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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊


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586/611

第586話 最終日の満

 香織と二人で買い物を楽しんだ満は、門限二十分前にはホテルに戻ってきた。あとは部屋に戻るだけなのだが、次から次へと人に出くわしてしまい、その度に魅了を発動してどうにかやり過ごす。

 部屋に戻ってきた満は、急いで元の姿に戻って服を着替える。チャイナドレスと肌着の類をどうやって隠すかと考えたが、そこは着替えの入っているリュックの中に押し込んでやり過ごすことにした。

 どうにか体操服に着替えた満は、ようやく安心してベッドに転がる。とはいえ、リュックの奥底には女性用の服が眠っているので、完全には安心できないのだが。

 それでも、香織のことをどうにか解決できたので、まあよしとしようと思った満である。

 それにしても、ルナ・フォルモントに憑依されて身につけた能力がことごとく役に立った。最初はまったくコントロールできなくて大変だった能力も、自分の意思できちんと使えるようになると心強いというもの。


(でも、悪用だけはしないように気をつけないとなぁ……。今回だって、魅了でいろいろやらかしちゃったもん。はぁ……)


 その一方で、今回は香織からの告白に答えるためとはいえど、修学旅行中に変身をして、さらには魅了の能力を使いまくってしまった。自分のメンタルの弱さとやらかしに、今は後悔しているらしい。

 いろいろと考え込んでいたせいで、結局この日は、部屋で一番最後に眠りにつくことになってしまった。


 翌日、実質修学旅行の最終日は、長崎市内の観光名所を巡る。その移動の際には、とにかく坂の多さに驚かされた。


(これだけ坂が多いと、ルナさんみたいに空を飛べれば便利だろうなぁ……)


 移動のバスの中で、窓の外を見ながら満はそんなことをぼんやりと思ってしまう。ルナ・フォルモントが空を飛べることは知っているので、吸血鬼化した自分も同じように飛べるのではと思いいたってしまったようだ。

 次の瞬間、我に返った満はぶんぶんと首を横に振っている。


「おい、どうしたんだよ、満」


「な、なんでもないよ、風斗」


 親友の突然の行動に驚いた風斗に、満は慌てた様子で答えている。あまりにも目を真ん丸とさせていたものだから、しばらく風斗は満の様子をじっと見つめてしまっていた。


(危ない危ない。なんで自分から人外化しようとしてるんだ、僕は……)


 不意に思ってしまったことに、満は恥ずかしそうに反省している。

 普通の人間だと思っていても、心のどこかではルナ・フォルモントに侵食されているのかもしれない。やはり、二年ちょっとの同居生活の影響は大きかった。


 長崎市内の観光の際、満はとある場所で立ち止まってしまった。


「えっと……」


「どうした、満。って、ああそっか……」


 急に立ち止まった満に声をかける風斗だったが、目の前にある建物を見て納得がいっていた。

 目の前にあるのは教会だ。

 満の半分は吸血鬼であるため、教会に一瞬拒否反応が出たのである。


「大丈夫か?」


「うん、大丈夫。男の時は人間だから、平気だよ」


「ならいいんだけどな」


 心配して肩を叩いてくる風斗に対して、満は笑顔で答えていた。

 見学のために問題の建物の中に入るものの、満はまったく平気だった。影響を受ける原因となったルナ・フォルモントも十字架とか銀とかもまったく平気なので、満もまったく問題なかったようだ。杞憂だったようである。

 男女別に移動しているので、香織もその様子は遠巻きに見ていた。吸血鬼のことはもちろん知っているので、こちらも心配していたようである。しかし、無事に入れている様子を見て、こちらもほっとしていたようだ。


 あっという間にすべての旅程が終了し、いよいよ地元に向けて戻ることになる。

 帰りのバスや新幹線の中は、この五日間の思い出話でいろいろと盛り上がっていたようである。

 さすがに他のクラスメイトの視線のある中では、満に対して香織が接触してくることはなかった。ちなみに満は、風斗に守られるように窓際の席に座って、ずっと風斗と話をしていた。


「ねえ、風斗」


「なんだ、満」


 新大阪までの新幹線の中で、満は風斗に話しかける。実は、この旅行中で引っかかったことがあったからだ。


「テーマパークで、僕と香織ちゃんを二人にした時があったでしょ」


「ああ、あったな。それがどうしたんだよ」


「あれ、風斗がわざと僕たちを二人きりにしたんだよね? 忘れ物なんて嘘でさ」


 この質問を受けた時、風斗はぎょっとした顔で固まっていた。


「やっぱりそうなんだね。ずっと引っかかってたんだよ」


 満がちょっと膨れている。その顔を見ていた風斗は、頬をぽりぽりとかいている。


「まさか気づかれるとはなぁ。……そうだよ。花宮のためにわざとやったんだ。悪かったな、満」


「ううん、怒ってはいないよ。僕が香織ちゃんの気持ちに気が付かないから、風斗が頑張ってくれたのは分かったから」


 風斗が言い訳をして謝っているが、満は本当に気にしていないようだ。自分の鈍感さでどれだけ迷惑をかけてきたかを自覚できたからだ。


「僕も、自分の気持ちで返事はしたよ。ごめんね、風斗」


 満は、申し訳ない表情をして風斗に言葉をかける。その表情を見た風斗は、香織の告白の結果を悟ったようだ。


「そっか……。ってことは、やっぱりお前の好きな相手は、小麦さんか」


「なっ?!」


 唐突に出てきた小麦の名前に、満は大声で驚いてしまう。

 聞き返そうとする満だったが、担任の教師たちが回ってきて、そろそろ降りる準備をするように通達を始めている。

 どうやら、新大阪に到着するらしい。

 仕方がないので、話はここで打ち切り。改めて、別の機会に話をすることになったのだった。

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