変わり変わる戦場
ゆゆゆいサ終の日なので、明日は何もする気がないと思って今日投稿します。
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名前:瑤華・トワイライトムーン
種族:吸血鬼族
Lv:111
適性:観測不可
異能:解放条件未達成
筋力:99950
敏捷:100000
耐久:35785
持久:87995
魔力:100000
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「色々聞きたいけど……何この数値…?」
勇者の能力の1つ、他人のステータスを見る力で瑤華のステータスを盗み見たユイナは、思わず呟いた。
いつもなら瑤華のステータスを盗み見るなんて真似は決してしないのだが、どうにも気になって見てみたらコレだ。
「勇者のステータスなんて軽く捻り潰せるよ、こんなの……」
歩く厄災……そう言っても過言じゃない瑤華に近付く者は居ない、いや……2人居た。
「さっきはよくもっ!」
「殺してやるっ!」
先程瑤華が叩きのめしたリリカとユユコが、死角から瑤華を挟撃する。
………が、
「奇襲するのに声を出すな、目立ちたがり」
「がっ?」
「はひっ?」
そもそも気配で察知していた瑤華は、一度刀を手放し、2人の剣を持つ手を掴んで軌道を変えた。結果、互いに互いの腹部を突き刺す事になった2人は、一瞬の困惑の後に絶叫した。
「イダッ、ああ抜いて!早く抜いでぇ!!!」
「ばっ、動くな馬鹿!傷が──」
痛みに藻掻く度に相手の傷口が広がる、それによって相手も自分の傷口を広げる……悪循環だ。
瑤華は無表情のまま2人を引き剥がし、次の魔法を放つ。
「«黒天球・蝕»」
先程と同じ魔法……に、見せ掛けたより高位の魔法が2人の急所を避けて躰を蜂の巣にした。
瑤華は敢えて追撃せず、2人に治癒魔法を使う余裕を与えた。
「……な、なんれぇ!???」
「きず、なおらないじゃん!!!」
見ている事しか出来なかった者達は、さっきの魔法に回復阻害が付与されている事に気付けた。
しかし当人達はパニック状態、藻掻き続けて無駄に血を流している。
「嫌、いやぁぁぁあぁ!!」
「ごろじで!ばやぐごろじで!!!」
「……そこで死ぬまで這い蹲ってろ」
◇◇◇◇
「……助けてあげないんだ、可哀想に」
「…………」
「マッチポンプが……」
ダルモンの悪態も、最初ほどの勢いは無い。
言われなくても、次の標的が自分である事くらい彼も理解っている。何より恐ろしいのは、瑤華に一切の油断も慢心も無いこと。単純に自分より強い上に付け入る隙が無い……ダルモンが本気で死を覚悟した、その時だった。
「«ブラスター»」
「ッ!?」
瑤華の頭上から降り注ぐ光柱、咄嗟に飛び退いた瑤華はぐらつく視界をどうにか立て直して離れた場所に着地した。
幾らステータスが強化されていても、その前にもう何度も限界を迎えた躰が負荷に悲鳴を上げ始めた。
「……何をしている?国を護る聖十二騎士が挙ってこのザマか?」
「…………チッ、今出てこないでよッ!」
復讐に固執出来ないと判断した瑤華はすぐさまダルモンを殺そうとした……が、またも光柱が行く手を阻む。
「瑤華ッ!」
「逃げてユイナ!今の私じゃ──」
一瞬の隙を突いて、上空から降りてきた人影が勢いそのまま瑤華を襲った。ギリギリで受け流し、ユイナの所まで移動した瑤華だが……既に負っていた傷がその呼吸を乱す。
「素晴らしい……一目で理解る洗練された剣捌き……敬意を表するぞ」
「ッ……それはどうも………で?序列2位が何の用?」
そう……瑤華が対峙する男こそが、王国の第3王子にして聖十二騎士副団長、ギルドレッド・v・イースタリア。
第3王子にして王位継承権は7番目、戦い強くなる事にしか興味の無いまさに戦闘狂だ。
「なに、部下が揃って革命軍の討伐に出たとは聞いていたが帰りが遅くてな。様子を見に来た訳だ」
「なら、そいつ等連れて帰ってくれない?」
「そうだな……本来なら小娘1人に大きく遅れを取った阿呆共は除籍して然るべきだ。帰って早急に後任を選出するのが優先されるだろう……だが、俺はお前に俄然興味が湧いた!」
再び瑤華に斬り掛るギルドレッド。
彼は瑤華にとって天敵とも言える。何故なら──
「«戦士の死合わせ»ッ!」
「憑依が──ガッ!!」
彼のアーツは自分が戦っている相手(個人)に対して、絶対的な魔力行使の禁止デバフを掛ける事が出来る。通常の魔法は勿論のこと、アーツや今の瑤華のように«憑依»する事すら出来ない。単純な身体能力のみで戦わざるを得ないのだ。
「はははっ!凄いぞ、それ程の傷を負い、ステータスが下がったばかりだろうに切っ先がブレない!もっと俺を楽しませろッ!!」
重ねて、憑依が解かれた事で瑤華の躰には皺寄せが行った。
必死にギルドレッドの猛攻に対応しているが、それはもうユイナを殺させないという執念が可能にしているモノだ。
「(ごめんユイナ……お願いだから逃げて…)」
◇◇◇◇
「……困ったね、やっぱりお姫様は助けられる立場が好きみたいだね」
「皮肉のつもりか?」
「さぁね?」
「ムキになんなよロイセンツ……それに勇者、お前この状況でアイツの助けに行けると思ってんの?」
悔しい事に、ダルモンの言う通りだ。
ユイナの魔力は最高位魔法を1回撃つのが限界。
でも逆に考えれば……最高位魔法を撃てるくらいには魔力が残っているという事でもある。
「悪いけど、すぐに終わらせるよッ!」
「貴様まさか──」
«共鳴»は便利だね、最高位魔法の詠唱省略。そのやり方も感覚的にユイナに伝わってる。
「«夜闇を照らす大花火»ッ!!」
爆炎が辺りを包み込んだ。
奴等に防御の余地は無かった……強引だが、ユイナは勝ちを確信した。
……尤もそれは、魔力切れ目前の朦朧とした思考で導き出した、根拠の無い確信なのだが。
「行かせねぇよ」
「──は?」
振り向いた瞬間首を絞められて、剣を持っていた手も封じられた。そこに居たのは、今さっき大爆発に巻き込まれた筈のダルモン。
抵抗しようにも、今のユイナでは何も出来ない。
「俺が最初から本体で来てると思ったか?」
「がっ…離せ、このっ…!」
「安心しろ、ルカもロイセンツも死んでねぇ……助けてやるのは癪だが、生きて惨めな思いをして貰いてぇからな…」
煙が晴れると、消し炭と化した分身とその奥で気絶しているサルバードと月海が倒れていた。
ダルモンが無傷なのは、さっきまでの彼がそもそも分身で、本体は少し離れた場所から様子を窺っていたからだ。
「安心しろよ、殺しはしねぇ……あのバケモンを怒らせたくねぇからな」
「ッ…」
「代わりに、勇者の力は貰うぜ……«絶対命令権»ッ!」
瑤華、ごめんね……。
口に出したのを最後に、ユイナの意識は完全に途絶えた。
◇◇◇◇
「……」
「もう終わりか?他愛無いな」
「………うっさい……」
瑤華は両腕を斬り落とされ、膝を着いて動かない。
もう傷を回復する余力も、初級魔法を放つ魔力も残っていない。
「仲間は逃がせた……とでも思っているのか?」
「……」
「…………つまらんな。お前なら存分に楽しめると思ったのだが──さらばだ」
瑤華の首を刎ねようと振り切られたギルドレッドの剣。
瑤華は為す術無く────と見せかけて紙一重でそれを躱した。後ろにつんのめった事で膝が浮き爪先立ちになった瞬間、思いっ切り地面を蹴る。
喉笛を噛み千切ろうとした瑤華だったが、ギルドレッドも王国2位の実力者だ。振り切った剣を強引に引き戻して瑤華の進路を塞いだ。
しかし一瞬間に合わずに、手首の腱を噛み千切られてしまった。地面に叩き付けられ、無様に転がる瑤華。そんな彼女を、ギルドレッドは再び嬉々とした表情で見詰める。
「素晴らしい!俺とした事が見事に罠に嵌ったぞ!敢えて負傷して油断を誘い、最も効果的なタイミングで隙を突く……凄まじい執念だ、ここで殺すのは実に惜しい!」
「……」
「そんな顔をするな、俺はお前を好ましく思うぞ?…そうだ、お前は俺が貰う。お前が俺の子を成せば最強の剣士となるだろう!!!!」
今度こそ油断も隙も無いギルドレッドが、瑤華を拘束しようと接近する。
せめて、自分が革命軍の足手纏いにならないようにと、瑤華が自分の舌を噛もうとした…その時──
「«デッドリィ・レーザー»」
「ほぅ?」
魔法に気付いたギルドレッドが飛び退くと同時に、瑤華も何者かに抱えられてその場から引き剥がされた。
「──ペネット…さま?」
「遅くなっタ、瑤華のお陰で皆を拠点に運べたゾ!」
「ダルモンは取り逃しましたが、ユイナさんは回収出来ました。今から2人を«転移»させます」
「マリア様…」
そう言ってユイナを抱えさせた2人と一瞬目が合う。
その表情を瑤華は知っている。だから必死に、声が上手く出せない代わりに首を振るも───2人は困った様に笑うだけだった。




