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半吸血鬼少女の往く道は  作者: 月弓
学園潜入生活
21/46

擬似兄弟姉妹戦 / エキシビション①

書けた、ギリギリ間に合った…。


迎えた武芸大会最終日。

この日は、ユイナが最も気合いを入れていた擬似兄弟姉妹戦と、エキシビションマッチが行われる。

擬似兄弟姉妹戦は、別名『プレルディウム』と呼ばれている。

元々は初日に他の試合の前に行われる余興だったのが、少しずつ参加者を増やし続け、遂には大盛り上がりを見せて最終日に移動してきた。


「…瑤華、どうしたの?」

「特に何もありません。それより作戦ですけど……本気で言ってます?」

「うん、各個撃破(・・・・)で」


プレルディウムでは、ペアのどちらかが退場した時点で敗北となる。

故に基本は一緒に行動するのが定石となっているが、ユイナが提示した作戦は別行動による単独撃破。


「だって、瑤華も僕も前衛特化の攻撃役(ダメージディーラー)だよ?攻撃範囲が被ったら危ないじゃないか」

「ユイナが前で、私が後ろで良いでしょう?」

「合わせてくれるの?」


瑤華は面倒臭そうにしつつも、ユイナの言葉に答えた。


「ユイナが目立ってくれれば、的確にアシスト出来る程度には観察してます」

「ふふっ……瑤華、それ無自覚?」

「はい?」

「僕がそれを聞いて、喜ばないとでも思ってる?」

「……まさか、私に見られていた事を喜んでます?」

「うん。瑤華くらいの手練が観察してくれるって、剣士としても(クロト)としても光栄だからね」

「……」


ユイナは心底嬉しそうに瑤華を抱き締めた。

瑤華は甘んじてそれを受け容れるが、心は昏いままだった。

結美に酷い事を言っておいて、任務の為とは言えユイナを拒絶しない自分に心底吐き気がした。


「……瑤華、他の女の子の事考えてるでしょ?」

「ッ……」

「駄目だよ。僕と話してるんだから、僕の事を考えてくれなきゃ…」


ここは試合前の控え室だ、他には誰も居ない。

とは言え、今の姿勢は不味い。

ユイナに抑え込まれ、壁際で顎に手を添えられてしまった……次にされるであろう事を想像しただけで、瑤華は吐き気を催してしまう。


「………大丈夫、瑤華の準備が出来るまでこの先はしないよ」

「…ここまで、迫っておいてですか?」

「うん、ここまではまだ理性で我慢出来るから」


言い換えれば、この先に進んでしまえばもう抑えられない……それは、瑤華だって避けたい。

どんな相手であれ、どんな理由であれ、愛を知ってしまえば瑤華は戻れない。また喪う事を恐れ、それだけで自壊してしまうだろう。


「話を戻すけど、僕と瑤華は別行動が良いと思うんだ。僕が表立って暴れるから、瑤華は陰で沢山倒して欲しい。駄目かな?」

「……もう面倒なので、それで構いません」


瑤華の心のうちなんていざ知らず、或いは気付かないフリをしてユイナは話を続けた。

何気に左手を握り締めてくるあたり、構ってアピールだろう……そう判断して、瑤華は相手にしなかった。


「瑤華は攻略難易度が高過ぎだよ〜!」

「駄々を捏ねないで下さい」

「瑤華の前でだけだよ♪」

「あっそ」

「扱いがヒドイ!」


試合前だと言うのに、ユイナの構ってアピールは苛烈だ。

流石に鬱陶しくなってきた瑤華は、襟首を掴んで引き寄せた。そして────


「(チュッ)」

「………ッ!!?!?!??!!!!?」


──頬に口付けを落としてやった。

瑤華の狙い通り、ユイナは顔を真っ赤にして顔を抱えている。プシュー…と効果音が付きそうな様子だが、大人しくはなった。


「き、急にするなんて……心の準備が…」

「五月蝿かったので」

「…ヤバいよ……駄目、今顔見たら気絶しちゃう…」

「(……そんな大袈裟な…)」

「………」


……大袈裟、ではなかった。











◇◇◇◇



「うわあぁぁぁぁあぁぁっ!」


響き渡る断末魔、もう何人目か理解らない。

ユイナの前に立ちはだかった者達は、揃って為す術無く消し飛ばされてしまう。

…だが、その裏で暗躍する者が居た。

音も無く殺す、刀を持った死神……つまりは瑤華の事だ。


「«伍閃(ゴセンノ)延太刀(ノベタチ)»」


この試合で、無縫艶舞を一切使っていない。

瑤華にとっては取るに足らない相手ばかり、ユイナに気取られている所為で、逆に不安になるくらい闇討ちが簡単に決まる。


「……と言うか、今日のユイナは荒過ぎる…」


破壊音が鳴り響く方を見て、瑤華は溜息を零した。

立ち上る黒煙、崩れ落ちる建物……まさに歩く天災。


「……馬鹿力」

「隙あ──」

「……」


背後から襲ってきた女子生徒の首が、振り向きさえしなかった瑤華に斬り落とされる。

当然だが、狙われている事なんてとっくに知っていた。敢えて隙を見せて、油断させて殺す…瑤華の得意技だ。


「はぁ……」


何度目かも理解らない溜息が、瑤華の口から零れた。














◇◇◇◇


「あ〜もう!!」


何なの瑤華ってば!

いきなり頬っぺにキスしてくるし、そのクセつらーっとしてるし!!

わかんない…こんなに後手に回るのなんて初めてだよ……。


「今だ!一斉に──」

「«(イクリプス)»」


闇属性上位魔法、«(イクリプス)»……自分の影から幻獣を創り出して戦わせる魔法。

人によって違う形をしていて、僕のは狼の姿をしている。

瑤華も使えるって言ってたけど、直接見た事は無いからどんな姿なのかは知らない。


「喰らい尽くして」


早く終わらせたい…。

僕はこの試合が楽しみだったけど、それは優勝者への景品が魅力的だっただけで、戦いに関してはどうでも良い。

…と言うか、斬り結んで楽しいって思えるのは、正直もう瑤華だけだから。


「お姉様、まだやってたんですか?」

「あれ?瑤華もう終わったの?」

「はい、きっちり半分倒しました」


試合進行用の専用端末を見て確認したら、もう残っているのは僕達と、目の前の数人だけだった。

今の脱落者から僕が倒した数を引くと……ちょっと誤差はあるけど──多分、僕等とは関係の無い戦闘があったんだね──参加人数の半分を瑤華が倒した事になる。

……絶対勝てないから他のペアと結託してでも僕等を倒しに来る、そう予想したのは僕だけど、ここまで予想通りだと吃驚だよ。


「私が殺りましょうか?」

「ううん、すぐ終わらせるよ……«ジャッジメント──」


光属性上位魔法の«ジャッジメント»は、攻撃力は高いけど範囲が狭い……だからちょっと、反則技を使わせて貰うよ。


「──イリーガル・ドライヴ»!」


術式法外超過用法……僕が編み出した魔法の効果を数十倍に引き上げる術式。

戦場は白一色に染め上げられて………再び色を取り戻した時、辺り一面が更地になってた。……辺り一面って言っても、この戦闘用仮装フィールド全体なんだけど。

ま、まぁそんな事は置いておいて…


「……瑤華、僕を盾にしないでよ」

「どう考えても私を巻き込んでましたよね?」

「ちゃんと、瑤華には害が無いように術式組んだから大丈夫だって」

「先に言って下さい」


やっちゃった…かな。

何気にまた瑤華からの信用度が落ちた気がする。


『…………し、勝者、勇者ユイナ・ロイセンツ&瑤華ペア!』


コツン…

私達がグータッチしてすぐ、仮装フィールドが解除された。

私は真っ先に瑤華に駆け寄って、キツく抱き締めた。一応、さっきはごめんね…って意味も込めて。


「ユイナ、苦しいです」

「じゃあ、後ろから抱きしめて良い?」

「なんで前からが駄目で、後ろからなら大丈夫だと思ったんですか…」

「駄目?」

「…………勝手にどうぞ」


言質は取った、やったね♪

僕は瑤華の隣に座って、それから瑤華を膝の上に乗っけた。

……軽い。

上背も無いし、身長相応ではあるだろうけど軽い。


「そんなに強張ってないで、リラーックス…」

「出来ると思いますか?…ちょっと、首に顔を埋めないで下さいよ!」

「興奮して来た。痕付けて良い?」

「だ、駄目に決まってるでしょうッ!」


お腹の前でホールドしてるから、そう簡単には抜け出せないよ?

ふふっ、それでも抜け出そうとする瑤華…可愛い。


「瑤華は毎日、僕の首を噛んでるのに?」

「毎日じゃない、4日に1回……しかも目的が全然違うから……ってもう、耳に息っ、掛けないで」


……瑤華の弱いとこ発見。

今度、血を吸ってる時になぞってみよ。


「瑤華、ここが弱いんだ……えっち」

「こんな所で、(アトロポス)を襲ってる人に言われたくない…んっ!」


ヤバいよ……止められなくなってきた。

これ以上は駄目、瑤華のペースでやっていかないと……瑤華、お願いだから拒絶して──


「マスター、10分後にエキシビションやるから──って何してるの!?」

「……あ、えっと…その………」

「…マスター」

「はい!」

「…私達でも場所は考えますよ」

「ゴメンナサイ」


カナミ、騒がないで……ナナミ、そんな眼で見ないで…。

いやホントに、心臓バクバクなんですけど……。


「瑤華ちゃんは項も弱いですよ」

「ッ、結美!? 」

「(フー)」

「ひゃっ!! 試すな…ッ!」


なんで結美がそんな事知ってるのは……は聞かなくて良いや。

今はナナミとカナミにベットリみたいだし…。


「…兎に角、あと10分弱でエキシビションマッチをやるそうなので、ヤるにしても夜にして下さい」

「ヤりません」

「即答!修羅場ですね」

「瑤華ちゃん、耳塞いでも聞こえてるのがバレバレですよ」


突然3人が来たのには驚いたけど、これはこれで良かった……のかな?

結局時間ギリギリまで騒いでたけど、去り際には「頑張って」って言い残してくれる。

瑤華ほど鮮烈とは言えないけど、大事な人達。

……瑤華も、そう思ってくれたら嬉しいんだけど…ね。








◇◇◇◇



『これより、エキシビションマッチを始めます』


進行役がそれぞれの名前を呼び、その度に観客席が盛り上がる。ユイナは主に貴族から、瑤華は平民や冒険者上がりの生徒から。

教師陣は臭い顔をしている。

ここ数日で、貴族達から山程クレームが来たからだ。

本来はこのエキシビションだって反対なのだが、現状最も運営費を出資しているロイセンツ家が圧力を掛けて来ては断れない。


「良いね〜、瑤華の応援は混じりっけが無くて」

「お姉様は、何にせよ興味無いでしょう?」

「そうでもないよ?瑤華には敵わないだけ」

「またそうやって…」


双方が構える。

ユイナは正眼、瑤華は八相の構え。


『始め!』


その声が聞こえた時、既にユイナは駆け出していた。

右半身が引き気味だった瑤華の左側へ、若干の弧を描くように迫ったユイナ……だが。


「せいっ!」

「ッ!? 」


瑤華は鎬で難無く受け流し、バランスを崩したところに逆に蹴りを叩き込まれる。

脇腹にクリーンヒットし、衝撃で10メートル以上吹き飛ばされる。


「ッ…もう、初手の読み合いじゃあ全然勝てないなぁ」

「……私だって、肋骨折るつもりだったんですけどね」

「そう…じゃあ、«パニシングキル»ッ!」


これは発動後、最初に打ち合った瞬間に相手に衝撃波を放つ技だ。

筋力値に比例して威力が上がる為、ユイナにとっては相手の隙を誘うのに重宝する技で、瑤華にはまだ見せていない。しかし…


「«一閃(イッセンノ)延太刀(ノベタチ)»」

「なっ!」


延太刀によって強引に打ち合いを終了させられ、今度は瑤華から鍔迫り合いに持ち込まれる。


「(…重っ!)」


ステータスではユイナの圧勝だ。

だが瑤華は、力の加え方や掛ける位置……自身の技量でそのステータス差を埋めている。

この鍔迫り合いだって、余裕が無いのはユイナの方だ。


「«パニッシュメント»ッ!」

「ッ…」


湧き上がった鎌鼬を、瑤華は全て斬り捨てて(・・・・・)しまった。


「(瑤華の実用性を示す為に、まだ大技で吹き飛ばすのは避けたい……けど…)」


いつもより容赦の無い瑤華は見て、苦い笑いが零れてしまう。


「(下手したら、僕の首が落とされるよ…)」















中途半端だけど次に回しますm(_ _)m

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