アナタの為に用意した、蹂躙という名のダンスホール
先週は二次創作に挑戦してたんですが、公式がとんでも設定をを出してきた事で書き直しになりました。
モチベが保てません。
魔物との戦闘は極力避けて、私は獣道すらない山の中を迷宮への最短ルートで走っていた。
訓練はかなりしていたから、木々を伝って多少の障害は物ともせずに先に進める。
……だけど、私の足取りは重くなる一方だった。
迷宮に近付くほど濃くなる敵の気配……その所為で私は呼吸すら上手く出来なくなりそう。
「ハァ…ッ!あれは」
何人か知ってる顔が、こっちに向かって来る。
間違い無くクラスメイトなんだけど、全員揃って恐怖に満ちた顔をしてる。
「いやぁ!たす、助けでぇ!!」
「状況は?他の皆は?」
「お願い助けて、皆が食べられて…」
逃げて来た2人は辿々しい口調だったけど、多分他の人達が手遅れな事は理解った。
「今は街の方も危ないから、隠れられそうな場所を見付け、て……」
伝えようと思った事は、最後まで言えなかった。
2人の足元に、黒い何かが纏わり付いていたから。
異常に恐怖した2人に気を取られて全く気付かなかった。
とにかく駄目な気がして慌てて、奥の方まで続くソレを斬ろうとした……その瞬間だった。
2人が宙吊りの状態で上に飛び上がって……そのまま空中で頭蓋同士が接触。
鈍い音と共に脳髄液やミンチになった脳本体を撒き散らして死んだ。
「……ごめんなさい」
私は先に進んだ、進むしかなかった。
宛ら誘蛾灯に誘われる羽虫のようだけど、逃げるという選択肢は無いから。
「……なにこれ」
進んだ先の光景にそれしか言えない。
だって、元々迷宮の入口だった場所にあるのは死体の山。
しかもその全てがひしゃげていて、握り潰された挙句溶かされたような傷口が見えた。
うちいくつかは磔にされて、全身が黒い人型の何かが楽しそうに内臓を取り出して遊んでいた。
「«壱閃延太刀»」
ソレに向かって、私は延太刀を放った。
狙い違わず首を刎ねて頭が地面に落ちたけど、その程度で安心なんて出来なかった。
手応えが無さすぎる。
──ボコォ…。
そんな音を出しながら、背中から2本の腕が生えた。
異様に細くて、関節から関節までの間が異様に長い腕。
それが落ちた頭部を掴むと、掴まれた所から溶けるように消えて、代わりにブクブクと頭が再生される。
再生を終えて振り向いたソレの顔は……酷くユイナに似ていた。
「最悪……」
認める、私はユイナが大好きだ。
そんな相手と似てる敵と戦うのは、かなり辛い。
こんなに心を殺して戦わなきゃいけないのは正直久し振りで、まだ少し動揺から立ち直れてない。
それでもやらなきゃいけない。
だって……
「そんな理由で負けたら、誰にも示しが付かないっ!」
地面を蹴って、一気に距離を詰める。
«月夜魅»は抜かない、«ルナティック・ブレイヴ»の方がステータスの上昇値は大きいから。
アーツを発動させた私の今のステータスは……
────────
名前:瑤華・トワイライトムーン
種族:吸血鬼族
Lv:103
適性:闇・氷
異能:«ルナティック・ブレイヴ» →発動中
筋力:205500(×10補正)
敏捷:402500(×10補正)
耐久:101250(×10補正)
持久:250250(×10補正)
魔力:310000(×10補正)
────────
……ユイナとすら比べ物にならないくらいのステータス値。
だけどその所為で、«月夜魅»を抜かなくても精神汚染が酷くなってる。
多分、1時間使えば手遅れなくらいまで病めると思う。
「……時間稼ぎ出来れば、今回は合格点かな…」
道すがらアリア様と結美には連絡してある。
1人じゃ勝てなくても、エルフ族の高位魔術師が一斉に攻撃すればきっと……。
「無縫艶舞──」
全力で踏み込んだその瞬間だった……。
地面を突き破って現れた無数の黒い腕が、私の視界を埋め尽くした。
◇◇◇◇
「はぁ…はぁ……あぐっ…!」
私は今、右腕で木の枝にぶら下がってる。
咄嗟に後ろに飛ぼうとした時には既に手遅れだった。
私の両脚は膝下まで消失していて、飛んで逃げる事は叶わない。
だから闇属性魔法のうちの1つ、«血操»魔法で左腕の肘から下の血液を爆発させた。
お陰で私は、腕が伸びて来ないギリギリの範囲まで逃げ出せた。
血が急激に沸騰して内側から暴発する痛みなんて、常人ならそれだけでショック死出来る。
私はアーツのお陰で痛覚が麻痺してるけど、それでも痛みはかなり感じてる。
「«再生»」
この魔法は無くなった体部位を生やす事が出来る。
光属性に類する«治癒»魔法が『塞ぐ』『接合する』のに対して、闇属性の«再生»は例え斬り落とされた腕が残っていても生えてくる事から、邪道扱いされる事もある。
「……気配で気付けなかった。それにこの攻撃……腐食や酸とは違う──消失?」
仮に消失だとしたら、地面を突き破ってきたのに瓦礫が一切無かったのも説明がつく。
そして恐らく、消失させられるのは掌に触れた範囲だけ。
飛び退く間際に手首に当る所を斬ったけど、刃は欠けてすらいない。触れたモノを消失させるなんてチートじみた力の代わりに制約が多いタイプ。
…なら、氷漬けにして腕の動きを止めればだいぶ楽になる!
「«紅蓮地獄»」
人体であれば一瞬で皮膚が裂けて動けなくなる程の極寒、すぐに動きが止まる。
掌だけは氷がすぐに無くなったけど、それは予想通り。
さっき地面から出てきたからある程度形は変えられるんだろうけど、凍ってる以上不自由に…………えっ?
「«弐閃延太刀»ッ!」
背後から伸びて来た腕を牽制する。
延太刀も結局は魔力を塊にしたモノだから気休めにしかならないけど、どうにか飛び退いた。
「……どうやって…」
急激に伸び過ぎなんだけど。
さっきまで腕が伸びていた所までは、今もしっかり霜が降ってる。でも伸びて来た分は凍ってない……。
……ここで、私の中で1つの仮説が立った。
「もしかして、変換してる?」
だとすれば辻褄が合う。
地中を進んで襲ってきた時も、土を魔力に変換してすぐに躰の形を変えるのに使った。
氷も掌に触れた瞬間に変換、それを続ける事で魔力を得続けた。
「魔法は下手に使えないし、かと言って長期戦に持ち込まれると吸収され続けた事でこっちが不利になる……こんなのアリア様でも勝てなくない?」
増援は呼んだけど、下手に集めたところで敵の養分にされて終わり。
弱点を見極めなきゃ……なんて考えつつ攻撃を避け続けていたけど、足元を崩されてバランスを崩した隙に触手が絡み付いてきて左手の関節を全部逆向きにへし折られた。
「っづう!」
骨折は私じゃ治せないから、自分で二の腕の半ばを斬り捨てて再生させた。
「«蝕»ッ!」
私の«蝕»は細い人型。
右手には私と同じく刀を持っていて、私と遜色無い動きが出来る。
「無縫艶舞«刈桜»」
斬っても再生される。
なら、極力再生に魔力を使わせる!
10、20、30……私達は着実に迫り来る魔手を斬り捨てる。
たまに対処し切れなかった腕に皮膚と肉を持って行かれるけど、すぐに再生出来るから意識を外した。
少しずつ肉薄して、やっと15メートルの距離まで近付いた時────ユイナの姿をした敵の、肋骨が開いた。
奥には、その躰よりも黒い闇が広がっていた。
その闇から溢れた闇は、開かれた肋骨に囲まれるように球体を成して──
「ッ!!」
急いで射線から外れたけど遅かった。
私は右脚に、«蝕»は左腕に被弾した。
掠り傷だから大丈夫……なんて考えは甘かった。
被弾から一拍遅れて激痛が全身を襲った。
«蝕»に至っては消えてしまった。
「(貫通攻撃?ううん違う、それなら被弾しただけで全身にダメージが行くことは無い。となると固定ダメージ……??)」
…考える時間は終わり。
追撃が来る前に離脱しよう──そう思っていたまさにその瞬間、
「……ぁえ?」
私の視界が抉り取れた。
お盆の辺りは仕事が忙しいので、多分更新出来ません。




