入ってくる。その時に、申し訳程度のノックをしていた。

 ハロルドと呼ばれたのは、朝に挨拶してきた男性的なしゃべり方をする女性だった。


「まっ、構わねえよ。あたいも混ぜてくんな。とりあえずさっさと食っちまおうぜ。楽しくしゃべりながら食った方が、緊張も和らぐだろうからよ」


「はい、よろしくお願いします」


「はっ、本当に礼儀正しいな。あたいはハロルド。今日のコンサート、成功させようぜ」


「はい!」


 ルナが笑顔を浮かべて大きな声で返事をすると、イリスとハロルドは顔を見合わせている。


「まったく、この状況でこの笑顔とは。こいつは大物になるぞ、きっと」


「ええ、この子の見出した可能性は、間違ってなかったわ」


 雑談をするはいいものの、早く食べないとコンサートに影響が出かねない。三人は仕出しのお弁当を食べて、コンサート本番に備えることにする。

 食べ終わってしっかりと後処理をすると、いよいよ本番の衣装に着替える。

 時間は止まらない。

 本番まで残り一時間。

 これまでいろいろなことを経験してきたルナではあるが、人生最大の緊張を、今ここで迎えているのである。

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