はじめてのりあるだんじょん④
メイに導かれ、進んだ次のエリアはなるほどアクション系のエリアだった。
俺達の目の前の床は途中で途切れており、その先にはところどころにどういった原理かわからないが厚さ10cmくらいの正方形の石が飛び飛びで宙に浮いている。
「石を跳んで渡っていけってことか、これ」
「だろうねぇ」
確かに見れば一目でわかる内容だ。
見る限り、石の幅はそれなりにある。俺の能力だと少々厳しいか? 岩鉄は確実に厳しいだろう。
「このくらいの幅だったら、あたしやシードは問題ないかなー」
「あ、リアルちゃんちょっと待って!」
言葉と共に石に飛び乗ろうと助走を付けようとしたリアルを、慌ててメイが止める。
「どうしたの?」
「いやね、さっき<<フルスキャン>>で確認した時はこんなに石の数なかったのよ。だからちょっとまってね……コネクト:<<フルスキャン>>」
メイはもう一度スキルを使うと、目の前の空間に浮かんでいるであろう表示と実際の石の並びを見比べる。それからおもむろにその場で転がっていた瓦礫を一つつかむと、石の板に向けて投げつけた。
瓦礫は、石の板をすり抜けてそのまま下へ落ちていった。
「ダミーありかよ……」
「そういう事みたいね」
これ実際実装されてたら、「このくらいの奴なんて余裕だぜ」とか言って調子にのってそのままギャグみたいに落ちていく奴いただろうなぁ……さっきのリアルも危なかったけど。
まぁそれなりに注意深ければさっきのメイみたいにスキャン系のスキルでいろいろ確認しながら進むだろうから、そう簡単に引っかかることはないだろうけど。
「今のフルスキャンで正解ルートは見えたから、あたしが先行して行けば大丈夫かな」
「いやこれ俺と岩鉄は厳しいだろ。俺が全員に<<フライト>>で飛んでいくのが無難じゃないかな」
そうメイにいいながら、俺は床が途切れている場所まで足を進める。
この下、どうなってるんだ? 水音が聞こえるから流石に落ちたら即死とかそういうタイプのエリアじゃないんだとは思うが。
落ちないように注意しながら、下をのぞき込む。
「あ、こらリセねぇ!」
背後からかけられるメイの声。
そして俺の視線は何かと眼があった、気がした。これは……魚?
そう思った瞬間、そいつは口を大きく開き、その奥がぴかっと光って──
「ぴっ」
自分の喉から漏れ出たよくわからん音と共にのけぞった俺の目の前を、光とそれに伴う熱が通りすぎていく。
「きゃっ」
のけぞった勢いでそのままバランスを崩し、後ろに大きく尻もちをつく。
……いやまて今俺はなんて悲鳴を上げた?
自分の口から漏れ出たモノのインパクトに、たった今危険な目にあったことが頭から吹き飛んだ。
「リセ……大丈夫?」
シードが心配げな声で座り込む俺に手を差し出してくる……が、おい、完全に表情が笑いを我慢しているそれになってんぞ!
「……最近さぁ、リセ見てると守ってあげなきゃ!って思うときがたまにあるんだよね」
「わかるぅー」
リアルとメイの未成年女子二人は俺に妙な感情を抱くのはやめろ。俺はお前らの倍くらい生きてきているんだぞ。
伸ばされたシードの手を握り返し、俺は無言で立ち上がると尻についた汚れを払いながらつぶやく。
「人の記憶を消すスキルとかねぇかな。今度調べてみるか……」
「いやちょっと恐いよ!?」
「冗談だ」
さすがにそんなヤバイ思考はしない。しないが……最近は攻略を急がなくていい的な考えになってきたが、これやっぱり出来うる限り急ぐべきじゃないか? いよいよ精神が肉体に引きずられていく不安が強くなってきたぞ。みんなの命が最優先なのは変わらないにしても。
……とりあえず今はメンタルリセットしよう。
先ほどの光景を思い出す。視界に入ったのは魚──そう、魚だった。その魚が口から……あれレーザーみたいな奴だよな? 俺の<<ヘブンズレイ>>みたいな奴。
「下が水路みたいな所になっているんだが、そこにレーザー打つ魚いたわ」
「……テッポウウオ?」
「この場合レーザーウオじゃないかしら?」
メイの言葉にシードが突っ込みを入れるがまぁそこはどうでもいい。
「これ、まんま<<フライト>>対策だよなぁ……」
飛行スキルである<<フライト>>はあまり小回りが利かないし、そこ迄速度が出るわけでもないからいい的だ。<<テレポート>>にしても対岸は数十メートル離れており、この距離だとポイントが設置できない。完全にそういった"ズル”を許さない構成だろう。
「俺は自力では無理だな」
「俺も多分無理だよ」
岩鉄の自己申告に俺も同意する。
装備の分こっちの方がまだましだとは思うが敏捷の値は岩鉄と大差ない。あと今の装備のスカートだと飛んだり跳ねたりしたら足絡まって体勢崩して自由落下という、それこそコメディのムーブをしかねない気がする。
「私かリセのスキルでその魚倒しちゃう?」
「いやぁ、それは無理かなぁ」
弓を構えながらのシードの提案は、だが即座にメイに否定される。
「どうして?」
「<<サーチエネミー>>使ってみたんだけどさ。下の水路エネミーうっじゃうじゃいるよ。倒しきれなくはないかもしれないけど、かなり消耗しちゃうんじゃないかなぁ」
「むぅ……でもそうするとタンクが進めない道しかないってことはないだろうし、別のルート探す?」
「そうだなぁ……」
「いや、なんとかなると思うよ」
シードの提案に俺がどうするか考えようとしたところ、メイがそう言ってきた。その言葉には迷いがない、自信のある響きがある。
「とりあえず、自力で行ける人は? 私は<<スライドムーブ>>もあるし問題なくいける」
メイの言葉に、リアルがはいっ!と元気よく手を上げる。
「あたしは問題ないよ! ミスって足を踏み外しても<<エアロホップ>>で復帰できると思うし」
「私も問題ないかな。<<スピードアシスト>>もあるし、落ちそうになった場合になんとかできるスキルもあるわ」
構えていた弓を背負いなおしてシードもそう申告する。
「僕は自力はもちろん無理ですが、誰かに抱えてもらっていけばいいですかね」
「あー、リアルちゃんお願いできる? <<スライドムーブ>>自分だけに適用されるから使った場合フラット君落としちゃうのよね」
「はぁい、だいじょぶ!」
ガッツポーズをしてフラットを抱え上げるリアルを確認すると、メイが軽く柔軟をしてから
「それじゃまずあたしから行くね。リアルちゃんとシード姉さんはちゃんと正解の石覚えてね」
そう後ろで同じように柔軟をする二人に告げると、メイは助走を付けて最初の石へと跳び移った。
同時に空間を下から上に光が数条走る。だがそれは完全にメイが通り過ぎた空間を貫いただけだった。
一番最初の浮石の上で立ち止まって、メイがこちらを振り返る。
「こちらを視認してから撃ってくるみたいね。これなら問題なく行けそう。それじゃ一気に行っちゃうね」
そう告げるとメイは勢いを付けて跳び、石の間を渡り始め……そして十数個の浮石を特に危なげな事もなく対岸へと渡り切った。
「妙なギミックとかもないみたいね。それじゃ二人もこっち来てー」
対岸で手招きするメイに頷き、まずはフラットを抱えたメイが、続いてシードが同様に危なげなくわたり切る。これでこちら側に残っているのは俺と岩鉄だけとなった。
「次は俺がいけばいいのか?」
「いや、その場から二人とも動かないで」
踏み出そうと俺を、だがメイはとどめる。
「それじゃ行くよー。コネクト:<<シフト>>!」
え?
次の瞬間、急に視界が切り替わった。正面にはメイの姿、それは変わらない。だがそのメイの隣にいるのは岩鉄だった。
「うわ、リセいつの間に!?」
耳元でのリアルの声に慌てて見回せば左右にはリアル、シード、フラットの姿がある。
「これは……?」
「<<シフト>>っていう位置入れ替えスキル! あたしとリセねぇの位置を入れ替えたんだよ!」
……そういえばそんなスキルあったな。メイこれも取ってたのか。このスキル確かに移動系のスキルなんだが、基本的に使われるのがタンクが敵の攻撃を代わりに受ける時なため頭から抜け落ちていた。ちなみに岩鉄はまだ覚えていないはず。
「これ使えばあたしが3往復すればいけるからさ! というわけでまたそっち行くね!」
ここから先は完全にリプレイを見ているようだった。殆ど同じ動きでメイは浮石を残り2回見事にわたりきり、俺達パーティは全員こちらに揃うことが出来た。
「助かった」
「適材適所適材適所♪」
頭を下げて礼をいう俺と岩鉄にひらひらとてを振ってこたえながら、メイが体を翻す。
「それじゃ次のエリアいこっか!」
・スキルの効果について
<<スピードアシスト>>
使用者の敏捷のステータスを一定期間上昇させるスキル。
<<シフト>>
対象と自分の位置を入れ替えるスキル。同一パーティの設定がされている相手にだけ使用可能。
なお視線で対象を判断している為、ちゃんと考えて使わないと対象を誤爆する。




