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はじめてのりあるだんじょん⑩


メイの言葉に合わせ岩鉄と二人がかりで開かれた扉の向こう側、視界に飛び込んできたのはくすんだ銀色だった。


他のメンバーに続いて部屋の中に飛び込みながらその光景を見てボスはゴーレムかと思ったが、どうやら違う。視界に入ったのは首だ。そしてその首の先に当然存在する頭部は以前見たもの──ワイバーンと酷似していた。すなわち


「鋼鉄の竜か……!?」


部屋に入った俺達に反応したのだろう、地面に横たわっていた首がゆっくりとその長い首をもたげる、そしてその首の向こう側にあった光景を見てメイが怒声を上げる。


「三つ首竜!」

九つ(ヒュドラ)じゃなくてよかったね、と」


俺の横で軽口をたたきながらシードが弓に矢をつがえ


「コネクト:[カースドアロー]」


放つ。

その矢は狙い違わず鋼鉄の竜の銀色の皮膚を貫き、突き刺さる。

その光景を見届けて、事前に<<アナライズ>>を使用していた彼女はため息を吐いた。


「予想はしてたけど麻痺、スタン、毒、衰弱全部ダメっと。スロウだけ入ったわね」

「まぁボスの上にあの外見だ、仕方ないだろ。ひとまずデカイのぶっ放すぞ! そしたら散開だ!」


了解と全員の声が返るのを聞き遂げて、俺は右腕を天に掲げて叫ぶ。


「コネクト;[裁きの雨]!」


俺の言葉に応じて部屋の天井近くに現れたうっすらとした光の群れは瞬く間に膨張し、光の柱になってその下の三つ首の竜に降り注ぐ。金属を質量を持った光が殴打する音が立て続けに鳴り響き、三つの首は再び床に強制的に寝かしつけられた。

それと同時に、俺の体を激しい脱力感が襲う。コストの重い<<セレスティアルレイン>>を更に強化して放ったスキルだ。さすがに消耗が重い。


ただこのスキル、味方には当たらないとはいえ視界をかなり塞いでしまうため、乱戦になると使いずらい。ならば序盤の削りスキルとして使いどころはここしかないだろう。


そして光が消えると同時、パーティメンバーたちが周囲へ散開していく。


「一番右、あたしが抑えるわ!」

「中央、いくよー!」


メイが右へ、リアルが中央へ、岩鉄は俺とシードの前に、とそれぞれの首に対して前衛組が別れる。


「あいつ、胴体がありませんね。首自体が壁から生えているようです」


俺の足元のフラットの言葉に見てみれば、なるほど、やや高めの壁に機械のような装置がありそこから生えているように見える。


「あそこ叩いたらあっさり全滅したりしないかな?」

「無理でしょうね。……あの形状からして後衛への物理攻撃の可能性は低そうなので僕は下がります」

「了解だ。前衛組のフォローよろしく」

「お任せを」


フラットは俺達からやや離れた後方に陣取る。竜という外見から間違いなくブレスが来るだろうが、遠隔攻撃からだけならあいつはある程度自衛できるだろう。


「シード、岩鉄。まずは左の首から潰すぞ!」


三つ首竜はすでにそれぞれの頭を再びもたげ直し、こちらを見据えている。そしてその口を大きく開き……っていきなりかよ!


次の瞬間には、三つの首がそれぞれブレスをその口から打ち出した。

左は火球を。

中央は電撃を。

右は氷塊を。

……全部ばらばらのブレスを吐くのか!


「コネクト:[不落の城塞]」

「コネクト:[聖者の結界]!」


二つのスキルの宣言が響き、次の瞬間には俺達の正面で火球が岩鉄にぶち当たって爆発を起こす。その爆風が俺の髪やスカートを大きくなびかせるが、ダメージ自体はない。


「リアルが麻痺!」

「コネクト:<<キュアパラライズ>>」


シードの声と同時に、フラットが再びスキルを宣言する。見ればリアルが膝をついていた。回避しきれなかったのか?フォローの為に術を飛ばすか、と考えおわるころにはだがリアルは元気よく体を起こす。


「ごめーん、よけきれなかった!」

「ダメージは大丈夫か、リアル!?」

「かすっただけだからそっちは平気! もっと速度上げて対応する!」


言いながら彼女は何かしらのスキルを宣言する。恐らく敏捷を上昇させるスキルだろう。

それを確認してから俺はフラットへ振り向く。


「フラット、各種耐性は!?」

「各種属性耐性、バッドステータス耐性、掛けられるものは全部事前にかけてあります!おかげで僕はすでにへろへろですがね!」

「大丈夫だ、全然見た目的には疲れてるように見えないから!まだまだ働けるぞ!」

「ご無体な!?」


うるさい、お前のサポート切れると全滅しかねないんだから干からびるまで仕事してもらうぞ。全部終わったら多少はねぎらってやるから。


「岩鉄、お前はダメージは?」

「多少抜けてきたがまだ全然大丈夫だ……俺は突っ込んだ方がいいか?」

「早めに一つ首を落としたいからな、そうしよう」

「了解だ……出来るだけ抑えるがそっちに飛んだら自力でなんとかしてくれ」

「ああ」


俺とシードの頷きを確認して、岩鉄は槌を構え炎の竜の頭部へと突進していく。

予備動作があるので、ブレスは見落としさえしなれば後衛なら避ける余裕はあるだろう。よしんば貰ってもフラットのサポートがあれば一撃でどうにかなることはないはずだ。


それよりとにかく攻撃だ。一つでも首を落とせば格段に楽になるはず。本当は外見からして<<サンダーバレル>>をぶち込んでやろうと思っていたが、雷属性の攻撃をしてくるとなると切り替えた方が良さそうだ。たったら──


「コネクト:[天神の光]」


俺は火竜の頭部に向けて、強化した光線をぶち込む。一直線に進む光は狙い違わず奴の眉間あたりにぶち当たった。

テュランソス等の生物系エネミーと違って悲鳴を上げることもないし、その皮膚が大きく焼き切れるようなこともないためダメージが通っているからわかりづらいが、攻撃を受けた瞬間一瞬動きが止まったのでダメージは入っているはずだ。ひとまずこれで攻めていくとするか。


横を見れば、少し離れたところでシードが立て続けにエネルギーの矢を叩き込んでいる。前衛では岩鉄が相手の首の振り回し攻撃や噛みつき、それにノータイムで放たれる恐らく近距離用の火球を受けつつも[鬼神の衝撃]や[鬼神の鉄槌]で動きを抑え込んでいる。


俺自身もスキルのクールタイムが終わるごとに先ほどのコンボを叩き込みつつ、視線をちらりと一人と首を一つ抑え込んでいる二人の様子を確認する。


二人とも、基本的には回避を優先しているがそれでも何度かは攻撃を貰っており、フラットの飛ばす<<プロテクション>>込みで何とか耐えている感じだった。特にリアルの方は動きからしてかなりのバフをかけており、敵にダメージを通すため装甲無視の<<ディメンションブレイド>>も使用している。消耗度外視で俺達が一つ首を落とすまで持てばいいという考えだろう。

逆にメイは攻撃は最低限とし、回避に専念をして消耗を抑える戦い方をしている。元々火力も低めなことからリアルの戦いを見て、自分は最後まで抑えこむ方向としたんだろう。


二人の信頼には答えないとな。消耗度外視のぶっ放しで敵を一気に削り切るのは俺の得意分野だ。


HPバーがないのでわかりづらいが、これまで出現した敵の耐久とこれまでのこのゲームのボス能力のバランスからある程度あいつのHPと現在のダメージは予測できる。ゲーム知識を引っ張り出して思考を走らせ、この先のプランを考える。


長引かせないためにも最大火力の一撃をぶち込むのは確定だが、当然それは消耗が激しい。ゲームと違い消耗すれば当然その後の回避とかにも影響することを考えれば、その一撃で確実に頭一つは落としておきたい。


であれば、5……いや6割ってとこか。この手のタイプのエネミーはHPが基本バラバラで設定されている。そしてその分通常の同レベル帯のボスに比べれば一つ当たりの頭のHPは少なくなる。恐らく6割くらいダメージを与えれば4割は確実に一撃で削りきれるはずだ。


もし実はHPが全体で共有だった場合は今は考えない事にする。



・各コンボスキルについて


[カースドアロー]

<<ブレイクダウン>>+<<ポイズン>>+<<ハイスピード>>+<<スロウ>>+<<スルーフォース>>+<<パラライズ>>+<<スタンアタック>>


[裁きの雨]

<<セレスティアルレイン>>+<<プリズムエキスパート>>


[天神の光]

<<ヘブンズレイ>>+<<プリズムエキスパート>>


・各スキルの効果について

<<スルーフォース>>

矢の貫通力を上げ、固い装甲を貫くスキル。エナジーアローとは組み合わさらない。


<<パラライズ>>

対象を麻痺させるバッドステータスを付与するスキル。


<<スタンアタック>>

対象を放心させるバッドステータススタンを付与するスキル。放心は他から自分に対して何らかのアクションを受けることで回復する。


<<プリズムエキスパート>>

組み合わせた光属性の魔術スキルの威力を強化する。コンボ専用。


<<キュアパラライズ>>

麻痺のバッドステータスを回復させるスキル。

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