はじめてのりあるだんじょん⑤
そこから進んだ先、当然あのようなアクションを求められるエリアがあれ一つで終わるわけもなく、そのたびにメイに頼ることになった(基本的にお世話になるのは俺と岩鉄)。それ以外にもエネミーや罠の対応、ルートの確認などこのダンジョンに入ってからは彼女は正に八面六臂の大活躍だ。その分こまごまとはいえスキル使用で消耗はしていくので、戦闘に関しては温存してもらうことになった。
現状メイを除いたメンバーで対処が難しい敵は出てきていないし、ボス戦まではこのままでいける気はする。アクション要素や罠が多い分、広さに対するエネミーとのエンカウント率は高くない印象だった。もちろん手ごわいことは手ごわいが、概ねレべル100超えをしているパーティーが進めないほどではない。
そうしていくつものアクションエリアやエネミー達を打ち倒した俺達は今、えらく広大なフロアに到達していた。
床が綺麗な正方形の形をしたその部屋は各辺が100m以上はあり、高さもこれまでの倍以上はある。明らかにこのダンジョンに入った中で最も広大な空間だった。
その天井を入り口付近で見上げながら、俺達はその場で足を止めていた。
理由は一つだ。
「これ、ボス部屋かなぁ……」
リアルのつぶやいた言葉は恐らく全員が頭に浮かべていることだ。こんだけでかい部屋だ、何も起こらないとは考えづらい。何かしらの大がかりのトラップの可能性もあるが、普通に考えれば大型エネミーとの戦闘用の空間ではないかと考えられる。ただ肝心のエネミーの姿は見当たらないが……
「まだ先に道が見えるので、エネミーにしても中ボス的なものだとは思いますが」
「にしたって、どこから出てくるんだよこれ。メイ、この部屋にエネミーの反応は?」
「いないんだよねぇ。スカル系とかは起動するまで反応しないけど、そもそも床に骨とかそういうのも転がってないし」
「となると、床が開いて下からせりあがってくるとか、或いは召喚系とか?」
シードの予想に、俺は顔を顰める。
「召喚系とするとデーモン系か? あいつら属性魔法系のスキルが通りづらいから苦手なんだよなぁ」
俗に言う魔族系のエネミーは基本的に魔法耐性が強いので、俺みたいな純魔型のビルドしているプレイヤーが苦手としている相手だ。
「とりあえずスキャンしてみるよ。エネミーが出てくるにしろトラップにしろ、それである程度予測つくだろうし」
「そうだな……頼む、メイ」
「おっけ。コネクト:<<フルスキャン>>」
メイがスキルを宣言し、いつも通り前方の空間を見つめ……そしてすぐに呟いた。
「……大型エネミーってことはなさそう」
「どうしてだ?」
「天井、床にはギミックらしき物がなし。ただ壁に壁じゃないところがあるんだよ」
メイのその言葉に、リアルが首をかしげる。
「どういうこと?」
彼女は視線を上げるとリアルに視線を合わせて答えた。
「壁に見えてるところ、実際には壁がないところがあるんだ。多分幻影か何かで壁に見せかけてるみたいでその先に通路がある……ただ通路の先は行き止まりだけど」
「ってことはそこからエネミーが出てきそうな感じ?」
シードの問いに、メイは頷く。
「ギミックぽいのはないからほぼ間違いなくね、じゃないと何のための空間かわからないし。ただエネミーの姿が見当たらないんんだよねぇ」
「だとしたらそれこそスカル系かな? だとしたら岩鉄大活躍だけど」
リアルが隣に立つ岩鉄を見上げる。スカル系は打撃武器がよく通るので彼のハンマーで無双に近いことが出来る。
「或いは人形系ですかね。あれも起動するまでスキルで察知できませんし」
「そうだな」
フラットの言葉に俺は頷く。
高レベル帯になると今のメイのように罠にしろエネミーにしろ事前に察知が可能になる。それに対する対抗エネミーとしてなのか、スカル系、人形系など一部のエネミーは動き出すまではエネミーとして察知されない。なので、プレイヤーに奇襲をしかける場合は大抵その系統のエネミーになる。
「とりあえず後は進むしかなさそうだな。バフをかけなおしたら行こう」
ここまで露骨であれば、万全の事前準備を出来る。ということは、そういうことなのだろう。事前準備が必要な敵が出てくるということだ。
すでに効果が切れてしまっている、或いは切れそうになっているバフスキルを、フラットは全体に、他のメンバーはそれぞれ自分の体に掛けていく。俺自身は特に事前使用するバフはないのでその光景を眺めているだけだけどな。
チェックとスキルの掛けなおしを含めて1分ほど。それで全員の準備が整った。
「よし、行くぞ」
陣形を組みなおし、俺達は広大なフロアへ足を踏み入れる。
左右から来るのがわかり切っているので、右に岩鉄とシード、左にリアルとメイ、中央が俺と俺が抱えたフラットという陣形だ。
とりあえず俺はフロアの中を無造作に進む。明らかに中央付近までいったところでイベント開始、って奴だからなこれ。現実ではそうとは限らないが、これはベースがゲームだ、セオリー通りに来るのはほぼ間違いない。
そしてその予測は正解だった。ちょうど半分進んだところ、正方形のど真ん中に到達したところで周囲の壁をすり抜けていくつもの影が姿を現す。
「うへぇ、殺戮人形。あたしあいつら苦手なんだよね。気持ち悪くて」
リアルの意見に同意だ。
壁の向こう側から現れたのは、球体関節のマネキンのような姿をしたエネミーだった。そしてその顔には本来のマネキンにもあるはずの顔の造形がない。のっぺらぼうという奴だ。ここは明るいからいいが、暗闇の中からこいつらが急に現れたらホラー耐性低いやつらは腰を抜かすんじゃなかろうか。
「数、多いぞ。10体ずつ……全部で60だ。ヘイトコントロールもしづらいし厄介だな」
すでに武器を構えて戦闘態勢に入りながら、岩鉄が呻くようにつぶやく。
外見の不気味さはおいておいて、殺戮人形が面倒な点が一つある。それはその能力だ。
殺戮人形は通常、親機によってコントロールされて行動し、複数体の連携攻撃を仕掛けてくる。そんなエネミーだ。
そしてそういう能力なので、子機に対して<<タウント>>をかけても意味がない。逆に上手く親機にかければ全機のヘイトが全て向く。ヘイトコントロールが非常にしづらいのだ。その代わり親機をうまく倒せればそれで戦闘は終了するという利点もあるが……
「しかし数が多すぎるな。まず数を減らそう、シード右側頼む」
「了解」
俺と同じく広域攻撃を得意とするシードに背後を任せ、俺は左側に体を向ける。いまだ殺戮人形が緩慢な動きをしているのは、先制のチャンスを与えるからそこで出来るだけ数を減らせという事だろうか?であればありがたく乗らせてもらう!
次の瞬間、俺とシードの怒声のようなスキル宣言が重なった。
「コネクト:[樹氷の森]!」
「コネクト:[巨人の矢嵐]!」
宣言と共に、俺の視線の先にある殺戮人形の足元から大量の氷の棘が天に向かって突き立ち、殺戮人形たちを襲う。動きの素早いやつらはとっさに回避運動に入ったが、広域全体に効果のある魔法だ。何体もの人形たちが逃げ切れずにその身を棘に刺し貫かれ、砕ける音を上げる。
同様に背後からもおそらくはシードの放った巨大な矢に、人形たちが打ち砕かれているであろう音が聞こえてきた。
こいつらは数が多いし面倒な能力がある分、一体一体の性能は控えめだ。大技をぶつければ問題なくぶち壊せる。今の一撃で大体3分の1以上は倒せているように見える。この後はばらけるだろうからここまで一気にいけないだろうが、初撃としては上々の結果だろう。
そう思った瞬間だった。
「……嘘っ!?」
背後から上がる悲鳴のような声。そしてその悲鳴の理由を俺自身も目の当たりにした。
・各コンボスキルについて
[巨人の矢嵐]
<<エナジーアロー>>+<<ヒュージウェポン>>+<<スプリット>>+<<ハイスピード>>
[樹氷の森]
<<アイススパイク>>+<<ディフュージョンⅡ>>+<<フロストエキスパート>>
・各スキルの効果について
<<ディフュージョンⅡ>>
ディフュージョンより広域に魔術の効果範囲を広げるスキル。コンボ専用。
<<フロストエキスパート>>
組み合わせた氷属性の魔術スキルの威力を強化する。コンボ専用。




