↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
591/611

第591話 できる親友

 高校二年生の二学期も、あと一週間で終わり。

 来年は大学受験なので、人によっては少しずつ準備を始めている時期だ。

 満たちも、もう真剣に進路について考える時期だというのに、今日も満は授業が終わると一目散に帰ってしまっていた。


「最近、満くんの付き合いが悪いわね」


 満を誘って帰ろうとしていた香織が、行き場を失った手を遊ばせながら、ぽつりと呟いている。


「あれっ、花宮は聞いてないのか」


「えっ、何を?」


 後ろからひょっこり現れた風斗に、香織はびっくりしてしまっている。それだけ、満に帰られてしまったことにショックを受けていたのだろう。

 とはいえ、香織は結構冷静だった。

 風斗の言い分に、何のことかと詰め寄っている。


「なんだ、本当に何も聞いてないんだな」


「どういうことよ。教えなさいよ」


「あ、ああ……」


 香織が迫ると、風斗はちょっと困ったような顔をしている。


(満は何も言ってなかったけど、花宮が知らないってことは、俺が言っていいんだかなぁ……)


 てっきり満は香織にも教えていると思ったので、風斗はどうしようかと迷っているようである。

 しかし、目の前では香織がものすごい顔で風斗を見つめており、段々とその圧力が強められている。

 いくら幼馴染みとはいえども、その圧力の強さに風斗は耐えられない。


「分かった分かった。何を言われたのか教えてやるから、とにかく離れてくれ。変な誤解はされたくない」


「誤解って何よ」


 風斗は観念したものの、余計なひと言でさらに香織を怒らせていた。

 結果、学校帰りに寄ったいつものファーストフード店でおごらされる羽目になってしまった。


「いつものより豪華なやつを頼むなよな……」


「人の金で食べる食事はおいしいのよね。それはそうと、文句言わないの」


 ほくほくとした笑顔の香織に対して、風斗は愚痴をこぼしている。


「まったく、アバ信で稼いでいるくせに、なんで俺におごらせるんだ……」


「それはそれ、これはこれ。失礼をしたら謝罪は当然でしょう」


「ぐぬぬぬ……」


 失礼をした覚えはないのだが、なぜかまったく反論できない風斗である。

 とはいえ、これ以上険悪な雰囲気にしても仕方ないので、風斗はとりあえず落ち着くことにした。


「で、満くんは何を隠しているのかしら」


 席に着いた香織は、風斗にストレートな質問をぶつけている。


「いや、俺だって花宮に話してないとは思ってなかったんだよ。あいつ、妙なところで怖気づいたな?」


 香織に聞かれて困る風斗ではあったが、もしやと思ってあごに手を当てながら苦い表情を浮かべている。

 なかなか話そうとしない風斗に対して、香織は不満を募らせていく。


「どういうことなのか、早く教えなさいよね」


「ああ、分かった分かった。ストローを取り出して振り回すなよ」


「意地悪の罰よ」


「あのなぁ……」


 いつもならやりそうにないことのオンパレードで、風斗もすっかり参っているようである。


「あいつは知られたくなかったとは思うんだが、お前にだから話そうじゃないか」


「うん、早く」


 まだもったいぶる風斗に、香織は真顔で急かす。

 これ以上じらすのは確かに意地悪かと思った風斗は、いよいよ香織に満が隠していたことを教える。


「クリスマスの日にコンサート? ルナちゃんの状態で?」


「ああ。それで、この一か月ずっと練習してるんだよ。学校があるから、他のメンバーと合わせられないってことで、一人でずーっとな」


「そっかぁ、アイドルになったものね。で、そのコンサートって、東京?」


「そうだよ」


「うわぁ、遠いなぁ……。知ってたらチケット買うのに」


 満が光月ルナとしてコンサートに出ると聞いた香織は、本気でチケットを購入しようと考えたようだ。だが、会場までの遠さがネックである。ブイキャスとしての活動もあるので、諦めざるを得ないようだ。


「まぁ、もう販売終わっちまってるからな。当日販売もあるだろうが、場所が場所だからな」


「うう、諦めるしかなさそう……」


 悔しそうにしながらも、香織はハンバーガーをむしゃりと食べている。半ばやけ食いである。


「まったく、振られたっていうのに、満のことは諦めてないんだな」


「それはそれ、これはこれよ。友だちとして応援するのは、当たり前の話でしょ?」


「確かに、そうだな」


 香織の言葉に納得する風斗である。

 それをいえば、風斗だって思いっきり振られた後である。とてもじゃないが人のことを言えた状態ではないのだ。納得しかないのである。

 風斗は少しため息をついて、椅子にもたれかかる。


「あいつのことだ。近いうちに何かしてくるだろうな」


「自分への好意には鈍いけれど、満くん、気遣いは普通にできるものね。だから、余計に勘違いされるところがあるんだけど」


「そういうなよ。とりあえず、俺たちにできることは、あいつの参加するコンサートが無事に成功することだけだな」


「そうね」


 話を終えた二人は、残っているハンバーガーセットをすべて平らげると、そのまま帰宅していく。

 満が何かアクションを起こしてくるまで、ひとまず黙っていよう。そう心に決めた二人なのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。