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はじめてのりあるだんじょん⑪


とにかく一定レベルまでダメージを与えるためにひたすら攻撃を続ける。


ゲームで言えばこの手の単純なステータスで攻めてくるタイプの敵は一度パターンを理解してしまえばその後の戦闘は単調に感じることすらあるわけだが、実際に自分の身で戦うとなるとさすがにそんなことを感じる余裕はない。シードの痛覚軽減スキルが入っているとは言えこのレベルの攻撃を受ければそれなりに痛いし、ちょっとミスって連続で攻撃を受けてしまえば俺あたりは一気に死にかねず、そして復活できない可能性は非常に高いからゲームと比べると緊張感が段違いすぎる。


タンク役の岩鉄はこの緊張感や感じる恐怖、そしてダメージを受けることにより与えられる痛みを常に身近に感じつつも、俺達を守るために最前線で戦ってくれている。本当に頭が下がる思いだ。


とはいえ能力とスキルが違いすぎるから役目を変わってやることはできない。俺が岩鉄のポジションにいったらそれこそ数十秒と持たずに死んでしまうだろう。俺にできることはパーティ最大の火力を生かし、とっとと戦闘を終わらせることだけだ。


<<ヘブンズレイ>>のクールタイムが終わった[天神の光]をまたぶち込む。これで他の二人が与えたダメージを加えれば5割以上のダメージは通したはず、後はクールタイム中に岩鉄とシードが与える分と俺がもう一発ぶち込むダメージで目的のラインは超えるは……


「うおっと!?」


ほんと戦闘中は思考が中断されるな!?

突然岩鉄の()()に現れ、俺とシードめがけて飛んできた炎の槍を俺はすんでの所で回避する。


一撃撃つ毎に走ってポジションを移動していたおかげでギリギリ回避できた。これまで火竜が放ってきた炎弾よりこちらに近い位置で発動し、更に速度も速い炎の槍は立ち止まって固定砲台をやっていたら回避できなかっただろう。初見で俺が回避できたのは奇跡に近い。


これまでにない攻撃をしてきたということは、HPが半分以下になってルーチンが変わったってとこか?

出現位置が頭部よりやや前方に設定されていて前衛の後方に出現する形になっているから、完全に後衛狙いの攻撃って感じではあるが……この攻撃、厄介だな。

いや、現時点では問題ない。ノータイムで放たれるミニ火弾と違ってモーションはないものの出現時から射出されるまでに1秒ほど余裕があるしその軌道も直線、数もミニ火弾と違い数発が後衛みんなに飛ぶ形なので速度が速いとはいえ体勢を崩していたり攻撃態勢に入っていなければ俺でもなんとか回避できる。が、最大火力の一撃をぶっ放すためのスキルを使うと大きな動きが取れなくなる。……一撃もらうのを覚悟で行くしかないか。


とにかくはまずは削ることだ。炎の槍の出現を警戒しつつ、俺は残り数秒のクールタイムを待つ。


3、2、1──


「コネクト:[天神の光]!」


俺が再び放った光線は、狙い違わず火竜の頭を打ち付ける。よし、これで準備は整った!俺は足を止めて、火竜に向けて体を向けると後ろのフラットへ向けて叫ぶ。


「フラット! 11秒後に増幅を!」

「了解しました!」

「コネクト:<<チャージ>>!」


スキルの宣言と共に、開いて突き出された俺の手にうっすらとした光が収束していく。それは力の収束。10秒の時間をかけて集めた力を次の攻撃に込める、切り札を放つための準備ともいえるスキル。


「岩鉄、動きを!」

「了解だ!」


その声と同時に炎の槍がこちらに向けて出現する。

残り6秒、来るな来るなと考えたがやはり無理か。回避運動のような大きな動きをすれば効果が切れるから避けられない、だったら耐えてやるよ!


5秒、炎の槍が射出される。恐怖が心に浮き上がるが目をそらさない。

「コネクト:[聖者の護り]」

同時に後方でフラットの宣言がかかる。


4秒、出現するはずの半透明の障壁が出現しない。


3秒、俺の前に一つの影が飛び出す。俺に向けて一直線に飛来した炎の槍はその人影に直撃する。


2秒、直撃した炎のエフェクトが周囲に飛び散る。俺は俺の前に飛び出した彼女の意思を読み取り、視線を火竜から移さない。


1秒、岩鉄は下からの掬い上げるような一撃で火竜の頭を跳ね上げる。同時に俺の前に立つ彼女が一瞬俺に視線を送りその身を沈める。


0秒。


「コネクト:<<アンプリフィケイションサークル>>」


フラットの声と共に俺の前に魔法陣が現れる。俺はその円に向けて岩鉄が跳ね上げた頭に向けて、角度を調整して腕を突き出し、叫ぶ。


「コネクト:[神討つ光]!」


言葉と共に、俺を襲うこれまでで最大の脱力感。そして放たれる、これまでよりもはるかに太い極太の光線は岩鉄の頭上、跳ね上げられて顎をこちらに見せていた火竜の頭を飲み込んだ、


見れば、俺の正面、体を回復を示すエフェクトに包まれたシードもその光景を見届けていた。というか間髪入れず回復を飛ばしているフラットが優秀過ぎて泣けてくる。


そんな間にも俺が放った光線は背後の壁にぶつかり消失する。……冷静に考えるとこれ後ろまで吹っ飛ばしてたら崩壊の恐れもあったが、謎の設定でダンジョンは傷つけないようになってるんだな。


いやいや、そんなこと今はどうでもいいか。アイツはどうだ?


見れば火竜は跳ね上げられたままの体勢で固まっていた。読み違えでこれで倒しきれていないといろいろ不味いが……


時間としてはほんの1、2秒。だが無限に長く感じられた時間ののち火竜は──力を失って、床へと崩れ落ちた。


そこに間髪いれず、岩鉄が一撃を入れる。が、火竜は反応はない。ということは……


「完全に稼働停止している! 一つ終わりだ!」


よし!

岩鉄の言葉に俺は突き出していた腕をそのまま引き戻して小さなガッツポーズを取る。


「次に移るぞ!」


言葉と共に岩鉄は休む間もなく、リアルの相手している中央の首へと向かっている。そうだ、まだ終わってはいない、すぐ次へ向かわないと──だがその前に。


「シード、助かった。……痛みとか大丈夫か?」

「それなりに痛かったし熱かったけど<<プロテクション>>もあったし平気よ」

「……無茶するなぁ」

「か弱い女の子は護ってあげないと、ね」

「いや女の子はお前の方……」

「今うちのパーティで一番か弱い女の子はリセでしょ。防御もHPも私の方が上だよ。それにあの攻撃を邪魔させるわけにはいかなかったしね」


女の子はおいといて彼女が言っているのは全て正論だ。正直本気で感謝しているが、あれの前に飛び出すとか恐怖もあっただろうに思い切りが良すぎだろう。それが最善だと思っても人間そう簡単にその行動はとれないもんだが……本当に俺の仲間はすごい奴ばかりだ。


「ほら、のんびりしてられない! 疲れてるだろうけど次落とすわよ!」

「ああ」


武器を構え、すでに岩鉄も参戦している中央の首へと向かうシードの後を追い俺は中央の首との戦闘へ参戦した。


──正直、一つ目の首を落とした時点で勝ちは見えた、警戒していた他の首を落とす事で残りの首がパワーアップするということがなかったからだ。であれば後は単純である。一つ目の首と同じことを繰り返せばいい。しかも岩鉄が参戦したことで、リアルは攻撃に多くリソースを割くことが出来る。


麻痺を与えてくる電撃が多少厄介なものではあったものの、俺達は炎の竜よりも早く雷の竜を削り切り、先ほどと同じコンボにて中央の首も動きを止めることになった。


こうなれば後はもう負けることはない。最後の首は6人総出でボコボコにするだけだ。

ただ二本目の首までで俺とフラットの消耗が限界近いところまで来ており、それぞれ<<アンプリフィケイションサークル>>[神討つ光]を撃てる余裕がなかったため、残った氷の竜君は最後までちまちまと削り倒されたことをここに記しておく。



・各コンボスキルについて

[神討つ光]

<<ヘブンズレイ>>+<<プリズムエキスパート>>+<<マジックバースト>>


・各スキルの効果について

<<チャージ>>

力を収束して次の攻撃の乗せるスキル。重複可能。チャージには10秒かかる。

一定の速度で動くとスキルが解除される。


<<マジックバースト>>

限界を超えて魔術の力を使用するスキル。組み合わせた魔術系スキルの効果を大幅に強化する。コンボ専用。


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