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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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594/611

第594話 芸能事務所に到着して

 電車を乗り継ぎ、満もとい光月ルナとキマは東京都内に到着する。

 地元ではかなり降っていた雪も、こちらではまったく降っていなくて驚かされる。


「そういえば、配管工レーシングの世界大会の時も、雪は降ってませんでしたね」


「間に山がありますからな」


 ルナが驚いていると、キマは冷静に答えている。

 待ち合わせとなる駅に到着した二人は、どうにかこうにか駅の出口に到着する。ルナの地元は、せいぜい多くても三か所あるかどうかだ。とかいは出入り口が多くて、本当に迷ってしまう。


「おお、待ちわびていたよ。さぁ、事務所に向かおうか。さすがにホテル代はケチらせてもらうが、うちの事務所の中でも一応ひと通りの設備は整っているからな」


「あっ、分かりました。数日間、お世話になります」


 出口で待っていた芸能事務所の社長と挨拶を交わすと、ルナたちは芸能事務所に向かう。

 満がルナとして活動するようになってからというもの、事務所は少し経営が持ち直したらしい。とはいえ、今もまだ事務所の外観はなんとも小汚い感じである。


「な、中は大丈夫、だからな?」


 ボケっとした表情を見せるルナを見て、社長は慌てて言い繕っている。思ってもみなかった反応なのだろう。

 社長の慌てたような反応を見て、ルナは思わずくすっと笑ってしまっている。


「まったく、新人だというのに大した反応をするな」


 ルナの方を見ながら、社長は困った反応をしている。だが、同時になんとなく成功を確信したようである。


「明日は朝から最終リハだ。今日は早く休んで、明日に備えなさい」


「はい」


 社長に連れられて、ルナは事務所の中へと足を踏み入れる。

 階段を昇って部屋に案内されたルナは、その設備の整い具合にびっくりしている。


「ここが休憩室だ。本来は仮眠用だが、今日は君の寝室となっている。自分の部屋のように使ってくれていいからな。お風呂はないがシャワーはある。休憩室を出て左に進んだところで、トイレと向かい合っているから分かるだろう」


「はい、ありがとうございます」


 シャワーとトイレの場所を教えてもらって、ルナは素直にお礼を言っている。あまりにも素直な反応に、社長は照れくさそうに小さくせき込んでいた。


「ああ、男の方は女子とは反対側だ。くれぐれもマネージャーは担当アイドルに手を出すんじゃないぞ」


「心得ておりますとも」


 社長の注意に、キマは淡々と答えている。


「あっ、社長さん」


「うん、なんだ?」


 説明を終えたので去ろうとする社長を、ルナは呼び止める。


「僕が頼んでおいたシークレットの準備は、大丈夫でしょうか」


「ああ、心配するな。こんな小さな規模ではあるが、アイドルの要望にはきちんと応えるさ。君は心配しないで明日に集中していればいい」


「はい、ありがとうございます」


 社長からの返答を聞いて、ルナは安心したようである。

 食事は途中のコンビニで買ってきたお弁当を食べて、シャワーを浴びたらその日はすぐに休むことにした。なんといっても、明日はコンサート当日だ。しかも、事務所のアイドルたちとの初顔合わせである。

 仮眠室に布団を敷いたルナは、そのことに強い緊張感を抱きながらも、いつものようにぐっすりと眠りについた。


 翌日、ルナは目を覚ます。

 部屋の中は真っ暗だ。


「えーっと、スマホスマホッと……」


 眠い目をこすりながら、ルナは部屋の中に置いたはずのスマートフォンを探す。

 吸血鬼の力があれば、夜目も余裕で利くはずなのだが、寝起きで寝ぼけているので手さぐりになっている。


(あっ、あった)


 手にカツンと平べったいものがぶつかる。スマートフォンが見つかったようで、ルナは拾い上げて軽く手を触れる。ロック画面が表示され、時間が映し出される。


「まだ五時前かぁ。早く起きすぎちゃったな」


 いつもなら、再び寝てしまうところだが、今日はそういうわけにはいかない。

 今日からは冬休みに突入するし、なんといってもルナが所属している芸能事務所のアイドルが集まってのコンサートの日なのだから。


(よし、体を起こそう)


 ルナは布団から出て、しっかりと顔を洗いに行く。

 十二月の水はとにかく冷たい。顔を洗うと、シャキッと目が覚めてしまう。


「よーし、気合い入ってきたぞ!」


 むんと両手を握りしめたルナは、再び仮眠室へと移動して、服を着替える。

 そういえば、今日着る予定の衣装をまだ実物を見ていない。一応、衣装自体は画像を送ってもらって見ている。


「おや、ルナ。もう目が覚めていたのか」


「あっ、社長。おはようございます」


「うむ。朝から気合いが入っていてよろしい。どうだ、早いが朝飯でも食いに行くか。君だけ説明しないといけないことが多いんでね」


「はい、そうさせていただきます。僕はコンサートを成功させたいですから」


 社長の言葉に、ルナは驚くほど素直に反応している。これには社長もにっこりである。

 どこからともなく姿を現したキマも合流し、ルナは社長と一緒に近くのファミリーレストランへと向かっていく。

 今日は大切な一日だ。ルナはこれまでの人生で一番気合いが入っている。


 それにしても、ルナの言っていたシークレットとは一体何なのだろうか。

 そのすべては、今日のコンサートで明らかになるのである。

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